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このお話は完全に主の妄想、願望によって制作されたお話です。ご本人様への迷惑行為等、おやめ下さい。パクリ晒しもだよ?
おれの名前はおんりー。おれは虐められている。理由は目の色。れっきとした日本人なのに、エメラルド色という奇妙でしかない色をしていた。化け物だ、鬼の子だと言われ、最近は自殺さえ考えている。
ある日の中休み、限界だと言って学校の屋上に駆け上がった。アイツらは追ってこない。これなら静かに死ねる────と思ったが、屋上のドアを開けると、フェンスの方で青年とも言えそうな背の高い少年が寝ていた。
誰だろう。自分の旺盛な好奇心が揺さぶられる。近くに行って顔をのぞき込むと、綺麗な顔をしていた。
紫紺色の髪に、なぜだかサングラスをしている。背は自分よりもはるかに高くて、高校生くらいに見えた。ここは中学校なのに。しばらく彼を見つめていると、「ん…ぁー」と伸びて起き上がった。そして僕に気づくやいなや叫んで飛び上がった。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁっっ!!?」
「うわぁっ!?」
こちらもびっくりして飛び退く。その当たり前の仕草に彼は目を見開いた。
「え…見えるの?」
「見えるのって…当たり前じゃない?」
そう質問に返すと、彼は一瞬戸惑ったがすぐに笑顔になった。
「俺の名前はぼんじゅうる!よろしく!」
明るく自己紹介をしてくれた。目の色が紫で、宝石みたい。それが最初の印象であった。
「自分はおんりーです。よろしく」
握手しようと思って手を差し出すと、ぼんじゅうるさんは申し訳なさそうな顔をした。
「ごめん、俺、人と触れ合うことって慣れてなくて…」
そういう病気でもあるのかな、後で調べてみよう。と思いながら頷いて了解の意を示す。
「……あなたは、自分の目の色、怖がらないんですね」
そう。この人、自分を侮蔑の目で見ることもなければ、殴ってくることも無く、暴言を吐いたりすることもない。ごくごく普通に接してくれていた。
「え?あー、綺麗な色だなぁとは思ったけど…」
「え?」
こんな、こんな奇妙でしかない色をしている目なのに、ぼんじゅうるさんはそれを綺麗だと言うのだ。もしかしたらこれ夢なのではと思いかけた。
「逆に聞いてもいい?おんりーちゃんは、なんで俺の目の色も怖がらないの?」
謎にちゃん付けされているのは置いといて、そういえばこの人も紫色の瞳をしていた。
「いや…綺麗だと思いました。宝石みたいで」
嘘にしか聞こえない気がするが、ぼんじゅうるさんは安心したような顔をした。
「宝石?自分はそんな大層なものじゃないよ」
そう言っている間にも、日光を受けて輝くぼんじゅうるさんの瞳は、とても綺麗で、アメジストのように見えた。
「いえ、ぼんじゅうるさんの瞳は、本当に綺麗です」
「ぼんさんでいいよ」
勝手に自分のあだ名を決めているくらい自由なのも嫌ではなくて、それも魅力に見えた。
「────あっ、ほら、チャイム鳴ったよ?行かなくていいの?」
しばらく話していると、ぼんさんが言った。話に夢中で気づかなかったけれど、言われて気づいた。
「はい、戻ります…ってぼんさんは戻らないんですか?」
「まあ…ね?」
なにか事情があるのだと察し、そのまま地獄の教室に戻った。ガヤガヤとまだ騒ぐ奴らの声の中に、自分を蔑む声は無いと思いたい。
「おーんりっ!」
「わっ」
この地獄にも、天使がいた。あ、そういう恋愛的な意味じゃなくて、心の拠り所みたいな。
「どしたん?またやられた?」
関西弁混じりの綺麗な声を発する彼はおらふくん。自分の唯一の救い。親友だ。
「ううん。逆に嬉しいことがあった」
「そう?良かったやん。何があったん?」
教えて教えて、とキラキラした子供っぽい目を向けられて、誰が拒否れるものか。おれはおらふくんに今日の中休みのことを手短に話した。
「もうひとり友達ができたんやね!良かったな!」
そう喜んでくれているおらふくんに、「うん!」と明るく返した。
ぼんさんはいつも、屋上にいた。そこに住んでるんじゃないかと思うくらい。授業を少しサボって屋上に行っても、放課後の遅い時間に行っても。いつも居た。
ぼんさんに会ってから、自殺願望は無くなっていた。むしろ、友達に会うために生き続けようと思った。
