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仕事場から出た俺は、行く当てもないまま、ただぼんやりと街を歩いていた。
頭の中は桃井先輩のことでいっぱいやった。
その時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「まさか、2人がこの会社にいると思わなかったわ」
〔ほんまな。まさか、ここで桃井に会うと思わなかったわ〕
{俺も!相変わらず、桃井は完璧主義者やって情報入ってるけどな}
「完璧主義者じゃないって。ただ、やるべき事をしてるだけだよ」
俺は反射的に顔を上げた。
そこに……
愛しい桃井先輩の姿があった。
でも、先輩の隣には見知らぬ男性が2人。
とても仲良さそうに笑い合っている。
胸がざわついた。
俺は思わず足を速めて近づいた。
『先輩!』
「えっ、佐野くん!?」
桃井先輩が驚いて振り向く。
俺は息を切らしながら、言葉が止まらなかった。
『やっと見つけた……!なんで、何も言わずに辞めるんですか?俺のこと嫌いになったん?俺のこと怖いん?なんで……?』
男性2人が驚いた顔で俺を見る。
{えっ、誰?}
〔桃井、こいつ誰なん?〕
桃井先輩は慌てて俺を紹介した。
「前の会社の後輩の佐野晶哉くん。佐野くん、嫌いでもないし、怖くもないよ」
『じゃあ、なんで何も言わずに辞めるん?ていうか、この2人誰なん?先輩は俺のなんに……』
「ちょ、佐野くん何言ってんの!?2人は保育園からの幼なじみだよ。小島くんと福本くん」
幼なじみ……?
胸のざわつきが少し収まらないまま、俺は言葉を続けた。
『俺、先輩居らな何もできひん……俺、先輩のこと好きやねん。愛してるもん』
桃井先輩の目が大きく見開かれた。
「佐野くんは、私いなくても仕事できるでしょ……それは、ありがとう」
『できてへんから、今こうやって先輩に会えてるんですよ。今日、仕事やったけど……先輩が辞めたって聞いてパニックになって、末澤さんに帰されて今に至ります』
「佐野くん……」
俺はうるうるした目で先輩を見つめた。
『先輩、帰ってきてください。俺、先輩居なきゃ無理……』
静かな街角で、俺の声だけが切実に響いた。
桃井先輩は言葉を失ったまま、俺の顔をじっと見つめていた。