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桃色青春高校vs大火熱血高校の試合に決着が着くまで、あと少しの場面だ。
「ランナー満塁……か」
9回裏。
ツーアウト・ランナー満塁という状況で、大火熱血高校は4番の熱海が打席に入る。
(……絶対に抑える!)
龍之介は、ボールを握りしめて気合いを入れた。
ここまでのイニングで、彼は強力打線を相手に3失点に留めている。
このピンチも切り抜ければ、桃色青春高校が勝利を収めることになる。
(四球だけはダメだな。ここは何とかストライクを入れていかないと……)
9回裏の守備が始まった時点で、龍之介にはスタミナ切れが顕著に表れていた。
いや、スタミナだけではない。
右手のマメが潰れ、爪が割れたことにより出血している。
だが、彼はそれを押して投球を続けた。
『ストライクッ!』
まずは1球。
ストレートがストライクゾーンに入った。
球速は120km/hを少しだけ超えた程度である。
龍之介のスタミナ切れは明白だった。
『ボール!!』
次の球は外れた。
これでワンボール・ワンストライク。
(そろそろ打ちに来るのか? それとも、待球策に出るのか?)
龍之介は相手打者を見る。
強豪校の4番バッターだけあって、貫禄のある構えだ。
しかし同時に、その目の奥には闘志の炎が燃えている。
待球策には出ない。
そんな気迫が伝わってくる。
(ならば……)
龍之介は心の中で頷き、セットポジションに入る。
彼は足に力を込めると――投球した!
「ぐっ!! くそっ!!!」
打った熱海がバットにボールを引っかける。
打球は力なく前に転がった。
『ボテボテのピッチャーゴロ! 龍之介投手、慎重にゴロの捕球体勢に入り――ボールをグラブに収めました!!』
実況ロボがアナウンスする。
熱海の打球は、完全に打ち損じだった。
「龍さん!」
「龍之介!!」
ユイとアイリが叫ぶ。
長かった試合もようやく終わりが訪れようとしている。
龍之介の熱投が、報われる時が来たのだ。
だが――
「っ!!!」
龍之介の顔が歪む。
肉体が限界に達したのだ。
足の筋肉、肩の筋肉……。
あるいは、手のマメや爪の影響かもしれない。
「えっ!? あっ……」
ミオは悲鳴にも近い声をあげた。
龍之介の手から放たれたボールが、大きく上に逸れたからだ。
ミオはジャンプするが、届かない。
『こ、これは痛恨のエラーです! ボールはライト方向のファウルゾーンに! その間に3塁ランナーホームイン! そして――2塁ランナーもホームイン!! 大火熱血高校、サヨナラ勝利ーー!!」
実況ロボが叫ぶ。
――その瞬間、龍之介は膝から崩れ落ちた。
「龍先輩!」
「龍殿!!」
ノゾミとセツナが駆け寄る。
しかし、返事はない。
全てが限界を超えており、もう意識を保つことすら難しかったのだ。
「た、大変です! 龍様が! 龍様がぁ!!」
「龍之介、しっかりして!!」
「担架を持ってきてくださいまし! 早く!!」
ミオ、アイリ、ユイが叫ぶ。
試合は終わったが、まだ龍之介は倒れたまま起き上がらない。
こうして、桃色青春高校の秋大会が終わったのだった。
123456789 計
――――――――――――――――――
桃色青春|300001000 |4|
大火熱血|010010012*|5|
――――――――――――――――――
試合終了
大火熱血高校の勝利
【高校野球】2099年東京都秋大会雑談スレ32【ダークホース桃色青春高校】
976:代走名無し@野球大好きオジサン
……終わったか
977:代走名無し@野球大好きオジサン
くっそ……
惜しい試合だったわ……
978:代走名無し@野球大好きオジサン
いい熱投だったが……
やはり投手1人では強豪校に勝つのは厳しいのか……
979:代走名無し@野球大好きオジサン
次の大会に期待だな……
それまでにどれほど成長するか、楽しみではある