会いに行き続けて三ヶ月。屋上で信じられないものを見てしまった。
「ぼん、さん?なんで…」
透けてるんですか。そう言うと、自分の前に立つぼんさんは悲しそうな、でも嬉しそうな顔をした。
「触ってみ?」
差し出されたその手を握ろうとして出した自分の手は、するっとぼんさんをすり抜けた。
自分と同じ温もりがあるだろうと思っていたその手は、そこに見えているだけで無かった。
「え…?」
「俺、虐められてて。飛び降りろって言われて飛び降りたんだよね」
辛かったし、と言いながら、ぼんさんは少しずつ透けていく。つまり───
「俺はここの地縛霊みたいなもの。友達がいなかったから欲しかった。だからここに思念が残って、幽霊になった。」
そう自分で言いきって、にこりと笑いかけてくる。
「え、?そんな、まさか、」
馬鹿な。と言いそうになって止める。だって、目の前に透けたぼんさんがいるのは事実だから。
「おんりーちゃんっていう友達が出来て、幸せだった。俺の心も救われた。思念も消えたから、寿命みたいなものかな」
瞬間、「ありがとう」と口だけ動かして、すっと消えた。絶望のようなもので目の前が真っ暗になった。
悲しい。辛い。そんな気持ちに沈んで、泣いた。
しばらくへたりこんで泣いていると、ドタドタドタ、ガタン。と音を立てて屋上の扉が開かれた。
白髪に青みを帯びた瞳。おらふくんだ。
「おんりー!!どうしたん?!またやられたんか?!!」
「…………ううん、違う。」
「じゃあ、なんで泣いとるんや…?」
「友達が…消えちゃった。」
そう言うので精一杯だった。自分でも受け入れたくなかった。
「……そうなんやな。悲しいな…、あれ?花?」
花、という聞きなれない言葉を聞いて、顔を上げた。おらふくんが拾ったのか、おらふくんの手には二輪の花があった。
「こっちはワスレナグサ。こっちは…なんだろう。調べてみるね」
ワスレナグサが何故ここに。さっきまでなかったはずだし、そもそも屋上に花があること自体おかしい。
そのままおらふくんが貸してくれた度のキツいメガネをかけて目を隠しながら図書室に行き、もう一輪の花がなんなのか調べることにした。
「うーん、うぅ〜ん…出てこない…」
「見た目だけを頼りに探してるからね…」
早くも悲鳴をあげるおらふくんをなんとか励ましながら、植物図鑑のページをめくる。
その花は、小さい花がひとつの茎に沢山付いていて、儚く消えてしまいそうな雰囲気を発していた。白くて雪のようだ。
「うぅ、わからん…あっ!これちゃう?!」
おらふくんが興奮気味にページを見せてくる。見ると、[カスミソウ]という名前の花のことが書いてあった。
「ナデシコ科、カスミソウ属。だって。ようわからん……」
自分もよく分からなくて、おらふくんの見せてきたページを模索する。すると、<花言葉>の欄が出てきた。
「カスミソウの花言葉、『純潔』、『幸福』。『永遠の愛』……永遠の愛?」
誰が、誰に向かって何を伝えようとしていたのか。花言葉はなんだかハッピーな感じのものだ。
この調子でとりあえず、ワスレナグサも調べる。
「花言葉は、『真実の愛』、『私を忘れないで』……?」
私を忘れないで。自分はしばらく逡巡してからなんとも馬鹿らしい妄想をした。もしも、つまりifだ。根拠なんてない。
だけど、もしも。もしもだ。ぼんさんが俺に、そういう想いを抱いてくれていたとしたら。
そんなことを考えて、ぶるぶると頭を振った。いけない、こんなことを考えてしまうとは。
最近はなにもなさすぎて幸せボケしていた。また虐められたら。どん底に突き落とされるのが怖い。
「おんりー、もしかしてだけど…おんりーの新しい友達って、人じゃ、なかったんちゃう?」
おらふくんの声で我に返り、そして驚いた。考察力というのだろうか。すごすぎる。
そんな自分の表情で察したのか、おらふくんはにこりと笑って言った。
「おんりーの友達は、自分を忘れないでって、おんりーに言いたかったんじゃないかな。それがワスレナグサ。
もう1つの、カスミソウ。こっちは、静かにその人がおんりーに恋をしてたんじゃないかな。」
そう言われた瞬間、色んな想いが込み上げてきて、走って図書室を飛び出した。
屋上に駆け上がり、ぼんさんがいつも寝そべっていた場所に走る。いつの間にか涙がぼろぼろと零れ落ちていた。
着いた瞬間、空に向かって叫んだ。
「俺!!おれっ、ずっとぉっ、、ぼんさんのこと!!忘れない!!」
泣きながら叫んだ。忘れない。この夏の出来事は。