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眩しい光がゆっくりと収まっていく。スタジオの埃が舞い上がり、温かな風だけが静かに残った。
〈誠也くん……?〉
良規が声を震わせる。
そこには……
小さな姿ではなく、元の大人の誠也が立っていた。
黒髪が風に揺れ、いつもの大人びた表情。
確かに、戻ってきた。
『……戻ったんや。』
晶哉が息を呑む。
健が涙ぐみながら笑った。
《おかえり、末さん!》
だが、誠也はきょとんとした顔で周りを見回す。
「……誰?」
その一言で、全体が静まった
【……今、なんて言うた?】
リチャードが恐る恐る尋ねる。
「ここ、どこ?俺、なんで居るん?……あんたら、誰なん?」
目の前にいるのは、確かに末澤誠也。
だが、その瞳には何の記憶も宿っていなかった。
〈ウソやろ……〉
良規が力なく呟く。
誠也は頭を押さえ、苦しそうに顔を歪めた。
「何か……思い出そうとすると、痛い……。」
【無理せんでええ。ゆっくりでええからな。】
リチャードがそっと肩に手を置く。
だが、誠也はその手を振りほどいた。
「……やめてください。俺、誰にも触られたくない。」
健が泣きそうな声で叫んだ。
《ほんまに分からんの!?俺ら、Aぇ! groupやで!一緒に笑って、踊って、歌ってた仲間やん!》
誠也は静かに首を振る。
「Aぇ……?知らん。ごめんな。」
その言葉が、あまりにも冷たく、現実的で、誰も何も言えなかった。
数時間後。
誠也は遠くの街の灯りを眺めながら、ぽつりと呟いた。
「なんで、俺とお前らはここに居るん?」
後ろで見守っていたリチャードが、小さく頷いた。
【話したら長くなるけど、聞いてくれる?】
「……うん」
【ある日、楽屋で君が飴を食べたんや。その飴の名前は夢ノ雫キャンディ。】
《そのキャンディは、子供の姿に戻り子供の記憶を与えるキャンディやねん。》
『俺らは、君を元に戻す為にここに来た!』
〈元に戻すには、夢ノ欠片キャンディが必要で、それがここに……〉
「……。」
【そして、君は夢ノ欠片キャンディを食べ元に戻ったんや。】
《でも……そのキャンディは元に戻す変わりに記憶を消すキャンディだった訳や……。》
〈そして今に至る……〉
「……そうなんや。何も思い出せへん……。」
『……誠也くん。』
《大丈夫や。俺らが、必ず記憶を取り返してみせる!》
そうして、また新たな旅が始まった