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夜風はひんやりとしていて、コートの襟を立てても風が喉元に忍び込む。けれど太宰は、それすらも心地よい痛みのように感じていた。


まるで、あのバーが現実だったのかどうかさえ、曖昧に思えてくる。


ゆるやかに坂を上り、見慣れた路地を抜けてい。ふと顔を上げると、窓に灯る柔らかな光が目に入った。


「…ただいま」


赤い瞳の女——君(夢主)が、ゆったりとした部屋着でソファに座っていた。長い髪は緩くまとめられ、手には本。


彼女は太宰を見るなり、口元に微笑みを浮かべた。


「おかえりなさい、治」


太宰はその声に応える代わりに、脱いだコートを無造作に椅子にかけ、彼女の隣へと腰を落とす。


「……まだ起きてたのかい?」


「まだまだ夜は長いし」


そう言って、君はすっと立ち上がると、棚から赤いボトルを取り出す。


「ね、飲むでしょう? 今夜はちょと話したい気分なの」


ワイングラスに注がれたルビーの液体が、部屋の明かりを反射して揺れる。


太宰はそのグラスを受け取り、ゆっくりとひとくち。


「……何も聞かなのかい?」


君は目を細めて、ワインの香りを嗅ぐ。


「ん?なんの事かしら?」


太宰の目が、ゆっくりと君を見た。


君はワインをひとくち飲み、赤い瞳で彼を見つめ返す。 太宰はくすりと笑い、グラスを君に掲げた。




グラスが触れ合う、ほのかな音が、夜の深みに沈んでいった


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