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海辺に佇む何もない町の下り坂を、二人で歩く。
海というのは周辺が廃れていればいる程に輝くもので、俺達の住むこの町の海は何処の海よりも澄んでいて綺麗な自信がある。何故って、例に洩れず、何もないから。過疎化の進んだ小さな港町、俺はこの町がたまらなく、嫌いだった。


「ほぉやん、大人んなったら何するか決めた?」


隣を歩く青年が僕に問い掛ける。同級生の諒太。背は俺より少し高くて、田舎には似合わない綺麗な顔立ちの男。俺が密に、想いを寄せる相手。


「都会、行きたいなぁ…もぅこんな萎れたとこいやや、俺」

「そ~…」

「りょーたは決まったん、すること。ころころ変わるやんお前。今はなにしたいん」

「今はなぁ…俳優!主演男優賞とんねん。ほんで美人さんと結婚する」

「ふぅん…ほな、りょーたもここは出るんやなぁ」


何気ない会話が出来ているはず。心はずっと痛いけど、ちゃんと…息が出来てるし、話せてる。


「せやな、その内な。ほぉやんが出てくんなら同じタイミングで行こかな」

「若い男が二人も一気にいなくなったら、町のジジババ共泣きよるよ」

「確かにぃ」


諒太が口を開けて、隣で笑っている。その様子を見上げ、頬が少し熱くなるのを感じた。


「ん、ほぉやん顔赤いで。日焼け?」

「あ、うん…そうかも。日焼け止め買いに行かな」

「誰も見てへんよ」

「それもそか」


あは、二人で声を合わせて笑う。それに釣られるように波がザサンと音を立て、反射させた夕陽を揺らした。


「…そういやりょーたっていつも美人美人言っとるけど……どんなのがいいん」

「せやなぁ…背が小さくて目がおっきくて髪長くて、頭の悪い子。」

「ロリコンなん」

「ちゃうわ」


俺は諒太より背が低いとは言え170はあるし、目は釣り目で糸目に近い。髪なんて言わずもがな短いし、成績は彼よりずっと良い。聞かなきゃよかったな、タイプなんて。それ以前の問題だが。


「………ほぉやん?」

「ん…なに」

「なんで泣いてるん、おまえ」


あぁ、しまった。嫌なことがあるとすぐに涙が出る癖は昔から治っていないらしい。

水滴でぼかされた視界越しに見る彼は夕陽に照らされてて、美しかった。


「いゃ、なんでもない。ちょっと目にゴミ入ってもうたみたいや…」

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