サイド ユズ
人がいない、ダイキ兄の家の近くの公園で、ユズはユメお姉ちゃんとベンチに腰掛けていた。
……これは、間違いなくチャンスだった。
でも、いいのかな。全部ユズのせいなのに。ユメお姉ちゃんだって、仲間なのに。
どうしよう。どうしようどうしようどうしよう。
「……ユズ、大丈夫ですの?」
グルグルと思考回路がショートしていると、ユメお姉ちゃんがそう声を掛けてくれた。
『アイツは心の中が読めるらしいから、気をつけろよ』
「!!」
そうだ。そう言ってた。なら、今、此処でユメお姉ちゃんに全部知らせることが出来たら……!
「あの、ね!実はユズ……!」
顔を上げて、ユメお姉ちゃんのことを見る。……その後ろには、“あの人”がいた。
「あ…………ぅ、ぁ…………!」
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……!!
「ごめん、なさい……!」
「え?!ち、ちょ……!」
ユズは、走り出した。慌ててユメお姉ちゃんもベンチから立ち上がって、ユズのことを追いかける。
ダイキ兄は怒るかな。本当の裏切り者が、ユズだって分かったら。
路地裏の先にあったのは、行き止まりだった。
「やっと追い付きましてよ……!何があったか知りませんが、皆さんが心配されますわ……!」
…………そう。行き止まり。
「追いかけて来てくれて、ありがとう」
追いかけて来ないで、欲しかった。そうすればユメお姉ちゃんは助かったのに。
「…………ぇ、」
「約束通り、連れてきたよ」
大通りに出る道を塞ぐように、沢山の大人が立っているこの状況。ユメお姉ちゃんならもう分かるよね?
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
もう一度幸せになりたいの。当たり前がすごく愛おしいの。
「本当に、ごめんなさい。ユメお姉ちゃん」
絶叫がユズの耳を劈(つんざ)いた。
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