テラーノベル
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夏だしホラーでも書こうかなと思っていたら、サスペンスになってしまいました。
死ネタ注意
ビミョー にsnjn要素アリ
視点がコロッコロ変わりまくります
ずっと隠してた秘密がバレてしまったから、ぼんやり机の上を見詰めていた。
「じ、仁人お前、なん…何してんだよマジで…!」
ちょっとひっくり返って上ずった勇斗の声が聞こえる。
「なぁ、何で…、こんなになる前に、相談しやんかったん、?」
心配するような、それでいて何処か俺を恐れているような太智の声が聞こえる。
「…ふ、たりとも落ち着いて。俺らにも責任はあるんだから、一旦仁ちゃんの話聞かなきゃ」
落ち着きはらったフリして二人を宥めては居るけど、柔太朗だって声も手も震えている。
「…なぁ仁ちゃん、なんか言うてやぁ…」
泣きそうなのを堪えているせいで掠れてしまって、殆ど聞こえなかったはずの舜太の声は、静まり返った部屋にやけに響いていた。
目線を手元のスマホに下げると、メンバーの困惑やら憤怒やらの原因である動画が視界に入ってくる。
誰も知らないメールアドレスから全員のスマホに一斉送信されていたURL。
その中身は、俺が何者かに組み敷かれて犯されている一部始終を纏めたポルノ映像だった。
「…みんな居るとこじゃ話しにくいか、俺聞くからみんなちょっと別室行っててくれない?」
一番近くに居た柔太朗が俺の背中を撫でながらそう言う。
どうしていいのかわからないといった様子の舜太は、とりあえず指示に従っておこうと出ていった。その後に、太智、勇斗と続けて部屋から出ていく。
遂に部屋には俺と柔太朗の二人きりになってしまった。
本音を言うと、今すぐ逃げたい。帰りたい。きっと俺のしていたことは、彼らには理解してもらえないから。
こんな…こんなタイミングで俺の汚い部分を知られるくらいなら、ここで死ぬか帰ってから死ぬかの2択しかないと思った。
「…仁ちゃん、」
「帰っていい?」
「ダメ。ダメだよ、話してくれるまで離さないから」
ぎゅ、と俺の手が柔太朗の薄くてでかい手に包み込まれた。
あぁなんか、この感じ。
俺の手なのに自由が奪われて、捕まえている力はそんなに強くないのに、もう二度と逃げられないような感じ。
ちょうど、この動画のときもこうやって手握られてたな…
「…め、…ぃ、」
「…ん、?」
「ごめ…ごめんなさい、」
「えぇちょ、どうしたの泣かないで」
別に泣きたい訳じゃないのに勝手に涙が出てきて、謝りたくなんてないのに謝罪の言葉が止まらない。第一誰に謝ってんだって話だし。
行為中に酷いことをされたわけでもない。
そもそも、俺から望んでこうなってるんだから文句なんて言える立場でもない。
なのに口からも目からも零れるものを止められなくて、柔太朗の体温だけが明確にそこにあって。
「…おれ、俺…」
「うん」
「なんか…リーダーなのに、こんな…こんなんで、いいのかなって」
「不安になっちゃったの?」
「勇斗みたいな演技力なんてないし、太智みたいに身体張れるわけでもない…し、」
「…うん」
否定も肯定もせずに、ただ小さく頷いて話を聞いてくれる柔太朗になんだか安心を覚えてしまって。
話したら引かれるかもって、もう俺はここに居られないかもって、わかっているのに。
「柔太朗みたいに顔で勝負なんて無理だし、舜太みたいに賢くもない、から…俺、自分に何があるんだろって、なんもないじゃん?って、」
「なんもないなんて、」
「わかんねえよ柔太朗には、!!」
あぁ、言ってしまった。
必死に歩み寄ろうとしてくれているメンバーを、また突き放すようなことをしてしまった。
でもどうせ、俺が考えてる…抱えてるコレは、みんな間違いだって言うんだろうし。
こうでもしなきゃ自分を保っていられないような汚い人間なんて、このグループにはきっと必要がない。いや、存在してはいけない。
