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「クアァーッ! ナッキ王、お待たせしましたヘロンめですっ!」
「っ! ゴホゴホッ! ペッ! お、驚いたよ、サニーを飲み込む所だったよ」
「わあぁー! っ! ヒエェー! ナッキ、アーンッ! アーンンンッ!」
突然、ナッキの目と鼻の先の水中に、巨大な顔を突っ込んだヘロンの言葉に驚いたナッキは、飲み込み掛けてしまったサニーを咄嗟に吐き出して、出されたサニーは勢い良く水底に飛ばされ、瞬時に集まり始めるヤゴの姿に肝を潰しながら、慌ててナッキの口へと再び逃げ込むのであった。
水中を素早く見回したヘロンは言う。
「ふむ、既に孵化してしまったようですな、どうします? 今回は殺してしまって次回以降産卵しないようにトンボと交渉しますか? それとも予定通り説得します? 結構面倒だと思いますけど……」
ナッキは即答だ。
「いやいや、自分たちの子供達の為に他種族の子供を皆殺しとか、目覚めが悪いだけじゃなくて怨恨(えんこん)の切欠(きっかけ)にしかならないじゃない…… トンボたちとの今後の交渉の為にも説得の方向で頼むよ」
「ふむ、なるほどですね、では早速…… 聞け、空飛ぶ虫の王者トンボの子等よ! 我はそなた等の親の友、鳥の王ヘロンである! この池に住まう者は我の同胞、この池を統べる王は我が主君! 傷付ける事は止めてくれ! 捕食を中断してくれれば、直ちにそなた等の親と語らい今後も友誼(ゆうぎ)を結び続ける為の方策を決める事を約束しよう! 頼む、誇り高い空飛ぶ虫の王者の子等よ、暫(しばら)くの間、矛(ほこ)を収めてくれ!」
『ギギッ! ギッ! ギギッ! ギギッギギッ! ギギギィッ!』
「命令? 主? 一体、何を言っているんだ……」
『ギギギギギィ、ギギギッ! ギィギィギギギッ! ギギギギギ?』
「ほう……」
ヘロンが割りと、と言うか滅茶苦茶丁寧に話し掛け、ヤゴ達が何やら答え、折り返しで疑問を口にしたヘロンに対して、ヤゴは声を揃えて説明し、ヘロンは一定の理解を示したらしい。
ナッキは首を傾げながら、大きな顔のヘロンに問う。
「ねえ、何だって?」
ヘロンは燃える様な真紅の瞳をナッキに向けて答える。
「いや、えっとぉ、私の言う事は理解しているみたいなんですがねぇ…… 何の事か判らないんですけどこの子達、親のトンボでは無い何者かの命令に従って行動しているらしいんですよねぇ? アルジ? とか言う存在がアタシを喰えっ! って言ったみたいでして…… 逆らい難い、とか言っているんですよぉ」
ナッキはピンと来捲っていた、その言葉、言い口は記憶に新しかったからである。
つい先程、カエル達を救う為に、今尚、自分の口の中で舌の中で震えているサニーが発した言葉、
『アタシを喰えぇぇ!』
発言としか思えなかったからだ。
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