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ぺいんと=pn、リリア=ria
王立ルクシア学園。
国内最高峰の貴族学園。
ここで多くの貴族が学び、将来の国を支える人材へと成長していく。
……そして、俺が読んだ漫画の舞台でもある。
pn「……着いちゃった」
馬車の窓から校門を見上げ、俺は小さく息を吐いた。
大きすぎる鉄門。
白い石造りの校舎。
庭には色とりどりの花が咲き、制服姿の生徒たちが楽しそうに話している。
まさに物語の世界だった。
「お嬢様、どうかなさいましたか?」
馬車の外で待っていたメイドが心配そうに尋ねる。
pn「……え、う」
危ない。
また素で返事をするところだった。
pn「何でもないわ」
ぎこちなく言い直すと、メイドは少しだけ安心したように微笑んだ。
「それでは、お気を付けて行ってらっしゃいませ」
俺は小さくうなずき、馬車を降りた。
途端に周囲の視線が集まる。
「ペイント様だ……」
「噂に聞いていたより、おかわいい……」
「でも、近寄るのはやめておこう」
最後の一言は聞こえなかったふりをしよう。
pn(やっぱり嫌われてる……)
まあ、当然だ。
原作のペイントは出番が少しだけってだけで高飛車で有名なお嬢様。
話しかけられても無視するし、気に入らなければ平気で嫌味を言う感じの少女ってことはすぐわかった。
だから周りは、かわいいけれど怖い人という印象しか持っていない。
(今日は余計なことはしない)
(目立たない)
(ヒロインにも近づかない)
それだけ決めて歩き出す。
校舎へ続く廊下を歩いて、ちょうど角を曲がった時だった。
???「きゃっ!」
pn「えっ!?」
ドンッ。
小さな衝撃。
誰かと肩がぶつかった。
???「ご、ごめんなさい!」
慌てた声。
俺の足元に数冊の本が散らばる。
pn(うわっ、やっちゃった!)
反射的にしゃがみ込み、本を拾おうとする。
そのとき、相手の顔が目に入った。
金色の髪。
空のように青い瞳。
柔らかそうな雰囲気。
pn(……あ)
知ってる。
この子を俺は知っている。
リリア・エルフォード。
この世界の主人公。
聖女の力を持つ少女。
pn(終わったぁ)
頭の中で警報が鳴り響く。
原作では、この場面でぺいんとは本を踏みつける。
そして、
『平民風情が、わたくしの前を歩くなんて身の程を知りなさい』
そう言い放ち、リリアを泣かせる。
それが二人の最初の出会いだった。
pn(いや、無理無理無理!)
そんなこと言えるわけがない。
俺は散らばった本を一冊ずつ拾い集める。
pn「はい」
リリアへ差し出すと、彼女はぽかんと口を開けた。
ria「……え?」
pn「あ、ご、ごめ……」
pn(違う!)
危うく謝るところだった。
ペイントは謝らない。
ここで謝ったら、また「様子がおかしい」と思われる。
俺は慌てて言い直した。
pn「……前を見て歩きなさい」
できるだけ冷たい声を意識する。
……つもりだった。
でも、自分で聞いても全然迫力がない。
ria「は、はい!」
リリアは本を受け取り、ぺこりと頭を下げた。
ria「ありがとうございます!」
pn「……え?」
ありがとう?
違う。
ここ、「ありがとうございます」じゃないでしょ。
俺、嫌味を言った……つもりなんだけど。
王立ルクシア学園、大講堂。
赤い絨毯がまっすぐ壇上まで伸び、その両側には新入生たちが整然と並んで座っている。
俺も案内された席へ腰を下ろした。
pn(……思ったより普通だな)
もちろん建物は普通じゃない。
天井は見上げるほど高く、柱には金色の彫刻が施されている。
窓から差し込む光が床を照らし、まるで教会みたいな雰囲気だ。
だけど、校長先生が話して、新入生が聞く。
その流れは前世の学校と変わらない。
pn(ちょっと懐かしいな……)
俺は小さく息を吐いた。
「–以上で、歓迎の言葉といたします」
壇上に立つ学院長が話を終え、講堂に拍手が響く。
pn(終わった?)
