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シャンティパロ*彰が悪癖
恐らく🥞(25)×☕(17)
♢♢
「まぁた払えねえの?この前もだったよな?」
狭い路地裏。ガラスが割れてすっかり壊れかけの点滅した街灯だけが明かりを漏らす。合衆国屈指の大都市ブローケナーク。禁酒法がすっかり定着した酒場の裏。コンクリートの壁に足を打ち、1人、男性を尋問する様子。
「……っす、す、スミマセン…!次こそ!次こそは絶対……!」
「いや、もういいよ」
「……は、はい……?」
「だってキミ、それ何回目?笑」
笑ってはない。寧ろ怒りに満ちて満ちて満ちまくった顔だ。懐から煙草を取り出すと、カチッとライターで火をつける。それを口に咥えると、今己の目の前で汚ねえスーツをきて怯えた顔をしながらこちらを見ている床に落とした男を見下しながら。
「ほ…本当に、申し訳ございません、次こそは絶対!絶対にお金を持ってきますから!どうかお許しを…」
「いや、要らねえわ。つうかそれ聞き飽きたし…あ〜あ、約束守れねェだめなお兄チャンにはもうオクスリあ〜げない♡なあ、お前此処で死ねよ」
そう言うとニィ、と口角をあげてタバコの火がついた部分を男の素肌に擦り当ててやる。すると男は汚く叫び上がった。「あーーうるせえうるせえ。」小言を漏らしながらそのまま腹に一発蹴りを与えてやると男はすぐに気絶した。そして気絶した男のポケットに手を突っ込む。財布を取り出すとすぐさま中を開けた。
「はァ?コイツマジで金持ってねえじゃん。つまんねえの」
財布を開いたが1000円札がたった3枚。チッと舌打ちを鳴らすと諦めたようでそのまま財布を男の上に乱暴に投げる。すると適度に鼻歌を歌いながらポケットに手を突っ込んで、あの酒場に戻ろうとした。が、路地を抜けると電柱の下で蹲っている男性を1人見かけた。ポケットに手を突っ込んだままその男に近寄る。
「…よう、兄ちゃん」
「……?…え」
「何か辛いことあった?笑」
見た目的にはまだ学生だろうか。17歳辺りに見える。アイスグレーの綺麗なその瞳は真っ直ぐに此方を向いていた。服もそう貧乏物ではない、顔も整っていていい男。こんな所で何をしているのやら。
「…だ、誰ですか…」
警戒している。無理もないだろう、現在時刻は午後の22時だ。変な人物がそこらを歩いていたって珍しくない話。とくにここは。
「オレ?オレはアキト。なあ兄ちゃん、こんなとこで蹲っちゃってどうしたんだよ。オレで良けりゃ話してくんない?」
「…あなたには関係ないです。俺はこれで、」
目の前の少年は電柱を支えに立ち上がるとすぐこの場から離れようとした。でもオレはどうしてか男を逃がしたくなかったので、少し強めに手首を掴んでみた。
「いいから、オレならとっておきのもん知ってるよ?」
「……とっておき、の…?」
「そう。知りてえだろ?」
「…、少し、だけ。」
いい子だ。オレはそう言って男を撫でてやると好評だったのかふにゃ、と笑ってくれた。その顔があまりにも可愛くて握りつぶしてしまいそうだったけど。オレは懐から巾着を出すとその中から飴玉をひとつ、取り出した。それを男の手のひらに乗せてやる。
「飴…ですか?」
「そ。コレは”シャンティ”っていう飴。コレ食っちまえばヤなことぜーんぶ忘れちまうんだぜ?」
「いやなこと、ぜんぶ……」
そこまで言うと、男は手のひらに乗せた飴をゆっくりと口に含んだ。オレはその様子を目を細めながらじっと見つめてやった。
「……ん、おいしい、ですね」
「だろ?」
嬉しかったら、ほんの少しだけだが笑ってくれる。その笑みがオレからすればとても可愛くて、もっとコイツのこと知りたい。いつしかそんな感情さえも産まれてくる。相手はきっと学生、オレが手だしたら犯罪だけど(笑)でもバレないならいいだろう。
