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第4話
nmmn
rtkg
学パロ
付き合っている設定
今回からktmが出てきます(当て馬?usmのライバル的な存在として)
第3話の続き
雲ひとつない空の下、校庭に白線がまぶしく映えていた。
体育祭本番。全校生徒が集まり、応援団の声が校庭を震わせる。夏の気配をはらんだ熱気が立ちのぼり、汗と埃の匂いが混じる中、宇佐美リトと叢雲カゲツは競技の準備に追われていた。
ふたりは実行委員として朝から走り回っている。用具の運搬、入退場の誘導、点呼。忙しさにかまけている間も、視線は絶え間なく注がれていた。
――二人は特別親しい。もしかしたら付き合っているんじゃないか。
そんな噂が、ここ数日で一気に加速していた。
「カゲツ、次のリレーのトラック確認、俺一緒に行く」
「……宇佐美、一人で行って。俺は得点表の集計やらないと」
「いや、いいから。どうせすぐ終わる」
自然なやりとりのつもりが、周囲の耳に入れば十分すぎる燃料だ。
斜め後ろから、「あー、また一緒だよ」と誰かの囁きが聞こえ、カゲツは顔をしかめた。
リトはそんな彼の反応に気づき、軽く肩を叩いた。
「気にすんな」
「気にするに決まってるやろ……ぼくたちが本当に付き合ってるなんて、知られたら……」
「別にバレてもいい。俺は」
「……っ」
昨日と同じ話題だ。
カゲツは返す言葉を見つけられず、手にしたクリップボードをぎゅっと握りしめた。
*
午後。青空の下、全校注目のメイン競技――クラス対抗リレーが始まった。
実行委員であるリトとカゲツも走者として出場する。ふたりがアンカーとその直前の走者に配置されていたのは、偶然か、それとも先生の粋な采配か。
「カゲツ、俺が受け取るから。絶対落とすなよ」
「当たり前や」
スタートを告げるピストルが鳴り響き、トラックを駆ける靴音が連鎖する。歓声が校庭を埋め、熱気はさらに高まっていく。
カゲツの前走者が必死にバトンを繋ぎ、彼の手に収まった。細い脚で地面を蹴り、真剣な眼差しで前を追う。小柄な体格を嘲笑うかのように、隣のレーンでは長身の選手が並びかけてきた。
――北見遊征。
一つ年下の学年の人気者で、スポーツ万能。実はカゲツに気があると噂される男だった。
彼は横目でカゲツを見やり、挑発するように笑った。
「カゲツさん、遅いっすね。そんな細い脚じゃ勝てないっすよ」
煽られてカゲツは歯を食いしばる。必死に前へと進むが、じわじわと差を広げられてしまう。
バトンゾーンが迫る――そこにはリトが待っている。
「カゲツ!!」
真っ直ぐに伸ばされたリトの腕。
その声に背中を押されるように、カゲツは最後の力を振り絞って駆け抜け、バトンを渡した。
その瞬間、北見もバトンを繋ぐ。リトと北見、二人のアンカーが並んでトラックを走り出す。歓声が割れんばかりに響き渡る。
「宇佐美……!」
カゲツは祈るようにその背中を見つめた。
リトは力強く地面を蹴り、ぐんぐんと加速する。
横に並ぶ北見が歯を食いしばりながら声を張り上げた。
「リトさん、本当にカゲツさんのなんなんですか!」
「……俺は、カゲツの恋人だ」
「なっ……!」
走りながらの声は観客席には届かない。だが二人の間には確かな火花が散った。
リトの瞳には強い決意が宿り、北見を置き去りにするようにラストスパートをかける。
ゴールテープが切られる瞬間、勝敗は明らかだった。
リトのチームが勝利を収め、歓声が爆発する。
*
競技が終わり、校庭のざわめきの中でリトはカゲツを見つけ出した。
「カゲツ!」
呼びかける声に、カゲツは少し怒った顔で振り返った。
「……宇佐美、余計なこと言ってないやろうな」
「さぁな」
とぼけるように笑うリトの目は、勝利の高揚だけではない熱を帯びている。
北見が遠くからこちらを見ている。視線は鋭く、悔しさと未練が混じっていた。
だがリトは堂々とカゲツの肩に手を回し、軽く引き寄せた。
「俺は誰にも渡さない。カゲツは俺のだ」
耳元で囁かれ、カゲツの心臓は跳ね上がる。
「ちょっと、みんな見てるって……!」
「見せつけりゃいい。どうせ、もう隠せねぇ」
赤くなった頬を隠すように、カゲツは小さくうつむいた。
周囲のざわめきの中で、二人の距離だけが甘く、熱を帯びていた。