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この度はぬさもとりあえず手向山
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第25話 大切なあの子のために
ir side
…まさかガイストからそんな言葉 が出るとは思ってなかった。私の知ってるガイストは、あまり人の事には干渉しないイメージだったから。
アイリス・シルフィーヌ(ir)
「…何のこと?誰を助けようって……私は、騎士総長だよ?国の皆を助けてあげたいのは当然でしょ?」
ガイスト(md)
「うん、アイリスはそう言う。アイリスは誰にでも優しくて、どんな人にも手を伸ばすから。でも……」
ガイストは少し唇をかみしめているように見えた。だけど、この後に出た言葉が私を苦しませるものに変わった。
md
「アイリス、焦ってる?」
ir
「………!?」
md
「…もう一度聞く。アイリスは、誰を助けようとしてるの?」
ir
「………。」
言葉が出なかった。図星だったから。
そう、私は…焦ってる。早く生命の聖水をあの子のところに持っていきたい。そうしたら助かるから。また笑ってくれると信じてるから。
ir
「…ははっ、参ったなぁ……。どこまで知ってるの?」
md
「いや…詳しい話は知らない。だけどとある貴族から、協会の外で張り込みしてるアイリスを見たっていう話を聞いた。生命の聖水の言葉に強く反応してたって。」
ir
「うん、そうだね。私は生命の聖水が今、どうしても必要なんだよ。」
ここにいるのはもう私とガイスト、トロンにナハト、そして第三王子のラダオ様だけ。…なら、いいか。
md
「どうしてそこまで生命の聖水に固執してるの…?」
ir
「…ガイストや皆はさ、どうしても助けたい人っている?」
ラダオ・ヴェルディオン(rd)
「助けたい人…。」
ir
「私はいるよ。どうしても助けたい人。私にとって、1番大切な人。あの子のためにも生命の聖水は必要なんだ。」
トロン・フォグナー(tr)
「…気持ちは分かるような気がします。僕も度々商談相手に縋られるようにそのようなお願いを聞いたことがあるので。」
ナハト(nc)
「…アイリスの助けたい人、誰?」
ir
「…弟。私は、難病に苦しんでる弟を助けたい。」
あぁ、言っちゃった。七つの王冠の中でも治療に当たってくれたリリアにしか話さなかったのに。
nc
「?でもアイリス…、シルフィーヌ家……」
tr
「シルフィーヌ家に、子供はアイリスさんだけでは……」
rd
「あっ…言われてみれば。」
ir
「…そういう反応するのも無理ないよね。言ってないもん。…私の家、シルフィーヌ家は本当の家じゃないんだ。」
md
「じゃあ…養子?」
私はガイストの問いに静かに頷いた。そう、公爵シルフィーヌ家は本当の家じゃない。養子としてあの家にやって来た。
公爵シルフィーヌ家は貴族としてもそれなりに権力はあった。だけど後継者がいなくなった。…というより、子供が生まれなかった。シルフィーヌ家は優秀な子を排出しているからこそ、社会に貢献して地位を確立していた。だけど、子供が生まれなかったことでそれが崩れようとしていた。それを危惧した彼らは私を養子に引き入れた。当時、子供でも優秀だと静かに噂された私のことを聞いていたんだと思う。その噂の通り、私は剣において男を含めて右に出るものはいなかった。だから私は王都騎士団騎士総長に任命され、七つの王冠の一席をもらえた。
そんな私でも不安はどこまでいっても拭えなった。決して今の生活に不満がある訳じゃない。本当の家に今もいる弟が心配だった。血の繋がった大事な弟だから、家が変わっても私の弟だから。…だから、引き取られてすぐ病で倒れたって聞いた時は衝撃だった。私からはどうしようもできない無力感から何日か寝込んだ。本当にショックだった。
だから姉なりに弟のことを遠くから思いやってた。でも報告からは良い情報は帰ってこなかった。むしろ病状が悪くなるばかりだという話ばかり。七つの王冠になって、リリアにも弟を診てもらった。でも何もできないと言われてしまった。経過観察は続けてくれてるけど、どうしようとないと。
…だから生命の聖水についての情報が流れてきた時、これは私が弟にできる最大限のことだとも思った。
ir
「弟は今もずっと難病で苦しんでるから、姉である私が助けてあげたいの。」
rd
「難病って…?」
ir
「…キスツ・インゲル病。かなり珍しい病気でかかる人も滅多にいないらしい。でも、症例がない上に少しずつ体を蝕んでってる。本来ならもう息を引き取ってもおかしくないみたいだけど、何とか病状が遅れてるからもってるだけで……。もう一年持たない内に寝たきりになるって…。寝たきりになれば、いずれ目を覚ますこともなく、そのまま息を引き取る場合もあるってリリアに言われた。だから焦ってる。何も対抗策がない以上、私はもう生命の聖水に縋ることしかできないの…!」
周りが沈黙してしまった。私もここまで感情が高ぶることなんてなかった。でも弟は着々と死の階段を登ってる。止めてあげたい。
md
「…ちなみに、その弟の名前って……?アイリスの本当の家は?」
ir
「私の本名は…アイリス・シリヌ・フェルムートン。シルフィーヌ家に養子として入ったから、間にシリヌが入ってるけど…。私は公爵フェルムートン家の娘。弟の名前はレウ。レウ・フェルムートン。」
To Be Continued………
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