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俺の名前を叫ぶ声が聞こえる。
手には刀。目の前には吉田松陽_俺達の先生が居た。
胴の辺りを縛られ一目見るだけで首を斬られるのを待っている様に見える。
選択を迫られた。
松陽を殺し高杉 桂を助けるか、高杉 桂を殺し松陽を助けるか。
「ありがとう」 松陽から一方的に言われた。
俺だけに聞こえる様に、いつもみたいに優しく振り向き微笑みながら。
その一言で俺は分かってしまった。
分かりたくもなかった。
なのに、脳が勝手にその声を処理し、理解をする。
少し汗ばんだ手で握る刀をもう一度しっかり握る。
空白の時間の中に *カチャ* という音が俺の耳の奥に刺された後、空気と肉を斬る音、俺の名前を呼ぶ叫び声がまた耳を刺激した。
松陽の長い綺麗な髪が首と共に宙へ舞う。
それすら美しいと感じてしまった。
頬に生暖かい水が垂れているのを感覚で分かった。
それ以上思い出したくもなかった。