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寮の部屋は、異様なほど静かだった。リンクは扉を閉め、鍵をかけると、背中の武装を壁に立てかけた。
マスターソードだけは、手の届く位置に置く。
深く息を吐き、
シーカーストーンを起動した。
――通信接続。
淡い光の中に、見慣れた文字が浮かび上がる。
《リンク! 無事ですか!?》
ゼルダの声は、焦りを隠しきれていなかった。
『大丈夫だ。 生徒たちは守れた』
短く要点を伝えると、ゼルダは一度息を呑む。
《……やはり、襲撃が起きたのですね》
『その存在は……教師たちだけが把握している、危険個体のようでした……』
リンクは、今日の出来事を順に説明した。
教室への侵入。
教師たちの明らかな怯え。
そして、怪物が「管理されていた」形跡。
《この世界……》
ゼルダの文章から真剣さを感じ取る。
《“学校”という形をした、実験場か、収容施設……》
『教師たちは、監視者』
《生徒は……》
『……試料、かもしれない』
リンクは、拳を握る。
『ここでは、異常が日常に埋め込まれている。 だから、誰も疑わない』
《でも、あなたは違う》
ゼルダは、はっきりと言った。
『外から来た存在だからこそ、歪みに気づける』
《出口は?》
『まだ分からない』
《でも、原因がある場所……“中枢”が存在するはず》
『今日の反応を見る限り、教師会議が鍵になる』
通信が一瞬、揺らぐ。
《リンク……無理はしないで。 あなたは一人じゃない》
『分かっている』
通信は、静かに切れた。
リンクは天井を見上げる。
(……この世界は、壊れている)
だが同時に、はっきりした。
――守るべきものも、ここにある
重い扉が、閉じられた。
円卓を囲む教師たちの表情は、硬い。
「……アリスが制圧された」
「しかも、学生一人によって、だ」
「あり得ない」
「だが、事実だ」
議題は一つ。
――リンクの扱い。
「排除すべきだ」
即座に声が上がる。
「規格外だ。管理不能」
机が叩かれる。
「我々ですら制御に苦労している存在を……!」
一人の教師が、低く言う。
「……彼は、外部因子だ」
「この世界の法則に、完全には縛られていない」
「だから危険だ」
「監視下に置くべきだ」
「武装を制限しろ」
「……最悪の場合は?」
誰かが、そう口にした。
沈黙が落ちる。
「……アリスと同様に、処理する」
誰も否定しなかった。
誰も肯定もしなかった。
結論は、先送り。
「当面は――」
議長役の教師が言う。
「学生として扱う」
「だが、監視は最大限」
「一挙手一投足を記録しろ」
「次に彼が動いた時……」
誰かが呟く。
「彼が、どう動くかを見る」
会議は、終わった。
教師たちは知らない。
その“観察対象”が、
今、部屋の外で聞き耳を立てて、
すでにこの世界の正体に、
半分以上、辿り着いていることを。