第4話 〜化粧〜
あらすじ
大森はとうとう、接待に向かう事に
絶対嫌われては行けない、逃げても行けない
藤澤と若井を守るために、そして自分の正義のために立ち上がる…
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接待の当日
大森は午前の仕事を終わらせた。
この後は、16時から接待だ。
藤澤、若井と会わなかった事に胸を撫で下ろす。
あの二人を見たら、決心が弱くなってしまいそうだ。
大森は一旦、会社から自宅に帰宅した。
帰ってから、もう一度シャワーを浴びる。
相手がどんな奴でも、汗臭いとは思われたくない。
髪を洗っていると、つい考えてしまう。
やっぱり、そういうことはやらないと行けないんだろうか。
どこまでだろう。
身体は最悪、壊されてもいい。
でも、心は嫌だな。
犬に成って回れ。
あの表現を思い出すと、足がすくむ。
多分、求められる事はそういう事だろう。
身体なんて、二の次なんじゃないか
心を壊してくるかもしれない
大森は本当に大切な物は、心の奥底にしまった。
特に音楽の事には触れられたくない。
身体ということにしておこう
大切な物は
大森はシャワーを浴び終えて、リビングに向かう。
すると、飯田がソファーに座っていた。
「っ!!」
「び、くりした!!」
突然の人影に大森は飛び跳ねる。
飯田と分かると、ほっと胸を撫で下ろす。
「なんで、いんの…」
ソファーに座った飯田が振り返る。
「衣装持ってきてやったんだよ」
「…衣装?」
飯田がソファーから立ち上がると、服を大森に渡す。
見ると、灰色のズボンに白いニット
ニットは胸元がVの字になっていて大きめに開いている。
ああ、こういうのね
大森は最悪な気分なった。
「お前は、一級品だからな」
「後でメイクもやらせる」
「いいな?」
「はぁ…」
大森は返事のような、ため息のような声で返答する。
「とりあえず着替えろ」
「…はい 」
大森な白いニットを見つめる
純白な色に、空いた胸元、嫌だな
「なに突っ立ってんだ」
「時間ねーぞ」
「あ、うん」
大森は上の服を脱ぐ。
飯田が、やたらと観察してくる。
大森は、 さっさと服を着ようとニットを手に取る。
「まて」
飯田が止める。
大森は、ぴたっと止まると、飯田を見つめた。
「ちょっと、それも脱げ」
飯田がタンクトップを指さす。
「…なんで」
「品質確認だよ」
大森が、むっと口を突き出す。
人を物みたいに言いやがって
大森なタンクトップの裾に手をかけると、バサッと脱いだ。
「下も」
「え」
飯田が、ソファーに座りながら足を組む。
「脱げ」
「…」
大森は動揺する
やっぱり、そういうことなのか
接待先でも、脱ぐことになるのか
「は、はい」
大森はズボンの縁に手をかけると、一思いに下げる。
「下着も」
飯田が追加で注文する。
大森は少し震えた。
だめだ、考えるな
何が起きるかなんて
屈辱なんて捨てろ
大森は下着も脱いだ。
心を押し殺して、飯田を見つめる。
飯田はソファーから立ち上がる。
大森の身体を観察するように、上から下まで舐めるように見渡した。
そして、飯田は最後に顔を見た。
大森はその視線で、自分は商品なんだと思い知った。
虚しさが溢れるように、瞳が潤む。
「よし服、着ろ」
「はい」
大森はズボンを手に取るが、悔しさで涙が止まらない。
今まで積み上げた物なんて、全部無駄だと言われた気分だ。
ちゃんと、俺の中身も見てよ
言ったってしょうがない事だ。
大森は鼻をすすりながら、タンクトップを手に取る。
「あ、それ着るな」
「意味なくなるだろ」
「…はい」
大森は苛立って、タンクトップを床に叩きつける。
代わりに白いニットを手を取った。
「なんか真っ白って」
大森は、耐えられず馬鹿にしたように言う
「きもちわる」
言った瞬間、飯田が大森に 踏みよる。
身構える大森の髪を掴みあげた。
「い、!!」
そのまま髪を引っ張りながら壁際に連れてかれる。
「いた!!いたい!!」
大森が暴れながら抵抗する。
飯田は大森を壁に叩きつけると、ぐっと顎を掴んだ。
「お前分かってる?」
大森は呼吸を止めて、飯田を見つめる。
「接待はこんな甘くないぞ」
「服脱ぐなんてスタートラインですらねーよ」
「お前が俺にしたようにクライアントに毒づいてみろ?