「なあ、お前名前は?」
「…冬弥、です。」
「へえ…いい名前貰ってんじゃん」
「ありがとうございます……」
まだ飴を舐めていた冬弥の髪を少しだけ指に絡めてみる。相当効き目のあるものだから、もう少しで効果が出るんじゃないか、なんて思ってるとタイミングよく冬弥がこちらを向いてきた。オレが髪を触ってたから、「どうしました?……アキトさん」と疑問符を浮かべて尋ねられると「なんでもねえよ。」と乾いた笑いをこぼしてついでに頭を撫でてやる。するとまた冬弥は嬉しそうにしてふにゃ、と笑った。
「……ん、…アキトさん」
「どうした?冬弥」
冬弥がこちらに身を委ねてきた。嗚呼、薬が効いてきたのか。「少し…寝ててもいいですか」また、その綺麗なアイスグレーの瞳をこちらに向けながらそう問われる。「ん、いいぞ」もちろん了承する以外に答え等なかったのでそう返事をして大人しく自分の隣で寝かせてやることにする。すると冬弥はすぐに眠りに落ちてしまった。改めて冬弥の顔を見るが、矢張り綺麗な顔立ちをしている。「冬弥」試しに名前を呼んでみるが起きる気配は無い。さすが、”シャンティ”
冬弥が深い眠りに落ちてるのをいい事に、目が覚めてしまうより先に姫抱きして持ち上げると、そのまま酒場へ向かった。
♢♢
ガランガラン♪
扉を開ければ吊るされている鈴が鳴る。中は酒くせえジジイの集まりだ。まあ酒場だから仕方ねえけど。みんなオレが入るなりこっちを見てアキちゃんだのなんだの言ってくるけど聞こえねえフリしてカウンターまで向かった。
「あら〜アキちゃん!久しぶりねえ…あら、その子はどうしたの?」
「おー叔母さん久しぶり。ああ、ちょっと道端で出会ってさ。コイツ寝ちまったから部屋借りてい?」
「ええ!奥の部屋が空いてるから借りてもらって構わんよ」
「ん、サンキューー」
オレは冬弥を抱えたまま後ろの声などフル無視で叔母さんに言われた通り奥の部屋へと足を進めた。たどり着くと襖を開けてそのまま部屋の中に入る。1度冬弥を畳の上に寝かせると棚から布団を取り出してそれを畳の上に敷いてから、またそこに寝かせてやる。
「ったく……よく寝てんな。」
すう、すうと小さくて可愛らしい寝息が何度か聞こえてくる。肘をつきながら横に添い寝をしてやるとまた冬弥の髪に手を絡ませて、綺麗な顔を見つめていた。
実際、冬弥に何があったのかは知らないが、何か嫌なことがあったのだろう。こんな夜に1人で外で蹲っていたくらいだから親と喧嘩でもしたのかもしれない。
「ん……、?…」
「お」
貴方が瞼を開いたのが分かればすぐに髪の毛に絡んでいた手を離した。冬弥は「アキト、さん…?」とまだ寝起きの掠れた声でオレの名前を呼びながらこちらを向いた。「ここは……?」と質問されると「お前、あのままぐっすり寝ちまったからな。仕方ねえから連れてきてやったんだよ」そういうと冬弥はすぐに体を起こして
「っ…す、すみません!そこまで手をかけてしまって………ごめんなさい、俺…帰りますね。」
「まて」
「……へ、あ、アキトさん……」
立ち上がろうとした冬弥の手を掴んで帰るのを阻止してやると冬弥は少し戸惑った顔をしていた。
「お前、家でなんかあったんじゃねえの?」
「え……いや、何も無いですよ。」
冬弥は目を逸らしながら己の問にそう答える。なにか物事を逸らすやつは絶対に嘘をついている。オレの経験上、だけど。願なにでも聞き出してやろうと「いいや、嘘だ。何があった」と少し圧のかかった尋問をすると冬弥は口元をゆっくりと開き
「……親が、煩いんだ」
