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ALMA
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桃と鬼の戦争が漸く終わった。全てが収束した戦場には砂煙が立ち込め、血の匂いが至る所で広がっている。そんな血生臭い場所が戦場の終点だった。
負傷者も死者も大勢出した、それでも平和を漸く鬼は勝ち取った。
練馬区の地下、戦争は終結したから言えなかった思いを伝えようと思った。あの厳しいのに誰よりも優しい真澄隊長に
羅刹で見学をした時から一目惚れだった。口はちょっと悪いけど優しい人だと知った。
その日から、ずっと焦がれていた。付き合いたいと思っていた。
小さい背中を追い求めて機関の中を歩いた、遠い遠い廊下の先にその人は居た。
並木度さんが居なかったから丁度良いと思った。手に汗を握りながら口吃り想いをそのままに伝えた。
きっと顔は赤く染まっているし、挙動不審になっているだろう。
分かっていながらも思い切りぶつけた。
数秒沈黙が広がった後に短く舌打ちの音が聞こえた。
「俺は…今と同じようにテメェと接する」
「愛することも、好きになることもねぇ」
それが真澄隊長の答えだった。目も合わせない口調も表情も変わらないままそれだけを伝えられた。
でも、それでも良かった。それでも隣に居れる事を許可されたんだ。
真澄隊長と付き合ってから数ヶ月が経った、真澄さんと呼んでも何も言われなかった。
凄く嬉しかった、認められたとはまだ思えないけど少しは重要度が上がったんだと思ったから。
「やる」
羅刹から卒業して数年しか経っていないから、まだ成人はしていなかった。
成人した後に、真澄さんが手のひらサイズの小さな箱をポンと雑に投げてきた。
慌てて受け取ればそれは紺色で綺麗な指輪ケース…もちろん中身は指輪。
キラキラと輝き太陽の光を反射する銀色の指輪を大切に握りしめた。
「本当に、良いの…??」
「…適当に選んだだけだ」
問いの答えにはなっていないだろうけど、僅かに愛を感じた。
真澄さんは待っていてくれたんだ成人するのを。
知っていてくれたんだ誕生日を。
漸く繋がれたんだ…
その日から指輪を毎日毎日、大切に見つめた。
ある日隊長室で、真澄さんと並木度さんが話しているのを聞いた。
「…指輪?ですか?」
「あぁ…適当な、ヤツだ…」
その声は優しくて暖かくて、伝えてはくれないけど愛が溢れていた。
「ふふ…確かに…適当指輪ですね…」
足取りが軽い、言ってくれはしないけどそこにはしっかり愛があった。今年の記念日は…きっときっと良い日になると鼻歌を歌ってしまうほどに、浮かれている。
記念日の当日、真澄さんは急遽羅刹学園へ行くことになったと連絡が来た。普段は連絡なんてして来ない。珍しいと思いつつも承諾した事を伝えておいた。
来年こそは!と思って作っていた料理を一人分片付けた。
でも、次の年も、そのまた次の年も一緒には過ごせなかった。
だから、こっそり着いていく事にした。真澄さんが羅刹に向かう1日前に船に乗って先に羅刹に着いた。
船から降りた真澄さんを影からそっと見た、その手には真澄さんには似つかわしく無い花束が握られていた。
じわ…と寒いはずなのに…汗が滲んだような気がした。
音を立てないように気付かれないように遠目から尾行していけば、真澄さんは墓地に向かっていた。
誰かのお墓参りなのだ、きっときっと親御さんとか仲が良かった人に報告とかしているんだろう。胸をそっと撫で下ろしながらさっきよりは幾分か軽い心で歩みを進んでいった。
真澄さんは一つの墓石の前に止まってしゃがみ込んだ。ジッと墓石を眺めて緩やかに目を細める。その目は指輪を、真澄さんの薬指を飾る指輪を見ているのと同じ目だった。
綺麗な花束を墓石の前にそっと置いて、光り輝く銀色の指輪に唇を落とした。
踵を返して歩いていく真澄さん、その背が見えなくなった後にゆっくりと墓石へと歩いて行った。
「ぇ…?」
あの記念日の日からずっと機会を伺ってた、真澄さんがしている指輪をどうしても見てみたい。
自分のとはデザインが違うその指輪を。
「真澄さん、指輪見せてもらっても良い?」
「無理に決まってんだろ」
「…うん、ごめん」
どうせ、期待はしていなかった。直球に言ってもどうせ見せてくれないことは分かりきっていたから、少し卑怯な手を使う事にした。
基本的にいつも付けている指輪を真澄さんはお風呂に入る一瞬、その一瞬だけ指から外す。
いつもはそのまま指輪を持ってお風呂に入る。
でもその日は電話片手に会話しながらだったからうっかり忘れてしまったのであろう、脱衣所にちょこんと置かれている指輪を気配を消して奪った。
元とは言え偵察部隊の隊長、勘付かれないように必死で気配を紛らわせる事に全勢力を注いだ。
握られている指輪の内側をそっと覗けば、ダイヤが嵌め込まれていた。その横には小さい刻印が彫られている。
『Always With I,S 』
綴られた英語の意味をわからないほどに無知なわけじゃ無い。
それに…私のイニシャルは『I,S』では無い。
あの墓石と同じ、その下に眠っている骨と同じイニシャルではない。
コメント
1件
うわ…これ、めっちゃ重い…🥀 最初は「やっと結ばれたんだ、良かったね」って思ってたのに、最後の刻印で全部ひっくり返された感じ。真澄さんの優しさの裏にずっと別の人がいたんだね…「Always With I,S」って、主人公じゃない人のイニシャルなんだ。 指輪を大事に握りしめてたシーンが、今はすごく切なく見えるよ。でも、それでも隣にいさせてくれるって言われただけで良かったって思える主人公の執着も、なんかわかる気がする…。 続き、すごく気になるよ…🌙