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Luna Emma
115
それから彼女は精神障害の治療を受け、その間も自傷行為は日常的なもので手足や首元、更には背中を掻き毟ったり、自ら髪を引きちぎったりと…とにかく荒れた情緒は未だ回復の見込みは見られず……。
「お姉ちゃん……大丈夫……?」
「………………………………」
会話は減り、彼女の精神状態は不安定なまま。彼女へのカウンセリングを行おうにも時より狂暴的になる事があり、それもままならない。
「………………………………」
そうしてラヴィシアはそっとヴェルリナの手を握り、孤独ではないのだと彼女に伝える。その後も精神安定剤を投与させ、彼女の精神状態を抑制を図る。
「この治療でヴェルリナに笑顔が戻ると良いんだけど……精神的ストレスが相当かかってたみたいね 」
「うん…………それに結局捕まってた間何があったのかっていう話も聞けてないから分からないね……話が出来るような状態でもないし……」
「ええ」
精神療法開始から数日が経ち、少しずつ回復の兆しが表れる事を期待するも、彼女の様子は荒れ果てたまま其処から良くなる事はなかった。
「お姉ちゃん、大丈夫だよ」
「あっ…………ああっ……あっ……」
突然と生じた人間不信の影響で、コミュケーションはおろか、母親や妹などの身内に対しても酷く怯え、自傷を続けているヴェルリナ。彼女の表情に明るい笑顔が灯るのはまだ少し先になりそうだ。
「ご家族の皆さん、本当にヴェルリナちゃんの事を大切に思ってるのね、ずっと積極的に声かけをしてる様子を見ていると皆さんの絆がよく伺えるわ」
「ええ、勿論。家族ですしヴェルリナもラヴィシアも私達二人にとって大切でかけがえのない最愛の愛娘ですから」
「とても頼もしいです、一般的に認知されてる精神病患者と違い悪魔憑きによる精神病患者への周囲の理解や認知というのはとても障壁が高く、それは霊感や特異的な感覚を持つ者にしか理解できない……それ程こういった事象は難題なの」
「これまで私達に手を差し伸べて下さってきた方々もそう口を揃えて言ってた、だからこそ寄り添う心や家族の絆は素晴らしい事だと」
そう、悪魔憑きの当事者の理解は未だに発展せず、この一家も悪魔事件に数十年間長い事悩まされ続け……そんな家族を他所にその苦難を知らない他者は蔑み、馬鹿にする。そんな事ばかりだ。
「ヴェルリナ…大丈夫だからね、私達は絶対に何があっても貴女の味方よ」
「嫌…………嫌……!!」
ヴェルリナは突然大声で叫び、頭を抱えて蹲った。
「ヴェルリナ…………」
「お姉ちゃんは一人じゃないよ、お姉ちゃんにはママもパパも……私もお姉ちゃんの事大好きだよ」
ラヴィシアはそう言い、ヴェルリナに抱きついた。
「うう…………うう………」
それからも精神治療は続き、定期的に彼女の精神状態を確認する。治療を継続しているうちに状態は少しずつではあるが良くなっていき、人間不信になっていたのも改善してきている。
そうして一先ずは地道な治療療法を行ってきたお陰で、安定し平常な状態で話せるまでの状態には戻り、ヴェルリナとのコミュケーションも徐々に良い方へと回復の兆候を見せた。
「お姉ちゃん、ちょっとずつ……元気になってきてる……本当に良かったよ…!」
「ええ、釈放直後の様子はかなり別人のようになってたけど、いつものヴェルリナの面影が戻ってきて、ホッとしたわ」
多少の自傷行動の後遺症はまだ色濃く残っているが、他者への異常な恐怖心を見せる事はなくなった。
「ご家族の皆さんの力添えもあってこの様子を見てる限り我々が想定していたよりも早く治療は終えられそうです」
「本当ですか……!?、良かった……」
「普通の精神病疾患と悪魔憑きによる精神障害は大きく異なる……けど今回こんなにも急速に回復傾向に向かっている要因として最もと言える理由を告げるとするなら、娘さんを大切に思うご家族の温かい寄り添いが彼女の支えに繋がった結果でしょう」
とシスターらから称賛され、微笑んだルナリス達。
そして彼女らはヴェルリナを見つめた。
この調子でいくと後数週間もあれば完全に良好な状態に戻れそうですね」
「あと少しだってお姉ちゃん!頑張ろう!!大丈夫だよ。私もパパもママも傍についてるから」
「ありがとう……ラヴィシア、ごめんなさい……ずっと迷惑かけて心配ばかりかけて……、ラヴィシア、まだこんなに幼いのに」
と申し訳なさそうに彼女は俯き、そっと妹の頭を撫でハグをした。
「お姉ちゃん、そんな事ないよ。それにお姉ちゃんの方こそ今までずっと苦しんできて本当に辛かったね……」
ラヴィシアはそう言って抱きつき返した。それから更に月日は流れ……彼女の精神障害は完治し、後遺症の症状も治り、ようやく元通りの日常を送れる日が訪れた。
「お姉ちゃん、ねえねえ遊んで!」
「うん、じゃあ遊ぼうか」