よし、このまま教室へ移動だな。
そう思った、その時だった。
「続きまして、新入生代表による宣誓を行います」
pn(へぇ、代表なんてあるのか)
俺は完全に他人事だった。
学院長が一枚の紙を開く。
「新入生代表」
一瞬、静寂が訪れる。
「ペイント・フォン・ローゼンベルク公爵令嬢」
pn「…………え?」
頭が真っ白になった。
pn(え?)
pn(誰?)
pn(……いや、俺ぇぇぇぇぇ!?)
全身の血の気が引いていく。
周囲の視線が、一斉にこちらへ向いた。
pn(無理無理無理無理!!)
聞いてない!
原作にこんなシーンあったか?省かれてた?
昨日転生したばかりなんだけど!?
俺は助けを求めるように辺りを見回す。
もちろん誰も助けてくれない。
教師が優しく微笑む。
「ペイント様、どうぞ」
逃げられない。
公爵令嬢が返事をしないなんて、それだけで大騒ぎになる。
俺は震える足で立ち上がり、ゆっくり壇上へ向かう。
階段を一段ずつ上がるたびに、鼓動が速くなっていく。
そして演台の前に立った。
そこから見えた景色に、思わず息をのむ。
pn(多っ……)
何百人いるんだ。
全員が俺を見ている。
逃げたい。
今すぐ帰りたい。
「どうぞ」
学院長が一枚の紙を差し出した。
pn(助かった!)
そう思ったのも束の間、紙は真っ白だった。
pn「…………」
「ご自身のお言葉でお願いいたします」
pn(終わったぁぁぁぁぁぁ!!)
心の中で絶叫する。
アドリブ!?
この世界、アドリブなの!?
普通、原稿あるだろ!
俺は必死に考える。
ペイントならどう話す?
高慢に?
偉そうに?
……分からない。
分からないなら。
pn(俺らしく話すしかない)
覚悟を決め、口を開いた。
pn「本日は、このような素晴らしい式を開いてくださり……ありがとうございます」
講堂が静まり返る。
……あれ?
何か変だった?
いや、普通の挨拶だよな?
俺はそのまま続ける。
pn「今日から始まる学園生活に、不安を抱いている方も多いと思います」
リリアがこちらを見上げているのが見えた。
なんかちょっと安心するな。
pn「ですが、ここにいる全員が同じ新入生です」
少しだけ肩の力が抜ける。
前世で人前に立った経験を思い出しながら、言葉をつないでいく。
pn「身分や家柄は違っても、学ぶ立場は同じです」
その瞬間。
会場がざわりと揺れた。
pn(……え?)
何かまずいこと言った?
でも止まれない。
pn「互いに支え合い、励まし合える学園生活になればと思っています」
一礼する。
pn「どうぞ、よろしくお願いいたします」
何秒かの静寂。
pn(やばい……)
pn(失敗した?)
冷や汗が背中を流れる。
すると。
パチッ。
誰かが拍手をした。
続いて二人、三人になり、やがて講堂全体が大きな拍手に包まれた。
俺はほっと胸をなで下ろす。
pn(助かった……)
そう思いながら席へ戻る。
講堂のあちこちで、生徒たちが小さな声で話していた。
「今の、本当にペイント様?」
「『ありがとうございます』って言わなかった?」
「身分に関係なく……って」
「噂と全然違う……」
その囁きは、静かに、けれど確実に学園中へ広がり始めていた。
“悪役令嬢ペイント”の評判が、少しずつ変わり始めていたのだった。
コメント
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読んだよ〜第2話!ぺさんの新作、面白すぎる🥀 主人公がペイントになっちゃって、リリアにぶつかったシーンで「前を見て歩きなさい」って冷たくしようとしてるのに優しさが漏れちゃうところ、めっちゃ好き。あと入学式のアドリブ挨拶で「身分や家柄は違っても」って言った瞬間、会場の空気変わったのゾクッときた。悪役転生なのに気づいたら好感度上げてる感じ、たまらないね😌💭 次どうなるのか本当に楽しみ!
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