眩しさで目を覚ます。
厚いカーテンの隙間から漏れる朝の光が、視界をゆっくり染めていく。
ベッドの上、 体温がまだ、シーツに残っている。
「……ん」
重なるように、隣から低い寝息。
振り返れば、そこにいたのは――二宮和也。
昨夜、ふたりの距離が消えた夜のあと。
どちらが仕掛けたのか、もうどうでもよくなっていた。
(……やっぱ、ズルい人だ)
目を閉じたままの顔は、どこか無防備で。
あんなに余裕そうに揺さぶってきたくせに、今はただ静かで、穏やかで。
そのままそっと、指先で前髪をかき分ける。
少し熱っぽかった肌が、夜のことを思い出させる。
「……おはよう、元貴」
目を開けるよりも早く、声が届く。
「起きてたんですか」
「うん。ていうか、ずっと起きてた。
なんか……寝るの、もったいなくて」
「……ふふ、何言ってるんですか」
「元貴の寝顔、ちゃんと見ておきたくて」
くすぐったくなるような言葉。
でも、それが嫌じゃない。
「ねえ、元貴」
「……はい」
「昨日 ……お前があんな声、出すなんて思わなかった」
言いながら、唇の端だけで笑う。
「っ……あれは、二宮さんが意地悪だったからです」
「そっか。じゃあ、今日も意地悪していい?」
「……今日も?」
「だって、まだチェックアウトまで時間あるし。 もっと元貴の声、聴きたいなって」
その瞬間。
言葉じゃなくて、心臓が跳ねた。
“駆け引き”のはずだったのに。
今、この空間にはただ――
“好き”になりかけてる気持ちが、確かに存在していた。
「……ほんと、ズルいですよ、二宮さん」
「ありがとう。 元貴も大概、可愛いけどね」
軽く唇を重ねて、また笑う。
この朝が、
“ただの一夜”にならないように――
ふたりとも、それを望んでいるのかもしれなかった。
END
コメント
4件
ほんと最後まで読むの楽しすぎました…!
最終話までお疲れ様でした! とても素敵な作品で、最後まで楽しくどきどきはらはら?しながら見させで頂きました、!! 初めは結構ばちばちな雰囲気だったのに 最終話は甘々で相思相愛な雰囲気につい頬を緩めながら見てしまいました、笑 主様の書く作品本当に素敵な物で、尊敬します。 コメント失礼しました!