剣持side
「『ガクくんは、何泊まで許してくれるのか検証面白そう。』おー!いいじゃんねぇ!」
いつものように配信を始め、ゴミ箱…もといクソマロ…もといマシュマロを漁っていると
面白そうなドッキリ企画の提案が書いてあった。
「確かにね!泊まったりとかする仲ではございますけど…全然帰んねぇなコイツっていうのwこれ面白くないですか?」
伏見の優しさの限界を検証しようの回とか、めちゃめちゃ面白そうすぎて個人的にも興味が湧く
実際配信するかは、別としてチャンスがあればやってみようかな〜なんて企みながら、この日の配信を閉じた。
「いらっしゃい刀也さん」
「お邪魔します。」
さて、やってきました伏見家!
あれから密かにチャンスを窺い、夏休みに入る頃。それとなくお泊り出来ないかと聞いた。
『え?あー、いいっすよ。』
かるっ
この男、警戒心ゼロであります。
ゴロゴロ
「なぁ刀也さん…」
「はい?」
「なんか荷物多くねぇ?」
ガクくんが指差す先には、四輪キャリーバッグ
「そうですか?気の所為ですよ」
頭をこてんと傾け、すっとぼける僕。
さすがに聞くよね。でもこの明らかに大きいバッグさえドッキリイベントの一つ。さぁガクくん、どう返す?
「えー?いや、まぁ…とりあえず中どうぞ」
あっさり中に通され驚く
これは、信頼の現れか関心の無さなのか。どっちにしてもガクくんが既に心配になってきた。
「…じゃあ今日の咎人配信は、この辺りにしときましょうか」
「そうッスね!いや〜今日のバトルも熱かったぜ!」
「うん!それでは皆さんいい夜を!最後の締めはー?」
「ピーッス!」
二人でじゃあな〜と手を振りながら終了ボタンを押す。
あまり緊張しない性格だけどONとOFFを明確にしているので一気にゆるい空気が訪れた。
「おつかれ〜刀也さん」
「うん、ガクくんもね」
お互いの疲れを労いながらジュースで乾杯。やっぱり気心の知れた相手との時間は心地良い。
この日は、久しぶりという事もあり夜遅くまで色んな話をした。
検証3日目。
さすがに2泊以上は、僕としても未知数。ガクくんの反応が気になり内心ドキドキしながら過ごしていたが…
「刀也さん、この漫画知ってる?」
「あ、これ映画あるんだ!今度見に行こうぜ刀也さん」
「刀也さん、今日何食いたい?」
「風呂沸いたぜ〜刀也さん」
「……。」
え、僕達同棲してたっけ?
ドッキリイベントの一環で、あらゆるワガママ発言を用意していたというのにむしろ先回りして甘やかされている
いやいや…まだ3日だし?これから、これから。
検証7日目。
ついに一週間が経ってしまった。
「刀也さん、おはよ。そういえば刀也さんの好きなトマトジュース買ってきたけど飲むか?」
「…いる」
朝から配信する男なだけあって爽やかだな…
相変わらずキラキラと輝きを放つガクくんは、僕が何日居座ろうと変わらなかった
え?なんで?
普通聞くよね?怒るよね?一週間だよ?家族でも恋人でもない奴が7日いるんだよ!?
日を追うごとに、何故かこちらがドッキリを仕掛けられている気分になっていった。
検証10日目。
玄関先で振り返り、ぺこりとお辞儀する
「えっと…長くお世話になりました。僕家に帰りますね」
とうとう僕のほうが音をあげてしまった。
これ以上は、僕の良心が痛む。
一つ溜息を溢し、顔を上げると何やらニヤニヤと笑う狐
「あれ?もういいんすか?」
その一言で、まさかと勢いよく詰め寄った
「な!?さては何か知ってたな!」
「いや、何も?ただ真面目な刀也さんが何日も泊まるなんて珍しいから剣持父に電話したんすよ」
「え!?」
「最初は、親と喧嘩でもして家出してきたんかな〜って思ったんすけど。そんな感じでもないし、ちゃんと俺ん家に泊まるって言ってあったみたいだし?これは何か企んでるな、と…」
「……。」
何もかもお見通しすぎて、ぐうの音も出ない。
「んで?何か成果は、あったんすか?」
余裕を感じる声音に小憎たらしいと、そっぽ向きつつ
「伏見ガクは、どこまでもお人好しだという事がわかりました。」
検証結果を報告した。
「ぶはっ」
吹き出して笑うガクくんをジト目で睨んでいると、満足したのか「ごめん、ごめん」と言いながら笑顔でこう言った
「ところで刀也さん、家今日カレーなんだけど食べてく?」
「……食べます。」
おわり
何が恐ろしいって冒頭の何行かは、リアルな話ってとこですよねw
あのマロには天才か!?ってなりました。
咎人は、ガチ。
ちなみに『伏見の優しさに付け込んでみた』には、Wミーニングがあります。
作者が剣持を『伏見の優しさに漬け込んでみた』ですwやかましいわってね
コメント
2件
伏見そういう所あるよなぁ…と、思いつつ今回も楽しく読ませて頂きましたぁ! っぱ咎人なんだよなぁ!! ありがとうございます!(-∧-)合掌・・・