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終始雰囲気がエモくて切なくて素敵、、💓
・👻🔪🐙🌟
・匂わせ
・付き合ってないし付き合いもしない 。
「 ふん 、ふふ 、ふんふふーん … 。」
天を仰ぎながら曲名もなにも思い出せない曲を歌う 。
歌詞はない 、舞踏会で踊る時に流れるようなお洒落な曲だ 。
「 ら 、ららら … ら 、」
切なくて 、美しい曲 。
何故この歌を知っているのだろう 。
何故この歌を歌えるのだろう 。
なにも 、わからない 。
「 おい 。」
急に頭にぽんと何かが置かれたと同時に視界の端に見知った顔が入ってくる 。
「 わ 、なんですか 。小柳くん 。」
「 これ 、お前んとこから借りてたから返すわ 。」
「 勝手に借りるなとあれ程言いましたよね?」
棘を刺せば 、彼は「うぐっ 、」と顔を歪める 。
彼から本を受け取り 、パラパラ 、と内容を簡単に見る 。
「 …… 彼女でも出来たんですか?」
「 出来る訳ねえだろ 。」
「職業柄出来ていい訳ねぇし 、」と一言付け足した 。
ロウが返してきた本は 、ダンスについて書かれた本 。
1人で踊るダンスなら俺だってなにも言わない 。
でも 、これはワルツ … 所謂「社交ダンス」と言われるものだ 。
勿論 、男女でふたりで踊るもので 、1人で踊るなんて 、悲しすぎる 。
好きな人でも出来たのでしょうか?
「 … 応援してますよ 。」
「 あ?何をだよ?」
「 まあまあ 、恥ずかしがらないでくださいよぉ ~ 。
俺達の仲でしょ? 」
「 … はあ? 」
ロウは本当に知らないかのような顔をする 。
もう 、小柳くんは演技派なんだから ~ 。
… 待てよ 、本当にいないのか?
うーん …… 、まあいいか 。
好きな人がいても俺には関係ないですし 。
俺は本を持って立ち上がり 、本棚へとその本を戻した 。
ロウは 、俺とは違う本棚を見ている 。
そんな彼を横に俺はまたいつもの椅子に座って 、ペンを走らせる 。
「 そういえば 、」
小柳くんが急に口を開いた 。
本を捲っては 、戻すを繰り返している彼の方を見る 。
「 さっきの曲 、覚えてるのか?」
… 覚えてる?
何を 、歌を …?
「 …曲名までは知りませんけど 。」
「 そうか 。」
表情こそ何も変わっていないが 、少し物悲しげな雰囲気が漂う 。
そんな彼にかける言葉が見つからず 、やらなければならない書類にペンをまた走らせる 。
小柳くんはといえば 、なにかいい本がないかと本を開いてページを捲っては 、気に入らなかったのか 、棚に仕舞うを繰り返している 。
「 …… なあ 。」
数十分間 、ずっと黙って本を探していた彼が突然声を掛けてくる 。
後ろにいる小柳くんの方を見ると 、そこには少し目を伏せた様子の彼がいた 。
「 なんですか? 」
首を傾げて疑問を述べると 、小柳くんは手を差し伸べてくる 。
「 … 本当になんですか? 」
その手を取らずにそのまま彼の目を真っ直ぐ見ていると 、段々と頬が赤く染まっていく 。
頬はそんなに赤くは無いが 、耳は真っ赤に染まっている 。
はぁ 、と呆れた溜息を吐いて 、彼の手を取った 。
すると手を引いて 、俺を椅子から立ち上がらせる 。
「 … さっき歌ってた歌 、お前が歌え 。」
「 え 、なんでですか 。音楽ならスマホで流せばいいでしょう 。」
「 めんどい 。」
「 な … 、はぁ 、。分かりましたよ 。」
俺は曲名を知らない 、あの曲をまた歌う 。
歌詞がないから鼻歌になってしまうけど 。
歌い出した後 、ロウは俺の腰に手を回し 、腕を絡ませてくる 。
「 … ♪ 」
ロウのこんな優しい顔 、初めて見たかも 。
緩く笑っているその顔は多分女の子にしたら一目惚れされる奴 。
でも 、何処か悲しそうで哀愁漂うその表情を見ているとこっちまで悲しくなってくる 。
…… 感情を中々露わにしない彼だからそうなるのかも 。
そんな事を思いながらも俺は歌い続ける 。
室内は淡いライトの光と美しい満月の光で満ちていた 。