「…誰かの腕の中で喘いどけば、雑誌の撮影が入ってくんの。」
「…仁ちゃん」
「誰かの欲を受け入れるだけで、テレビに出させてもらえんの。」
「仁ちゃん、?」
comi
1,406
#M!LK
はる☻
29,039
あーなんかもう、全部どうでもいいかな。
「行かなきゃ…俺、こんなとこ居たって仕方ないし」
「え、え、?」
考えるのはめんどくさくて、柔太朗のびっくりしたような顔はうざったくて、握られていた手を振り払って鞄をつかんで部屋を出る。
ドアの近くからちっちゃく声が聞こえた気がしたけど、それがなんだったのかはわからなかった。どうでもよかった。
次の日の仕事は全部無断で欠勤した。楽しみにしていたバラエティも、新曲を披露する予定だった音楽番組も、毎週するのが習慣になっていたラジオさえも出なかった。
その代わりに、目の前の現実と向き合った。送られてきた自分の動画を何回も何回も見て、気持ち悪いと思った。
忘れたくて、忘れるためには寝なきゃいけないと思って。でも寝れなくて、いつもみたいに睡眠薬を飲んだ。なのにちっとも眠くない。なんで?なんで規定量を飲んでも効果がないんだろう。あと1つだけ。もう1つで、きっと。
さらに次の日、俺は自宅で倒れているのをマネージャーに発見されて病院へ運ばれた。
意識不明の重態、オーバードーズによるものだった。
仁ちゃんが入院した翌日、マネージャーから全部教えてもらった。
仁ちゃんがしていたことの全貌、あの動画を送ってきたメルアドの主について。…仁ちゃんが受けていた仕事と、この行為は何も関係がなかった…つまり、今までの仕事は仁ちゃん自身の努力で掴み取ったものだったと言うこと。
全部を4人で聞いた。
太ちゃんは呆然としていた。それと同時に、仁ちゃんが悪い大人に利用されていたのを知って、一番静かに怒っていた。
舜太はずっと現実を受け入れられないみたいだった。仁ちゃんが倒れたことも、身体を売ったことも。全部が悪い夢やったらええのにって、ぼやいていた。
勇ちゃんは…なんだか上の空だった。ぼんやり聞いていて、でもなぜかふと食いつくタイミングもあって。正直一番気味が悪かった、何かに取り憑かれているみたいだった。
「…とりあえず、こんなん世間には公表できひんから活動休止だけ出しとく?」
「まあそれが最善策だろうね」
「こんなん知られたら仁ちゃんの居場所なくなってまうかもしれんもんな、」
…やっぱり話に入ってこない。今日の勇ちゃんはなんか変だ。仁ちゃんのことを誰よりも大事に思ってて、多分俺らの中で一番精神的に支えてやれるのは勇ちゃんなはずなのに。
その大黒柱がこんなんで大丈夫なんだろうか、と言うか今この人は何を考えている?
「まーでもこれは時間と俺らの行動で解決するしかないやんな」
「せやね…仁ちゃんが目覚ましたらサポートとM!LKの活動両立せなあかんから、みんなで頑張ろうな!」
「うん、みんな抱え込みすぎず思ってることは伝えていこ。…勇ちゃんも、ね?」
「…わかってる」
本当にわかっているんだろうか。ぼそりと呟いた勇ちゃんの口元には、彼自身の親指が近付けられていた。
そのまま爪の先をガリ、と噛んで…会議が終わったからか虚ろな目をしたまま部屋を出ていってしまった。
「…勇斗どうしたんやろ」
「仁ちゃんの動画送られてきた日からずっと変やねん…」
「よなぁ?何考えとるんかもわからんし…」
感じていることはみんな一緒だったみたいで少し安心した。
…にしてもなんで一人だけあんな感じになってしまったんだろうか。
わからないし、そこは知らなくてもいいと思った。それまで知ってしまうと、俺たちも同じようになってしまいそうな気がして。怖くて知りたいなんて言えなかった。
運ばれてから丁度1週間経ったころ、仁ちゃんが目を覚ました。
「ぁ…おれ、?」
「仁人?え、仁人目ぇ覚めたん?!」
騒がしい。太智の声か、これ。最初の掠れた…嗄れた声は誰の声だ、?
