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中は静かだった。
時計の音すら聞こえない。
ただ、すちの呼吸だけが微かに響いている。
『本当にひとりになっちゃう』
こさめの言葉が、胸の奥に刺さったまま抜けない。
すちはゆっくり目を伏せた。
🍵「……ひとりでいるの、慣れてるよ」
小さな声。
でもその言葉は、慣れてるというより、自分に言い聞かせているみたいだった。
こさめは唇を噛む。
🦈「慣れてても、平気とは違うじゃないですか」
🍵「……」
🦈「こさめ、そういうの分かります」
まっすぐな声だった。
すちは返事ができない。
こさめは鉄格子越しに、そっと手を伸ばした。
触れられる距離じゃない。
でも、少しでも近づきたかった。
🦈「すちさん」
名前を呼ばれる。
優しく。
大事なものみたいに。
それだけで、胸の奥がぐちゃぐちゃになる。
🍵「……なんで」
声が零れる。
🍵「なんでそんなに、俺のこと見てくれるの」
こさめは少し困ったように笑った。
🦈「だって、放っとけないから」
🍵「それ、前も聞いた」
🦈「じゃあ」
こさめは少し考えて、小さく息を吸う。
🦈「好きだから、かも」
空気が止まった。
言った本人も固まる。
🍵「……え」
🦈「……え?」
数秒遅れて、自分の発言を理解した。
顔が一気に熱くなる。
🦈「ち、違、あの、えっと……!!」
慌てて両手をぶんぶん振る。
でももう遅い。
すちは完全に動きを止めていた。
静かな瞳が、ただこさめを見つめている。
こさめは半泣きになった。
🦈「い、今のなしです!!」
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🍵「……なしにできると思う?」
🦈「うぅ……」
消えたい。
穴があったら入りたい。
でも、すちは笑わなかった。
冗談にも流さなかった。
代わりに、苦しそうに目を伏せる。
🍵「……だめだよ」
🍵「こさめくん」
🦈「……」
🍵「俺なんか好きになっちゃ」
その言葉に、こさめの胸が痛む。
またそれだ。
“俺なんか”。
“死刑囚だから”。
自分を遠ざける言葉。
こさめはぎゅっと鉄格子を掴む。
🦈「なんでそんな言い方するんですか」
🍵「事実だから」
🦈「事実でも嫌です」
すちは少し目を見開いた。
こさめの声は震えていた。
🦈「こさめは、すちさんのこと見て好きになったのに」
涙が滲む。
🦈「勝手に自分で、自分の価値決めないでよ……」
その瞬間。
すちの表情が崩れた。
苦しそうに眉を寄せる。
まるで泣くのを堪えているみたいに。
🍵「……似てる」
ぽつりと零れた声。
🍵「ほんと、あの子に」
こさめは息を止める。
すちは静かに笑った。
でも、その笑顔はひどく弱かった。
🍵「昔も、同じこと言われたんだ」
遠くを見る目。
懐かしむような、壊れそうな目。
🍵「“勝手に諦めないで”って」
その瞬間。
すちは思った。
——その“大事だった子”は、もしかして。