「あの子達、本当に仲良しね、姉妹共に元気いっぱいで明るい子に育ってくれてる……何よりの幸せね」
「ああ、本当に嬉しいね」
悪魔事件は全て終息し、他愛ない平穏な日常生活が戻ってきた。そして今回の悪魔事件の体験をした事で、その恐怖や恐ろしさを知らない人々へ悪魔が与える恐怖や悪魔憑きという事象、それらの事をもっと知ってもらいたい、そう思ったルナリスは其処で新たなる決心をした。
それは……………体験談を本に綴り書き、身近に感じて貰いたいという願いだ。
これまでの事を自伝として書き起こし、そして最も近くで苦しんできたヴェルリナにも協力をお願いし、本を書く事に決めた。
「それにしても思い切った発想だね、でも多くの人々に知って貰うにはこういったやり方が最適かもな」
「ええ、講演会も前数回開いたけど……それでも理解が深まってるとは思えない。絵それならもっと別の方法で何か悪魔憑きや悪魔の怖さを広められる方法がないかずっと考えてたの、それにこの国では悪魔事件って其処まで珍しい話でもない、だからこそもっと沢山の人々の理解を深め、関心を持って欲しい、そう思ったのよ」
「きっと上手くいくよ」
執筆をしていく事数年、遂に書き終えた彼女……正式に 出版が決定し、その数日後……彼女が書いた本は瞬く間に狙い通り、多くの人が手に取っていた。
そうして、この日一家は今回の一連の出来事の解決までずっと親身になって寄り添ってくれた祓魔師らに感謝の気持ちを込め、お礼を言いに行こうと久方ぶりに会いに行く事に。
「あら、久方振りね」
「お久しぶりです、今日は今回の一連の事件に関してその御礼をしたくて」
「態々ありがとう、それじゃあ入って」
久方振りに祓魔師らと再会し、まずは近況報告をした。
「本を出したとニュースで知った時は正直驚いたわ、けどある意味今回の悪魔事件の事により関心を寄せる良いきっかけになるんじゃない?」
「ええ、悪魔事件という非現実的な恐怖、悪魔憑きに苦しめられてきた娘の事も含め、少しでも良い、少しでも沢山の人に知って貰うべき事だと、それで決心したんです」
そう話す母親らを他所に愛娘二人は遊んでいて、楽しそうに笑う声が聞こえてくる。
「ふふっ、はははっ!」
「ヴェルリナちゃん達、元気になってとても微笑ましいわ、一家の皆さんの日々に平穏が戻ってホッとしてる」
「これも祓魔師さん達を始めとした悪魔研究家や多くの方々の協力があっての平穏、改めてお礼を言わせて欲しい、本当にありがとう」
「依頼を受けた立場として、立ち向かうと決めた以上我々に与えられた選択は最後まで寄り添い、解決まで導く、ただそれを守り抜いただけよ」
平穏な日常を取り戻し、ヴェルリナの調子も元通りになり、今ではすっかり妹に懐かれて嬉しそうに微笑む表情が多くなった。
「悪魔事件が無事全て終息して良かったわ、そういえば家は新しい家に引越したの?」
「ええ、相談するタイミングが中々作れなくて大変だったけど、何とか……」
そうして、祓魔師らと暫く談笑し久方振りの再会に浸った後、この場所を後にした。
こうして平穏な日常生活を取り戻した一家はこれからもずっと深い絆と愛で結ばれ、他愛ない平凡な日々を繰り返す事だろう。
〜あとがき〜
こんにちは、血怖闇死暗よ。今作はどうだった?今作は初めてのオリジナル洋風ホラー作品、ホラー作品という事もあって恐怖を煽る言葉の描写表現を要所に散りばめて洋ホラーならではの恐怖の世界観を作り上げてきたけど、恐怖の感情湧いてくれた?。
もし少しでも怖がらせる事が出来たのなら、作者冥利に尽きるわ。
さて、実はこの作品はこれで終わり……じゃないの。
それは何でって?続編を書くからよ。正直全く違うホラージャンル作品を書くことも当初は考えたりしたけど、この作品の参考元がシリーズものでそれにあやかって悪魔憑きホラーシリーズとして続編を書いていく事にしたの。
つまり、次回も悪魔憑きホラー。登場人物となる家族に関しても新しい家族が登場予定よ。
次も悪魔の恐怖に包まれたホラー作品にするつもりだから覚悟しておく事ね、新作の執筆開始予定は年内にはスタートするつもり。
ま、あとがきついでの次作報告は此処までかしら、じゃ……また。
コメント
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最終話、読み終わりました。タイトルからは想像できないほど、温かくて優しいラストでしたね。ヴェルリナが少しずつ笑顔を取り戻していく過程に、じんと来ました。特に、ラヴィシアが「お姉ちゃんは一人じゃないよ」と抱きつく場面……あのシーンだけで、この家族の絆が全部伝わってくるようでした。精神的な傷を扱う作品って、とかく暗くなりがちですけど、ここまで丁寧に「回復」を描いてくれると、逆に恐怖の重みが深く胸に残ります。本を出版するという母親の決意も、物語の締めくくりにふさわしくて。最後まで読ませる力がある作品でした。お疲れさまです。