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翌日。
すちは戻った。
医務室よりずっと冷たくて、静かな部屋。
けれど、扉が開いた瞬間。
🦈「すちさーん!」
元気な声が飛んできて、すちは思わず笑った。
🦈「おかえりなさい!」
🍵「ただいま?」
🦈「なんで疑問形なんですか」
こさめが頬を膨らませる。
その顔がおかしくて、すちはくすくす笑った。
独房に戻ることなんて、本来なら“おかえり”と言われる場所じゃない。
でも、こさめは本気でそう思っている顔をしていた。
🦈「体調ほんとに大丈夫ですか?」
🍵「大丈夫だよ」
🦈「無理してない?」
🍵「してないしてない」
🦈「ちゃんと寝ました?」
🍵「尋問かな?」
🦈「大事な確認です!」
真剣な顔。
すちは困ったように肩をすくめた。
こんな風に誰かに心配されるのは、いつぶりだろう。
昔は——。
そこまで考えて、すちは思考を止める。
思い出したくない。
思い出す資格もない。
すると、こさめがじっとこちらを見ていた。
🦈「……すちさん」
🍵「ん?」
🦈「また遠く行った顔してる」
どきり、とした。
すちは目を瞬かせる。
こさめは時々、怖いくらい人の変化に気づく。
🍵「そんな顔してた?」
🦈「してた」
むぅ、と唇を尖らせる。
🦈「こさめの前で考え事禁止です」
🍵「横暴だなぁ」
🦈「だって、そういう時絶対苦しいこと考えてるじゃないですか」
言い返せなかった。
すちは静かに目を伏せる。
その沈黙だけで、答えになってしまったらしい。
こさめは鉄格子に額を軽く当てる。
🦈「……すちさんって、自分のこと嫌いですよね」
その言葉に、空気が止まる。
すちは少しだけ目を見開いた。
🍵「なんでそう思うの」
🦈「だって」
こさめは俯いたまま呟く。
🦈「すぐ自分悪く言うし、諦めたみたいな顔するし」
胸が痛かった。
この人は優しい。
でもその優しさを、自分には向けない。
まるで、自分だけは幸せになっちゃいけないって思ってるみたいに。
すると、すちはふっと笑った。
🍵「嫌い、かぁ」
小さく繰り返す。
🍵「……そうかもね」
あっさり認められて、こさめは苦しくなる。
🦈「なんで……」
🍵「人を傷つけたから」
🍵「それも、すごく大事だった子を」
こさめの喉が詰まる。
また、その話。
でも今日は、前より少しだけ踏み込める気がした。
🦈「……事故、とかじゃないんですか」
すちは答えなかった。
ただ、ゆっくり目を閉じる。
その反応だけで十分だった。
こさめの指先が冷える。
怖い。
知るのが怖い。
でも。
🦈「それでも」
声が震える。
🦈「こさめ、すちさんのこと怖いだけにはなれないです」
その瞬間。
すちが目を開けた。
静かな瞳が揺れる。
🍵「なんで」
🍵「普通、離れるでしょ」
🦈「離れません」
即答だった。
こさめ自身、驚くくらい迷いがなかった。
🦈「だって、こさめが離れたら」
鉄格子をぎゅっと握る。
🦈「すちさん、本当にひとりになっちゃう」
その一言に。
すちの呼吸が、わずかに止まった。
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