俊哉はあからさまに嬉しそうだった
「本当に?やぁー絶対そうした方がいいよ、交通費に香典代とかも高くつくし」
「俊哉―――私は・・・・ 」
「葬式に行かなくて浮いた金で、週末デートしようよ!セミナーに行った帰りでもうまいもんでも食おうよ」
俊哉は頬に手を当てた
「ああ・・・ひどいな・・・可哀そうに・・・君が聞き分けないことを言ったから、いいかい?これからは僕を怒らせちゃいけないよ」
「もう二度と殴らないで」
「もちろんさ!約束するよ」
彼は壊れ物でも扱うみたいに、もう一度私をきつく抱きしめた
「俺以上に君を愛してやれる人間は、この世界にはいないんだ俺にとっては、君がすべてなんだよかわいいリンリン、これからもお互いいたわってやっていこう、わぁ!いい匂いだ!俺の好物を作ってくれたのかい?」
「あなた・・・夕べ食べたいって言ってたから・・・」
声がかすれてつまる、彼に抱きしめてもらいたい気持ちと殴りたい気持ち、出て行きたい気持ちととどまりたい気持ち、彼を愛する気持ちと恐れる気持ち・・・・
こんなにも二つに心が引き裂かれる感情は、生まれて初めてだった
私は囁いた
「本当に痛かったのよ・・・怖かったし・・・二度としないでね・・・ 」
彼は頭のてっぺんにキスをした
「二度としないと誓う!」
俊哉の顔が下がってきた、私は顔をあげて彼のキスに応えた
でもこの出来事が・・・・・・
これから始まる悪夢の序章であることを
私はまだ知らなかった
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