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桜の花弁が完全に散り、緑の葉が夏へ向かっていくことを知らせていた。
そしてその頃、本格的な梅雨の時期に入っていた。
翠( じめじめ してるな 。 )
窓際の後ろから二番目の席に座って授業を受けているすちは窓に滴る水滴を眺めながら顔を顰めていた。
紫「 どうしたんだ ? 」
翠「 いや − 、今日 傘 持ってこなかったんだよね 。 」
翠「 ほら 、今日 天気予報 夕方まで 晴れ だったの 。だから 持って来れなくて … 。 」
紫「 準備周到 な お前 が … 珍し 。 」
翠「 今日 は 偶然 持って来れなかったんだよ … 。 」
下唇を噛んで斜め下を向くすち。
机に突っ伏し、すちはいるまの横顔を見ながら腕の中に顔を埋め深い眠りの海に潜った。
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桃『 すち っ ! これどう ? 似合ってる − ?? 』
桃『 んへへ っ 、かわいいっしょ !! 』
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_『 すち 、すち 。 』
翠『 ぅ あ っ っ !? 』
紫『 お前 にやにや し過ぎだぞ 気持ち悪 。 』
翠『 ひど … 。 』
すちはいるまの声で目を覚まし、窓の外の景色を眺める。
だが空は眠りにつく前とさほど変わらない空模様であった。
見下げるようにしてすちのことを見るいるまはいつものように罵倒を口にした。
その言葉にいじけるように下を向いて小さく呟いた。
紫『 らん の 夢 でも 見てたんか ? 』
翠『 … あんま 覚えてない 。 』
紫『 嘘付け 。 』
大きく溜め息を吐いてから頬杖をつきながら黄金の瞳をすちに向けたいるまは呆れたように言葉を放った。
目を逸らしてシラを切ったすちに対しているまは即答でその言葉が嘘だと決めつけた。
すちはビクッと図星のような反応を見せ、それを見たいるまは何度目がわからない溜め息をついた。
次に、すちはおずおずと口を開いた。
翠「 らんらん が … 、ウェディングドレス 着てて … 。似合ってるかって … 。 」
紫『 良かったな 、嬉しかったろ 。 』
翠『 どうせ 夢 だし … 。 』
紫『 嬉しかったんやったらええやん 。( 撫 』
翠『 そ − かもね 。 』
少々不貞腐れるすちにいるまは頭をくしゃくしゃと撫でて、すちは素っ気ない返事を返した。
すちはいるまを横目で見ながら夢にまで出てきた恋い慕う相手のことを見つめた。
その視線に気付いた様子のその人はすちに向かって小さく手を振った。
それに応えるようにすちも手を小さく振った。
翠『 ていうか 、今 なんの時間 ? 』
紫『 ぉぉ それも わかっとらんかったんか 。 』
翠『 そりゃ 今 起きたからさ 。 』
いるまはうげーという言葉が似合う顔をしながら面倒くさそうに時間割を指差した。
紫『 今 五時間目 終わったとこ 、後一時間 で 帰れんぞ 。 』
翠『 ぁ − 、二時間寝てたんだ 。… 後一時間 で 雨 止むかな 。 』
紫『 天気予報だと 止まなさそ − やったけど ? 』
翠『 ぁ − ゛そう 、走るっきゃないか ぁ … 。 』
紫『 どんまい 。( 肩叩 』
すちは絶望したように頭を抱えたがすぐに切り替えて走るという選択肢を取った。
そんなすちの肩を叩いて軽く励ますいるまにすちは益々不機嫌になった。
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赫『 、らん 、どした ? 』
桃『 ぁ っ 、んや ? なんでもない 。 』
赫『 … そ 。 』
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終礼という如何にも不要な時間が終わって、すちは掃除の週であったから掃除用具入から箒を取り出し、逆さまになった椅子が乗った机を避けなら箒を動かした。
翠『 あれ 。 』
紫『 どした ? 』
開いている扉の外側にある廊下にいる見知った姿を見て思わずすちは声を出した。
すちと同様に掃除の週であったいるまは箒を片手に持ちながら自身より少し身長の高いすちを見上げて首を傾げた。
翠『 いや 、らんらん が あんなとこ に いるから 、傘 持ってるみたいなのに 、不思議だな と 思って 。 』
紫『 まあ 誰か 待ってんだろ 。ほら 、早く 掃除終わらせんぞ 。 』
翠『 ぁ っ 、うん 。 』
らんの姿をすちは気にしていたがいるまは気にすることはないという意味合いを込めて言葉を紡いだ。
いるまは早く掃除を終わらせたい様子で、すちの気をらんから離した。
翠( らんらん 、まだ待ってる … ? )
掃除を終わっても廊下にいるらんは微動だにせず、ただ足元を見つめている様子だった。
すちはそんならんに話しかけようと近づいた。
そしたららんからすちに話しかけてきた。
桃『 すち 、傘 持ってないんでしょ 。 』
翠『 ぇ 、そうだけど 、なんで 。 』
桃『 小耳 に 挟んだ 。これ貸すよ 、また今度返して 。 』
何故からんはすちが傘を持っていないことを知っていてそれに疑問を持ったすちにキッパリと答えてからシンプルな黒色の傘を強引にすちの手に持たせた。
すちはそんならんに心配の気を込めて話を続けた。
翠『 らんらん は 傘 なくて 大丈夫なの ? 』
桃『 俺 折りたたみ傘 あるから 、それに すち に 風邪ひいてほしくなんかないし 。 』
翠『 そっか … 、ありがと 。( 微笑 』
桃『 いいよ 、またね 。 』
翠『 うん 、またね 。 』
らんはすちを置いて先に帰路へ着くために下駄箱への階段を降った。
すちは本来一緒に帰る予定のいるまを待ちながらまた窓の外を眺めた。
そしてある光景を目にしてしまった。
紫『 おっまたせ − っ 、… すち ? 』
翠『 … … 。 』
紫『 お前 、傘 持ってなかったんじゃなかったっけ 。ちょ 、おい 。 』
話し掛けても全くとして反応を示さないすちにいるまは肩を掴み、困惑の感情を隠せないまますちの見ている方向を見た。
紫『 … 。 』
傘で顔がわからなくても目立ったぬいぐるみのキーホルダーが付いた革鞄を見て理解をするのはそう難しいことではなかった。
一つ傘の下に居たのはらんとそこにいるはずのないなつだった。
翠『 … ごめん 、待たせちゃった 、いるまちゃん 、行こっか 。 』
顔には全くとして映っていない感情は、窓にあてている拳を一目見ればわかった。
今にもその中から血が流れそうな程強く握られていれている拳がそこにはあった。
紫『 … そうだな 。 』
いるまは背中をポンポンと優しく慰めるように叩いてそれ以上何も言わなかった。
翠『 いるまちゃん いい彼氏 に なれると思うよ 。 』
紫『 お − マジで ? うれし − 。 』
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