「仁人!!仁人おはよ!!!」
「お…ぁょ、」
あぁこれ、これが俺の声なのか。ガッスガスで覇気がない、呂律もろくに回ってない。
はは、なんだこれ。おいちゃんどころか余裕でジジイじゃねえか。特段面白くもないのにもう笑うしかなくて、それが惨めで。
なのに俺が目を覚ましたことを喜んでくれるメンバーがまだ居たことが、嬉しくて仕方がなくて。
「…だ、いち」
「ん?あ、今先生呼んだからな!もうちょい待ってや!!」
「…おれ、死ねなか…た、」
「そら死なれたら困るからな、見つけて直ぐ処置してもらったわ」
「…そ…か」
こんなんでも生きてていいんだろうか。
俺みたいな、なんの取り柄もないようなガラクタがここに居てもいいんだろうか。
そんな疑問に対する答えは、言葉じゃなくてみんなの行動として数十分後に返ってきた。
「仁ちゃ、仁ちゃん!!」
「しゅ…ん、た」
慌ただしく病室のドアが開いて、服数人の足音が聞こえてくる。
焦ってはいるけど、それ以上に安堵したような、心底歓喜しているような舜太の明るい声が聞こえてくる。
「目、覚めたって…」
「…ん、」
「仁ちゃん…、あーもう、マジでよかったぁ…、!」
次いで柔太朗の優しい声が鼓膜を揺らす。
看護師さんがベッドの上半分をちょっとだけ起こしてくれて、みんなとの目線が少しだけ近付く。
「ごめ…ごめ、ん、俺…」
「俺らこそごめん。何も気付けんかったん…、俺らのせいや、」
気付いたら太智に物凄く弱い力で抱き締められていて。
そこに柔太朗も舜太も加わって、押し潰されるかと思った。圧死するんじゃないかとも思った。
だけど、苦しいくらいのその圧迫感が今は嬉しかった。生きている実感が、自分がそこに存在している実感が湧いて、これから先なんとかなりそうな気さえしていた。
ところで、
「は…」
「ん、何?」
「勇斗、は、?」
「…わかんない、なんか…連絡つかないし家にも居ないみたいで…」
「…ぇ、?」
何してんだバカやろうって、言える立場じゃ無いってわかってんのにそう思った。
それと同時に急激に不安になった。勇斗が居なくなったらこのグループがどうなるのか、俺たちが正気で居られるのか、定かではなかった。
俺がダメになったときも、みんなはそんな気持ちだったのかな、なんて。
それ以上はもう考えたくなくて、逃げるように目を瞑った
ピンポーン。玄関のチャイムが鳴って、俺に用がある人が来たことを伝える。家に帰ってこられたのがつい3日前、そんな俺に来客ってどういうことだ?
インターホンを見てみると、そこに映っていたのは行方不明だのなんだのと言われていた男、佐野勇斗だった。
「えっ、え、?」
「…仁人」
「待って、今開ける」
縺れる足で廊下を走って、震える手で鍵を開けた。ゆっくりと扉が開く。
「…は、やと…?」
「ごめんな、目覚まして直ぐ会いに行けなくて」
「いやそれはいいんだけど、お前なんかぼろぼろじゃ…」
「俺、俺さあ。なんで仁人の苦しみに気付いてやれなかったんだろって、ずっと考えてた」
「え?うん、ありがとう、?」
「でも考えても考えてもわからなかった。俺には到底理解できないレベルの苦しみを抱えてたんだ、って、気づいた」
なんかやけに喋るな、てかこっちの話し一切聞いてないみたいで会話全く繋がってないし。
ふと勇斗との距離が縮まってきていることに気がついて、俺は後ずさりをする。
いつの間にか玄関まで勇斗が入ってきてて、顔はずっとこっちを向いてるのに腕は後ろに向いてて、後ろ手でドアを閉めているのが見えた。
「な、なぁなんか今日のお前変」
「見てこれ」
「…?、?!っひ、…こ、れっ、?」
数ヵ月前の俺の腕…よりも遥かに酷い、赤い無数の線が勇斗の手首を埋め尽くしていた。
瘡蓋になっている線、治る途中で弄ってしまって残ったであろう茶色い跡、まだ真新しい生々しい傷は紅かった。