「どうなるんだっけ」
「…」
大森な震えながら飯田の顔をみる。
「ほら、言えよ」
飯田がさらに圧をかける。
「…他の人が犠牲になります」
大森は若干、逃げ道を作って答えた。
飯田が鼻で笑う。
「他の人ね」
「具体的には誰だ」
「…」
大森は泣きそうになりながら俯く。
「言え」
「お前の代わりに誰が犠牲になる」
「若井と涼ちゃん」
大森は震えた声で答える。
「あ?どっちもがいいか?」
「え?」
大森は一瞬意味が分からず、飯田を見つめる。
しかしすぐに、はっとする。
大森は大きく、 首を振った。
「そうか」
「じゃあどっちだ?」
「…」
「どっち…?」
大森は驚愕する。
なんて質問をするんだ、こいつは
「どっちだ」
「若井?」
「藤澤?」
大森は首をふる。
「やめて」
そんなの考えたくもない。
「だよな?」
飯田がゆっくりと頷く
「いい子で帰ってこい」
「それで全部チャラになるんだ」
「分かったか?」
「はい」
大森はこくりと頷いた。
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服を着替え終わると、自宅にヘアメイクとメイク それぞれ専門の人がやってくる。
まるで、ドラマの主演かと言うくらい丁寧に化粧をされる。
髪の毛を梳かすとヘアオイルを塗られる。
そこに、ストレートアイロンを当てる。
また髪を梳かして、ヘアオイルを塗る
大森は鏡の中の自分を別人のような気がして見つめていた。
これが、出荷される人間か
汚い部分を隠して、丁寧に外装を塗り重ねて
作り上げられていく、まるで素のような大森元貴
しかし 目を凝らせば、そこらじゅうに剥がれそうな部分、 隙が作ってある。
気持ちが悪い。
これを剥がして遊ぶわけだ
あいつらは
しかし、大森は鏡の中の人に問いかける。
そんな奴らにお前の本性が理解できると思うか?
いいや、無理だろうね
剥せるだけ剥せ、馬鹿ども
例え、心の底が見えていたってお前らには到底理解など出来ない。
最後に大森に香水をシュッと掛けられる
どうやら、完成したようだ。
「ありがと」
一応、スタイリスト2人にお礼を言う
大森は、椅子から立ち上がると出かける準備をする。
「何か持って行かなくちゃいけないものとかある?」
大森は自分の鞄を漁りながら聞く。
「特にない」
「いつも通りでいい」
「分かった」
大森は今、飯田を見たら嫌味が一つ、二つほど出そうなので目は合わせない。
こんな心理状態で大丈夫だろうか
正直、未来の自分からクライアントを殴ったらしいよ
そう言われても、ちゃんと拳で殴ったかと聞きそうな程の気持ちだ。
暴走だけは避けないと
大森は藤澤と若井を思い浮かべる。
絶対に守る
この2人にだけはこんな世界を見せなくない。
コメント
9件
更新早すぎませんか!? 早すぎて少し心配…! でも更新頻度早いのはありがたいし嬉しいです! 次回も待ってます!!
え!?更新速度ロケットですか??ほまにありがてぇ😭
大森さん…頑張れ、 もう大好きすごい好き💘💘💘😭