コートには応援、選手含め日本五大家門が集結していた。
東の成瀬家、西の西園寺家、南の皇家、北の五十嵐家そして中心部の伊集院家。五大家門の子息令嬢は東京で家を与えられ、定期的に交流がある。当主たちの意向は娘や息子が全員幼なじみとなり、次期当主として五大家門同士が争いをしないようにということだ。だから当然皆顔見知りで仲が良い。五大家門の声援を背に受けながらまどかと美和の試合は終わりへと向かっていった。
東京都予選のときとは違い、1セット目を圧倒的な差で先取し、2セット目でデュースまで持ち込んだ。また美和が1セット取り、3セット目まで持ち込むかと思いきやまどかが勝利に王手をかけた。そして鮮やかにそして華麗にスマッシュを決め試合は終わりを告げた。花梨は試合が終わると美和に駆け寄り声をかける。
「美和は弱くないわよ。まどかが強すぎるの、相手は怪物よ。よく頑張ったわ」
そう言って泣いている美和を慰めた。
表彰式では今年の全国大会覇者のまどかの名前が最優秀選手賞として読み上げられた。その他に優秀選手賞としてベスト4までの美和や花梨も名前を読み上げられる。まどか達3人は揃い大和達のいるところへ向かっていった。
その後はニュースで高校卓球の全国大会が取り上げられた。当然であろう。今まで学生スポーツ界ではほとんど神童学園が全国優勝をしており個人、団体共にストレート負けをしたのは史上初だったのだから。そしてパーティーがある訳でもないスポーツ会場に1名を除いて日本五大家門の子息令嬢が集結するという前代未聞のことが起こっていたのだから。圧倒的な差を見せつけ、全国制覇したまどかはあっという間に神童の怪物として世間に認知された。通り名はそう簡単に消えることないとまどかは改めて痛感した。
数日後伊集院家当主主催のまどかとたつや2人の全国制覇を記念したパーティーが執り行われた。その場には成瀬家、西園寺家、五十嵐家、皇家の他にもたくさんの客人たちが集まっている。五大家門の当主達もまた幼なじみであることから仲が良く、談笑をしていた。卓球の話で盛り上がっている花梨と美和とまどか、大和は優馬とバスケの話を、たつやは元々プロのテニスプレイヤーだった瑠奈と話していた。
皆が夢中になって話しているところを邪魔しないように雲雀は食べ物を取りに移動する。すると2人の男が寄ってきた。
「あれー?皇女様じゃないですかぁ?珍しく1人で何してるんですかー?」
恐らく酔っているのだろう。そうでなければ五大家門へ手出しはしないはずだから。雲雀はいつも追い払ってくれていたたつやへ助けを求めたいが怖くて声が出ない。震えて俯いているとコツコツとこちらへ向かってくる靴の音が聞こえる。だんだん音は早くなり雲雀の後ろで止まった。
「わたくしたちの大切な幼なじみになにか用かしら?」
まどかは冷めた目で問いかける。2人は酔っているためまどかと雲雀の腕を掴み続ける。
「あれぇ?まどか様も一緒に遊ぼうよ〜」
どうやら酔っていて視点が合わず、五大家門が揃っていることに気づいてないようだ。周りにいた貴賓達は青ざめ、その行方をみている。
大和とたつやは同時に2人の腕を掴んでいたてを強引に除け、言った。
「俺の彼女に触っていいと言った覚えはないのですが?」
冷静に気品のある行動で怒りを隠しているたつやとは裏腹に大和は男の耳元で囁いた。
「勝手に汚い手で触ってんじゃねぇよ」
大和の言葉を聞き冷静になったまどかの手を掴んでいた男は青ざめ謝罪する。一方で雲雀の腕を掴んでいた男は酔いが覚めておらず花梨へ向かって手を伸ばす。伸ばされた手を豪快に払い飛ばした花梨は相手を睨みつける。男も手を払われプライドが傷ついたのか花梨に殴りかかってきた。まどかが男の拳を止めるため間に入ろうとしたときまどかの前から男が吹き飛んだ。隣を見ると男を蹴り飛ばしたフォームのまま瑠奈が立っていた。瑠奈は足を下ろして言う。
「黙って聞いてればガタガタ抜かしてんじゃねぇよ!人の大切な妹分達に汚い手で触るな」
周りにいた人達が見ていないふり、聞いていないふりをしなければいけないほど瑠奈の怒りは凄まじかった。だが咎める人は誰一人としていない、いや咎められない。彼らは正当防衛をしただけだが何をしようと日本五大家門の子息令嬢である限り当主以外から咎められることはほとんど無いのだ。隣で謝って蹴られずに済んだ男は権力を目の当たりにしたのだった。
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