祈りの鐘が鳴る度 、琥珀の王子は胸の中で同じ言葉を繰り返していた 。
____ どうか、今日が最後の戦争になりますように 。
白い聖堂は朝の光に満ち、壁画の神々は静かに微笑んでいる 。
その中央に立つ琥珀色の瞳を持った青年は、魔法・信仰国家の王子として、祈祷衣に身を包んでいた 。
「王子陛下」
老司祭の声に、琥珀の王子はゆっくりと顔を上げる 。
その表情は穏やかで、民の前で見せる 光の王子 そのものだった 。
「本当に…、行かれるのですね 。敵国の城へ」
琥珀の王子は一瞬だけ視線を伏せ、それから少し辛そうな笑顔をして見せた 。
「…はい 。俺が行くべきなんです 。」
「俺じゃなきゃ、停戦交渉は成立しない 。」
それは事実だった 。
癒しと守護の魔法を司るこの国において、王子はたんなる血筋ではない 。
神に最も近い存在として、民の信仰そのものだった 。
だからこそ 、
彼が前線へいくことは、国が平和を望んでいる証明になるのだ 。
「怖くは …、ありませんか 。」
司祭の問いに、琥珀の王子は答えなかった 。
代わりに、胸元に手を重ねる 。
そこには小さな護符が下がっていた 。幼い頃から持ち続けていたものだった 。
怖くないはずがない 。
敵国は軍事大国だ 。
冷酷無比な第1王子が戦場を支配し、数多くの命を奪ってきたと聞いていた 。
____ 討つべき存在 。
そう、教えられてきた相手 。
けれど琥珀の王子は、剣ではなく言葉を選んだ 。
魔法ではなく、自分の命を賭ける道を 。
「もし … 、」
ふと、独り言のように呟く 。
「もし俺の身一つで、この醜い戦争が終わるのなら 。」
「それは、間違った選択ではありません 。」
そう、迷いの無い瞳で言い切った 。
司祭は何も言えなくなり、ただ深く頭を下げた 。
その日の正午 ____
琥珀の王子は少数の護衛と共に、国境を越えた 。
遠くに見えるのは、鉄と煙に覆われた敵国の城 。
祈りとは無縁の、戦いの為だけに築かれた要塞だった 。
____ あの城に、彼が居る 。
まだ顔も知らない、敵国の王子 。
____ この出会いが、
自分の命を奪う相手になることを 。
この1歩が、もう戻れない場所へ踏み込む合図だったということを 。
琥珀の王子はまだ、知らない 。
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ak ( 琥珀の王子 )
魔法・信仰国家の王子
自分が死ねば戦争が終わると思っている
pr( 翡翠の王子 )
軍事大国の王子
冷酷で数多くの命を奪ってきた人物として知られている
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新連載です 。
書き方変えました!
よろしくお願いします!






