テラーノベル
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――――主? 命令? 逆らい難い、だってぇ! サニーの言葉ってヤゴに対してそんな影響力を持ってんのぉ? んだけども、状況的にはそうとしか思えないな…… だったら、良しっ!
「ねえサニー? ちょっと出て来てくれないかなぁ? お願いしたい事が有るんだけどさぁ」
「えっ、ええっ、出るの? ナッキィ、近くにヤゴ達居ない? いたら怖いよ、ぼ、アタシィ」
「うーんとね、僕のお腹のズーット下で下顎シュッシュッ、鋏(はさみ)をシャキシャキってやってるけどね、ここまでは届かないから大丈夫だよ、だから顔だけでも出して欲しいんだ、駄目かな、サニー?」
「………………怖いけど、ナッキの役に立つ? なら頑張るけどぉ……」
「勿論だよサニー! ちょっとだけで良いから出て来てよ! ね? お願い、先っちょだけで良いからさ! お願い、先っちょだけ、ね? 先っちょぉ!」
「う、うん」
返事を聞いたナッキは口をやや大きく開き、少しするとその空間におずおずとサニーが小さな顔を表に出すのであった、そう、正に先っちょだけであった。
「うわぁー、ねえナッキィ、ヤゴ達…… やっぱりアタシを食べる気満々だよぉ…… 怖いっ…… んで、これ見させられてアタシはどうすれば良いのぉ?」
ナッキに躊躇は無い。
「うん、そこで大きい声で言ってみてよ、『アタシを食べちゃ駄目』ってさ、そんでその後こう言って欲しいんだよ、『親達、トンボと話し合いが終わるまでは捕食禁止! 大人しく待ちなさいっ!』ってね♪ どう、出来るサニー?」
無言のままコクコクと頷いた後、サニーは大きな声で言う。
「あ、アタシを食べちゃぁ駄目ぇー!」
ピタリ
これまで届かないに決まっている、ナッキのお腹目掛けて伸ばし続けていたヤゴ達の下顎攻撃は一斉に止まった。
続けてサニーは叫ぶ。
「お父さんお母さんと話し合うんだから、それまでご飯はお預けねっ! 大人しく待っててよぉ!」
ヤゴ達は急激に大人しくなって、三々五々、思い思いにそこらの水草や底砂に潜り込んだりし始める、そう、遊び始めたのである。
ナッキは自分の予想が的を射ていた事に満足していた。
何でかは判らないがヤゴ達は、ナッキの口の中に隠れているサニーを主だと認識しているらしく、その言葉には絶対的に従っているらしかったのだ。
ナッキは言う。
「思った通りだ、サニーの言葉に従うんだ」
「こ、この言葉の力、は…… か、『蹂躙(カリンマ)』、か? ま、まさか……」
思わず、そんな感じで呟きを漏らすヘロンにナッキは問う。
「へ? カリンマ? って何? 何なのぉ?」
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