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今回の登場人物︰グレイシー(主人公。14歳の女の子)、シク(森にいた黒猫。物知り)、エマ(この家にいる少女。薔薇が好き)
「ん…」
私は知らないところで目が覚めた。
「ここは…?」
そこはほとんど緑で、所々、赤い薔薇が咲いていた。見た事のない、まるでゲームの世界にいるみたいだ。
「目が覚めたんだね」
後ろから声がした。振り向くと、1匹の黒猫がこっちを見ていた。
「え!?猫?猫が喋ったの?」
私が混乱していると、黒猫が
「そうだよ。ここでは動物が話すことは普通だよ」
と落ち着いた声で言った。
「ここは?」
動物が喋るということが当たり前なここはどこなのか、私は知りたくて仕方がなかった。
「残念だけど、ここがどこかは教えられない。でも、ここから出る方法なら教えられるよ」
「え?そうなの?教えて」
黒猫は少し笑いながら、
「あそこの家に入れば出られるよ。簡単には出れないけどね」
と言った。それと同時に、家の扉が開いた。その中に、私は何も考えずに入っていった。吸い込まれるように…
―1階玄関―
中は比較的綺麗だった。入ってすぐに、赤い薔薇の入った花瓶が置いてあった。そして、左右に扉があった。
「どっちに行こうかな…?」
私が悩んでいると、
「右の方がいいと思うよ」
黒猫が言った。私は、その通りに右の部屋へ行った。
―1階子供部屋―
入ると、ベッドや机など、子供部屋にあるものばかり置いてあった。それに、机には本が置いてあった。その本には、「エマの日記」と書いてあった。そして、私は何も考えずに開いた。1ページ目には、
〔✕月✕日
バラ、綺麗 バラ、好き お姉ちゃんも好き お兄ちゃんも好き 赤いバラ 好き 大好き〕
と書いてあった。2ページ目には、
〔✕月○日
バラ、なくなった 赤いの、なくなった 綺麗じゃなくなった ママが、赤いバラくれた 嬉しかった〕
と書いてあった。そして、どんどんページを見ていった。すると、びっくりするような内容が書いてあるページがあった。その内容は、
〔○月✕日
バラ、なくなる 私も、なくなる あと少し お医者さん、1週間って言ってた パパとママ、なくならないバラ、くれた お兄ちゃんとお姉ちゃん、なくなるバラ、くれた 一緒になくなれるねって バラと一緒なら、なくなっても大丈夫〕
私は、このページの意味すぐにがわかった。「バラ、なくなる」というのは薔薇が枯れるということ。「私もなくなる」というのは私が○ぬということ。「なくならないバラ」というのは枯れない薔薇。つまり造花ということ。私は鳥肌が立った。こんなにも恐ろしいことが、子供が書いたであろう日記に書いてあるのだから。
「怖いよね、これ」
黒猫は微笑みながら言った。黒猫は随分と楽しそうだった。それに、この言い方は、既にこの日記を知っているような言い方だった。
「ねぇ、そろそろ先に進んだ方がいいんじゃない?」
そう言われて、私は壁にあった時計を見た。時刻は午後4時30分だった。ここだけで20分を使っていた。急いでここから出ないと、家に帰れない。私は、この部屋を出て、左側の扉へ向かった。
―1階食堂―
横長のテーブルが中央にあり、右奥に扉があった。テーブルの上には、銀色の器があり、中にはスープが入っていた。
「飲んでみたら?」
黒猫は私を誘ったけど、正直飲みたくなかった。
「遠慮しておくよ」
私はそう言って、右奥の部屋に行った。中はキッチンになっていて、メイドの格好をした女性が包丁で野菜を切っている。女性は、「忙しいな…」と言いながら手を動かしていた。すると黒猫は、
「やぁ、大変そうだね」
と女性に話しかけていた。女性は、
「あらシクさん、どうも。今忙しいから、用があるなら後にしてもらえますか?」
と言った。シク?一体誰のこと?そう思った時、
「あ、そういえば、自己紹介してなかったね。僕はシク。君は?」
と名乗った。
「私はグレイシー。よろしくね」
私も名乗った。人が名乗ったら、自分も名乗りなさいって、お母さんから教わった。すると、誰かがこの部屋に入ってきた。見ると、薔薇を持った女の子が立っていた。
「ねぇ、まだ?お腹空いた」
と女性に話しかけていた。女性は頭を下げて謝罪をし、もっと早く手を動かした。女性は従者のような存在なのだろうか?私がそう思っていると、誰かが名前を呼ぶ声が聞こえた。
『エマー!戻って来なさーい!』
エマ?この女の子の名前だろうか?その予想は当たっていて、女の子ははーいと返事をして声のする方へ向かった。
「シク、この女を早くここから出してあげてください」
と女性は少し怒った声で言った。シクは、はいはいと返事をして、私を次の場所へ案内した。キッチンの右下のに扉があり、開けると階段があった。どうやら上に行くらしい。私達は、2階へと上がって行った。
―続く―