そしてその線たちの下には赤い斑点も並んでいる。
つい数日前まで俺も悩まされていたせいで、それは薬の過剰摂取によるものだと一瞬でわかった。
「くすり。いっぱい飲んだらさあ、なんか頭ふわふわして、よく寝れて」
「それ寝れてんじゃなくて」
「仁人もアレのせいで朝も昼も夜も、ずっとずーーっと不安で不安で仕方なかったんだよね。でもこうやって、自分を傷付ければ生きてる実感が出来る。寝れないのだって、薬に頼ればへっちゃらだし」
「でももう俺は」
「あとさあ、アレもしたんだよ、俺」
「アレ、?」
嫌だ、聞きたくない。やめて、勇斗の口からそんなこと絶対に聞きたくない。
そう願っても俺が予想していたような内容が、勇斗の声で、言葉で、耳に入ってきてしまう。
「痛いだけで全っ然気持ちよくないのな。でもよかったわ、ある程度面がよけりゃこんな大男でも抱きたいって言うやつはゴロゴロ居てさ」
「なぁもうやめ…」
「でもやっぱ満たされなくて、仁人もそうなのかなって。なら、俺らで補い合えばいいじゃん?って」
「は?」
肩をぐ、と強く押される。受け身も取れず、床に倒れると思った…が、実際に背に触れたのはソファの座面。
いつの間にかリビングまで移動させられていたみたいだ。
上体を起こそうとすると上に覆い被さってきて、身動きが取れなくなる
「好きだよ仁人」
「…いや何、今日ガチで変だよお前」
「俺さ、今なら誰よりも仁人のこと理解できてる」
「あ?話聞いてる?」
「仁人には俺しか居ないんだよ」
笑ったときみたいに目が細くなって、そこには俺しか映ってなくて。別にまだ真夜中って訳じゃないのに、その瞳には光なんて少しもなかった。
何もかもを飲み込んでしまいそうなその暗闇が俺の眼前まで来て、ゆっくりと唇同士が触れた。
キスされた、って。気付くまでに時間がかかってしまったせいで、俺の逃げ道はどんどん減っていっていた。
「お”…っ前、勇斗!!」
「なぁ、俺のもんになって?」
「は…、?」
首もとにチクリと針で刺されたような痛みがあって、直後に自分の身体の異変に気付く。
やばい、なんだこれ。どこも動かない、段々瞼も落ちてきて、勇斗が何してんのかもわからな
脱力して動かなくなった仁人を大事に大事に抱き起こして、ぎゅうっと抱き締める。
俺の…俺だけの仁人。他の人にはもう指1本触れさせたくない、あそこまで仁人を追い詰めたやつらのことは絶対に許さない。
陶器みたいな白い頬を撫でて、葡萄色の唇にそっとキスを落とす。
「2人一緒ならさ、そこが正解でいいじゃん?ね、仁人。」
腕の中で温くなっていく体温を抱きかかえて、仁人の家を出る。
そのまま俺が乗ってきた車の後部座席に寝かせて、俺はエンジンをかけた。
太ちゃんの携帯に見覚えのない電話番号からの電話がかかってきた。
「え”っ、…は、ぃ…はい、わ…かりました、伝えておきます」
安堵したような、憔悴しきったような、引きつった顔で俺と舜太の方へ顔を向ける。
「勇斗と仁人…発見、されたんやって」
コメント
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うわ……読み終わってしばらく言葉が出なかった。重い、けど目が離せなかった。 最初は「ただのアイドルの秘密暴露もの」かと思ったけど、違ったね。仁人が自分を「ガラクタ」って呼ぶところ、胸が痛かった。でもマネージャーの説明で「全部自分の努力で掴んだ仕事」って分かるところが、この物語の救いというか、皮肉というか……。 そして勇斗の変貌が怖い。最後の「2人一緒ならそれが正解でいいじゃん?」って台詞、完全に共依存の闇に落ちてる。アイドルグループのリーダーと、その一番の理解者だったはずのメンバーが、お互いを壊し合う方向に行ってしまったのが切なすぎる。 続き……気になる。