前回の話ちょっと変えたのでそっちから見た方が良いかもです
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帰りたくない。
玄関の前で入るか入らないか鍵を持ちながら悩んでいた。
昨日のことがあってから少し気まずい。樹も居ずらいだろうな…家に帰ったらあの空気が流れると思うと嫌になってきた。
「おかえり、お疲れ」
「…ただいま」
頭の上にはてなが浮かんだ。
出迎えに来たことだけではなく、エプロンを着てることにだ。料理するわけてもないのにどうしてだろう。
「あれ、洗濯は?」
「干して畳んどいた」
「部屋も綺麗になってる…?」
「暇だったし」
私にはかなり大きな衝撃だった。家事やってくれるなんて珍しいこともあるもんだ。いつもは面倒くさがるのに。
「やってくれたの?ありがとう!」
手を洗ってリビングへ上がると美味しそうな匂いがしてきた。
まさかと思ってキッチンを見るとフライパンを握る樹の姿。さっきから予想外すぎて。
「何作ってるの?」
「あ、」
「あー…」
フライパンからお皿に卵を移すのに失敗して破れてしまった。
「オムライス?」
「失敗しちゃった」
樹が困ったように眉を下げて笑った。
「最初はみんな失敗するもんだよ。味が美味しければオッケー!」
「自分で食べるならいいけど、」
菜箸で破れた穴を卵で塞ぎ始めた。樹の言葉に私はまた困惑する。
「樹が食べるんじゃないの?」
「違う」
「誰かのために料理するなんてこと樹にもあるんだね〜」
だらだらしてばっかだったのに、成長!親目線になって感動してしまった。
「お前のだよ」
「え」
「オムライス好きって言ってたじゃん」
「お、覚えてたの…?」
私のために頑張って作ってくれた?前に言ってたのも覚えてくれてたんだ。
胸の内がじんわり熱くなる。
「じゅり〜!ありがとう大好き!!」
ふざけて樹の肩を激しく揺さぶった。
「ちょっとじゃま」
「あっ!ケチャップやるの?なんか書いて!」
「普通にかけるからいい」
「書いてよ!オムライスといえば、定番でしょ」
樹がわざとらしくため息をついて、しゃがんで書き出した。数十秒ほどたって、
「かんせーい」
立ち上がって棚からスプーンを取り出す。私はまだ出来上がったオムライスを眺めていた。
「私”大好き♡”って書いてとは言ってないけど?なーんだ樹ほんとはそんなふうに思って」
「うっせえ」
「あだだだ、痛い!」
ーー
「いただきます」
少し不格好だけどとても美味しい。なにより私のために作ってくれたのが嬉しかった。
「美味しい!」
食べ続ける私を樹は無言で見つめてくる。
「掃除とかも色々やってくれてありがとう。オムライスすんごい美味しい」
「うん」
2人で目を合わせて笑った。
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