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サイド マオ
「ルネ!おい!」
外は嫌いだ。怯えながら暮らしていた日々を思い出すから。
けれど、そんなこと言ったられない。
「このっ……待てって言ってるだろ!」
「マオ。近所迷惑だしさ、少し黙ってくれない?」
ルネはやっと振り向いて、俺の方を見た。その無表情な顔、その声色。いつもとは全く違う。
それがお前の本当の顔なのか?
「なら、静かに話せる場所に行きたい。それならいいだろう?」
「はぁ……」
面倒臭そうに大きな溜め息を吐いて、無言で道路を歩く。
後を追って着いたのは、俺が退学した遺川中高一貫校の中庭だった。
「んで?俺この後大事な用が有るんだけど」
「なんで抜けた?本当に戻らないつもりか?」
「言った通りだけど?……俺は、ダイチの代わりとして」
「お前はそんな奴じゃないだろ?!」
中庭に俺の怒声が響く。
本心が見えない笑い方も、一人で全部背負い込もうとするのも、大嫌いだ。
けど、それは全部俺らのことを思っての行動だってことぐらい、知っている!
「お前もダイチもダイキも、いっつも勝手にいろいろ抱え込んで、無理ばかりして!」
俺は、守ってもらうだけの存在じゃない。対等な──仲間なんだ。
そう思っているのは俺だけじゃないはずだ。
「助ける、じゃなくて助け合う、のが仲間だろう?!俺たちの絆を馬鹿にするな!!」
頼むから、もう少し仲間を頼ってくれよ。
「…………ユズちゃんのことにも気づいていないくせに」
小さな声で、ルネはそう言った。
「?……ユズが、?」
「なんでもないよ。それよりも、こんな意味のないこと、いつまで続けるの?」
?!
意味のないこと、だと?
現に俺たちは、トキを、ユメを救えたじゃないか。それを踏まえて、その上でお前はそう言うのか?!
「未成年と、たかが18歳の俺らに出来ることなんて、限られてる。このままじゃこれから先、絶対行き詰まる」
淡々とルネはそう続ける。
「社会が俺らを許さない。だから、俺たちは“モンダイジ”なんだって、マオも分かってるでしょ?」
「……だとしても、何もせずに諦めて決めつけるのは、違うだろ」
そうだ。俺たちは、この世界を変える。仲間となら、変えられる。
「……忠告はしたからね」
ルネはそう吐き捨て、校舎の中に消えて行った。