テラーノベル
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ネイルをした次の日。オシャレをする理由を訊かれて友達に会うからだと答えた…けれど。
なんとなく…なんとなくだけど、美和子の話から、私が男の人と会うと見抜かれているような気がした。
___うまく隠せてないのかな?
家族にバレそうになったわけじゃないけど、やっぱりこんなことは誰にもバレたくない。倫理観や道徳を持ち出されて説教とか、されたくない。今の私から翔馬の存在を取ってしまったら、毎日が死んだようになってしまう。
「美和子さんてさぁ、男友達と呑みに行ったりするんだね、いいなあ、私もそんなふうに同性とか異性関係なく、楽しく付き合える友達が欲しいなぁ。駒井っちもそう思わない?」
美和子はさっさと仕事に戻って行った。その後ろ姿を見ながら、由香理がうらやましそうに言う。私から見たら美和子より由香理の方がずっとうらやましいのに。若さとか容貌とか、どうやれば取り戻せるのだろう?なんて真剣に考えてしまう。
「でも、でもね、男の人と呑みに行くのって、なんか意識したりしないのかな?」
私にはそこがわからなかった。あの話し方だと2人きりで呑みに行ってるようだった。旦那さんには、どう説明しているのだろう?隠しているとしたら、それはもう不倫なんじゃないかと思う。
「どうなんだろ?あとで詳しく訊いてみようか?」
「いやっ、そんなプライベートなことを訊くのは…」
「いいんじゃない?美和子さんは自分から話したし。隠してるわけでもないみたいだよ。美和子さぁーん」
由香理は作業台車を押して、美和子を追いかけて行った。
ふと、時計を見た。きっと明日の今頃は翔馬と会っている。そう想像しただけで浮き足立つのを自覚する。そして今朝の翔馬からのLINEを、思い出す。
《ミハル…会いたい、早く会って抱きしめたい。どうかミハルも俺と同じ気持ちでありますように》
〈私も早く会いたい!翔馬に会って強く抱かれたい〉
朝っぱらからこんなやり取りをしているなんて、由香理や美和子が知ったらどう思うだろう?きっと理解してもらえないだろうな。こんなにお互いがお互いを求め合ってるなんて、あの人たちにはわからない。そしてそのことに、私はいくらかの優越感さえおぼえた。
昼休みにも甘ったるいやり取りをして、仕事を終えて明日の晩御飯の買い物も済ませてから、家に帰ってLINEをする。食事の支度や掃除や洗濯をいつも通り…よりは完璧に明日の分も済ませるつもりでやった。
お風呂に入ってムダ毛の処理もパックもした。明日の休みは家族には話していない、普段通り出勤するふりをする。
そうやって、まるでパラレルワールドを作るようにミハルとしての時間を作って翔馬と会った。
そして、2度目のデートの日。
「おはよう!待った?」
「ううん、私が一本早い電車で来たから」
「あー、それがわかってたら、俺ももっと早く来たのに。会いたかったよ、ミハル」
抱きしめられそうになって、思わず押し返す。
「こんなとこで、翔馬ったら」
「じゃあ、どこだったらいいの?」
「…それは…」
「行こうか、もう我慢できないよ」
強く手を引かれて、あのターミナルホテルへ向かう。こんな時間からホテルなんてと思う自分と、それほどこの翔馬という男に求められてよろこんでる自分がいる。背徳感は愛情らしき感情をくっきりと際立たせるようで、翔馬と愛し合ってると勘違いしていった。
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