テラーノベル
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俺は、いつも通り元気に会社へ向かった。
昨日も先輩のことを考えてなかなか寝付けへんかったけど、今日はちゃんと笑顔を作って行かなあかん。
『おはようございます』
明るく挨拶してフロアに入る。
いつもなら、すぐに桃井先輩がデスクから顔を上げて佐野くん、おはようって返してくれるのに……
今日は違う。
別の先輩が俺のところに来た。
〈今日から佐野の指導を担当することになった草間です〉
『……え?』
俺は一瞬、頭が真っ白になった。
『あの、桃井さんは……?』
草間先輩に少し申し訳なさそうに言った。
〈桃井なら、昨日で仕事辞めたで〉
『えっ……。』
声が震えた
『先輩……桃井さんがどこ行ったか、知りませんか?』
〈知らへんな、ごめんな〉
その瞬間、胸の奥がぐちゃっと潰されたみたいになった。
桃井先輩が……辞めた?
俺のせいや。
絶対、俺のせいや。
俺があんまり近づきすぎたから、高橋さんの事件もあったし、先輩はもう俺のそばにいられへんくなったんや……
その時、末澤さんが近づいてきた。
『末澤さん!桃井さんどこ行ったんですか?なんで辞めたんですか?俺のせいや……俺のせいやろ……』
声が勝手に大きくなった。
末澤さんは俺の肩を掴んで、静かに言った。
【佐野、落ち着け。桃井がどこに行ったか、俺にも分からん。あとお前のせいやない。お前、今日仕事無理やろ。休め】
『……はい、ありがとうございます。』
俺は小さく答えて、その場を離れた。
フロアを出て、エレベーターに乗り込む。
手が震えて、ボタンを押すのもやっとやった。
先輩……どこ行ったん?
俺に何も言わずに、なんで辞めたん?
俺のこと、嫌になったんか?
それとも……怖くなったんか?
胸が苦しくて、息がうまくできへん。
エレベーターの鏡に映る自分の顔は、完全にいつものワンコの笑顔なんかじゃなかった。
ただの、取り残されたオオカミみたいに、暗くて寂しげやった。
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