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今、目の前にいる先輩は穿いていないらしい。
ガチのシャツ一枚なのか。
俺はてっきり下着くらいはつけているものだと思っていた。
「シャツがめくれちゃったら大変だね」
そう言って先輩はシャツをたくしあげようとした。――ので、俺は咄嗟に止めた! 危険すぎる!! 俺の理性的な意味で。
そう今の俺は理性を押さえることで必死だったのだ。心の奥底から獣(ビースト)が這い出ようとしていた。……それはダメだ。
「たくしあげるの禁止です!」
「冗談だよ。恥ずかしいもん」
「……それならいいです」
なにか良い方法はないものか。
――って、そうだ。
ウチは『冒険者ギルド』なんだぞ。貸し出しのコスプレ衣装があるんだった。それを着て貰えばいいんだ。フリーサイズもあるしな。
「ん、どうしたの愁くん」
「いいことを思いつきましたよ。先輩、しばらくコスを着てください。それで凌ぎましょう」
「え、コスあるの?」
「もちろんです。では、そのままついて来てください」
「うん、分かった」
部屋を出て階段を降りていく。
家と店は繋がっているため、専用の通路をいけば喫茶『冒険者ギルド』だ。カウンターの少し逸れた場所にコスプレ貸し出し部屋がある。
本来は有料なんだが、今日は緊急事態につき先輩には無料で貸し出しだ。
「どうでしょう、この衣装の数」
「わぁ、凄い数だね。ナイト、プリースト、アサシン、ブラックスミス、ウィザード、ハンターとかなんでもあるね」
先輩は瞳を星のようにキラキラ輝かせていた。さすがウチに通っているだけあるな。
「そこの列はその昔に流行ったMMORPGのコスプレですね。――って、先輩よく知っていますね」
「蜜柑に勧められて少しだけプレイしたことがあるんだ」
なるほど、蜜柑先輩の影響か。
あの人、Wizard Onlineのウォーロックのコスプレしていたし、詳しいらしいな。
「それじゃ、俺は扉の前で待っているんで、先輩は好きな衣装に着替えてください」
「まって、愁くん。一緒に選んでくれない?」
「一緒に? いいですけど、俺の好みとかにしちゃっていいんです?」
「助けてくれたお礼がしたいし、愁くんの好きな衣装を着てあげる」
「それは感激を通り越して感涙です」
これを断れば一生後悔する。
先輩に俺好みの衣装を着て貰えるだなんて、多分この先ないだろうからな。
通路を歩き、俺は選定する。
う~ん……先輩に何を着てもらおうか。どうせコスプレしてもらうなら、えっちなヤツがいい。
俺はある鎧を見つめていた。
すると先輩は赤面して叫んだ。
「あ、あの愁くん……そのビキニアーマーは無理だから!!」
「あ……やっぱりです?」
「だ、だって、それはほとんど見えちゃうじゃん……」
異様に面積の少ないビキニーアーマーがあった。これ着る女性がいるのだろうか……。これはこれで見てみたい気がするけど、いくらなんでも刺激が強すぎる。こんなのを着た先輩を見たら、俺は鼻血を大量に噴きだす自信がある。うん、無理。
「……ですよね。親父の趣味だと思いますが、このアーマーはもうアーマーとは呼べないレベルですね」
まるで貝殻ビキニみたいな衣装だぞ。
「どうしてもと言うのなら着るけど……」
「安心して下さい。強要なんて愚かな真似はしません。他にしましょう」
「良かった」
先輩は安心していた。
あぶねぇ、これをお願いしていたら嫌われていたな。
――となると、露出の多い衣装は控えた方が良さそうかな。とはいえ、少しくらいは欲望に忠実でありたい俺。
そうだな……シスター服はこの前、写真で見たから別のコスプレにしたい。……となると、おぉ、そうだ。良いものがあった。
種族系のコスプレコーナーへ向かい、俺は亜人系のものを探した。
「これだ。先輩、獣人になってくださいよ! 大丈夫です。猫耳の可愛いヤツなので」
「それならいいね! 決まり。じゃあ、試しに着替えてみるね」
よし、先輩に可愛いコスプレをしてもらえるぞ。
――しばらくして先輩が着替え終わった。
「おぉ!」
猫耳に花柄浴衣。丈があまりに短くてふとももが大胆に露出している。異国に住んでいそうなケモミミキャラって感じでいい。
「なんか胸元が全開だし、丈も短すぎて股がスースーする……」
……先輩、めちゃくちゃ可愛い。
俺はすっかり先輩に見惚れていた。