ただ、それだけ。それだけをオレに伝えてくれた。だから家には帰りたくないと。立ち上がろうとしていた冬弥はスっと力の抜けたように再度布団に腰を下ろす
「…ピアノもバイオリンも、本当は……、だから俺は逃げた。もう、何をしても幸せだなんて思えない。」
そんなことを次々と語る冬弥の顔は決して明るくなかった。寧ろ不幸に落ちこぼれてしまった、もうこの先に光の見えないような、顔。そんな冬弥を見ると思わず手を伸ばしてしまった、そして後頭部を手のひらで支えると此方に抱き寄せて。
「そうか、頑張ったな」
そう言葉をかけて。冬弥を抱きしめて背中を撫でてやった。すると冬弥は今まで全てを我慢していたのだろう、嗚咽を時々漏らしながら、オレの腕の中でめいいっぱい泣いた。あの時オレがお前を見つけれなかったらまた明日も明後日も、冬弥は苦しんでた。
「っう、ひ、ぐ…ぅ、アキト、さん…」
「ん、いい。たくさん泣け」
「ぅ、うう、う……」
よしよし、と何度も何度も泣いて泣いて苦しむ冬弥をオレは優しく抱きしめて慰めてあげた。しばらくすると嗚咽も収まり冬弥も落ち着いてきたので、「落ち着いたか?」と訪ねると「はい…だいぶ」と目を真っ赤にしながら冬弥は答えた。
「アキトさん…俺」
「ん?どうした。」
「アキトさんと……ずっと、一緒にいたい、です。」
急なお願いに驚いた。出会った時はあんなにも警戒心の強かった彼が今はこんなにも甘えてくる。その現実に少し背徳感を味わったオレは思わず口角を上げてしまった。
「っはは、仕方ねえな。いいぞ、冬弥」
「…!本当ですか?」
「ん、ただし条件がある」
「条件……?」
すっかりオレのことを抱きしめていた冬弥を1度離す、そして頭を撫でてやったあとに人差し指を自身の口元に当てて
「ひとつ。夜は1人で出歩かないこと、何か用があんなら絶対にオレと一緒に行くこと。ふたつ、路地に転がった死体を見てもお前は見なかったフリをすること。」
「……死、体?」
「まあソレに関してはあとでちゃんと教えてやるよ。」
そう言い聞かせて頭を撫でてやる、するとまた冬弥は嬉しそうに笑った。これで冬弥は落ちてくれるから扱いやすくて正直楽だ。なんて思っていると、「アキトさん…ぎゅーしてください。」なんて、これまた可愛いお願いを貰ってしまった。「はあ〜〜お前な、何歳だよ……ったく」なんてため息を吐くも内心はとてつもなく嬉しいのだ。そのまま冬弥を抱きしめてやると「んふふ、」とまた可愛い笑い方をする。
「アキトさんとこれから一緒に居れるの…とっても嬉しいです。ふふ、」
冬弥はそう言ってまた笑みを零すと今度は”シャンティ”なんか要らずに、深い眠りに落ちてしまった。その顔はとても幸せそうな顔。冬弥が眠りに落ちてから暫くして、そのまま布団に寝させてやると「いい子に寝てろよ。」と囁いて頬にキスをする。すると部屋を出てまた叔母さんに適当に一言添えてから酒場を出た。
合衆国屈指の大都市ブローケナーク。変な人間がウジャウジャ舞うとこ。”オクスリ”を欲しがって幸福感に浸ろうとする汚ねえヤツら。それは老若男女問わずだ。初回はタダ。それはこっちからススメちゃうから。でも2回目はちゃんと代償が必要。ただしオレが気に入ったヤツにはそんなの必要ない。金がない汚ねえ身をオレに委ねてオクスリ貰おうとする奴なんてそこら辺で死んじまえ。金がねえならカラダでいい。血売ってりゃいくらでもカネは入る。さて、今日もくだらねえ商売だ。
懐に入った”シャンティ”何も知らずに使うならば少しの依存性で済むだろう。だがあまりにも依存性が高いとそれは何時か、アブナイことを起こしてしまう。
ポケットに手を突っ込んでまあいつもの路地裏を歩いていたら階段に座り込んで俯いている女を見つけた。
「よう、項垂れてるそこの嬢ちゃん。なんか辛いことあった?笑」
♢♢