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不良やさぐれ神父(桃)の元に、真面目な悪魔(青)がやって来た話(最終話)
R-18?15?になりますので苦手な方はご注意ください
ここ最近ずっと持て余し続けていた自分の感情に、ようやく名前がついた気がした。
一番最初にはっきりと自覚したのは、「死にたくない」……そんな想い。
想像していたよりも広義で、包括的。
それでも自分の中のぐちゃぐちゃとした感情を一言で表したなら、きっとそんな言葉に尽きる。
今まで、自分の生死にすら興味がなかったはずなのに。
別に死にたかったわけじゃない。
ただ、死にたくないわけじゃなかっただけだ。
このまま何気なく生きていたって何があるわけでもないし、何を求めるわけでもなかったから。
なのに、今はっきりと芽生えた感情がある。
「ずっとこのままでいたい」。
……そんなこと無理だって、自分が一番分かっているはずなのに。
「ないこー、ココア淹れてー」
ベッドに足を投げ出して座り、出窓に頬杖をついて外を眺めていた俺に、まろが後ろからそんな声をかけてくる。
こちらの想いなんて知ってか知らずか…いや知るわけがないか。
いつも通り口元に笑みを浮かべて、悩みなんてないんだろうななんて思わされる能天気さ。
…呑気なもんだな、そう思うとイラつきが少し増した。
「…お前さ、いつまでここにいんの?」
まろの言葉を無視したような俺の呟きに、まろは「え?」と小さく首を傾げた。
その悠長な仕草すら気に入らなくて、ちっと舌を鳴らす。
これ以上俺の心をかき乱してくれるな。
「さっさと仕事して本来の居場所に戻ったら? お前がいるべきなのはここじゃないだろ」
俺の声のトーンが決して冗談ではないと気づいたのか、まろはようやく笑顔を消した。
こちらの真意を探るように少し覗き込むようにして見つめてくる。
その追うような視線を避け、俺はついと目を逸らした。
「人間を…俺を殺しに来たんだろ? それがお前の仕事なら、その相手と馴れ合ってる場合じゃないよな?」
いつか、その日が来るのなら。
もういっそのことここで全てを終わらせてくれ。
もう俺がこれ以上何かを望むことがないように。
ありもしないお前との未来を渇望してしまう前に。
「もう、いいよ。十分楽しかった。もう後はお前のしたいようにしていいよ」
早く殺してくれ。
そう思っているはずなのに、全く逆の感情が同じ胸の内から湧いてくる。
…ずっと、傍にいて。
あぁもう、矛盾しすぎる心の声が本当にうるさい。
ここへ来てまだ往生際の悪い自分に腹が立つ。
長い長い沈黙は、現実の時間にしたらどれくらいだったんだろう。
真顔で俺を見つめ返していたまろは、しばらくした後に目を伏せた。
長い睫毛がそれに応じるようにして揺れる。
「…分かった、そうする」
しばらくの間の後、再び顔を上げたまろはそう呟いた。
そしてそのまま、ベッドに座ったままの俺の方へと近づいてくる。
ぎしりと音を立ててスプリングの上に乗り上げたかと思うと、膝立ちの態勢で俺に対峙した。
そうしてそのまま、その手がこちらに伸びてくる。
首元へ伸ばされる長い指。尖った爪。
今からあの指先に絞められるのだろうか、それともあの尖った爪に頸動脈を掻っ切られるのだろうか。
他人事のようにそんなことを考える。
その迫る現実に身を委ねようと、そっと目を閉じた。
首筋に冷たい指先が触れる。
だけどそれは、予想に反してそのままするりと上へと撫でるように滑った。
顎のラインを、頬を。
掌が包むようにして触れたかと思うと、次の瞬間、唇に柔らかい何かが触れた。
「…!?」
思わず、閉じていた目を見開く。
それと同時に身を引きかけたけれど、それすら予想していたのかまろのもう片方の手がぐっと俺の背中を引き寄せた。
開いた目に映るのは、あの日見た明け方の空のような濃紺の髪色。
視界いっぱいに広がるほどの至近距離なのは、つまり自分が今キスされているのだと、ようやく鈍い頭に認識が広がっていく。
「…んぅ…っ」
どん、と押し返そうとするのに、俺を押さえつけるまろの力の方がはるかに強い。
抗う術もない事実に愕然としているうちに、薄く開いた唇から舌がねじこまれた。
ぬるりとした生暖かい感触なのに、気持ちが悪いなんて感覚は全くない。
絡めた舌先を吸い上げられると、ぞくりとした何かが背中を駆け抜ける。
「ま、ろ…っ」
息をつくほんの一瞬の隙に、小さくその名を呼ぶ。
それに「ふふ」と笑んだかと思うと、まろはぽすりと俺の体をベッドの上に押し倒した。
「ないこさ、俺がここに来たときに自分が言うたこと覚えとる?」
そう言いながら、まろの手が俺のシャツの裾からするりと中へ侵入してくる。
「…ぁっ」
脇腹を撫で上げられただけで、自分のものではないような声が上がる。
そんな声を漏らしながらも、俺は必死で首を左右に振った。
「『気が向いたら女の子も抱く』って言うとったやん?」
…そう言えば、そんなことも言ったかもしれない。
もう相手の顔すら1人として覚えてないくらいにどうでもいい過去の話だ。
「ないこは『そっち側』じゃないよ」
「…あ…っ」
『そっち側』ってどっちだよ、と聞き返したかったが言葉は声にならなかった。
代わりに耳を塞ぎたくなるような、自分の艶っぽい声が脳に跳ね返ってくる。
いつの間にかずり下げられたズボン。
その隙間から侵入してきた何かが、するりと腰をなぞりながら俺の後ろへと回る。
「ほんまは俺の指挿れてないこを善がらせたいけど、これやとないこの中傷つけそうやし」
言って、まろは俺の前に自分の手をパーにして差し出す。
どうやら尖った爪のことを言っているらしい。
それを見返したとき、腰を這うようになぞっていた「何か」が、更にするりと下へ下りてきた。
…しっぽだ。
三角形を象ったような見た目よりも柔らかいまろのしっぽが、俺の後孔にあてがわれるようにして触れたのが分かった。
「や、待っ…」
何をされようとしているのか理解して、掠れた声で抵抗する。
「おかしなこと言うやん、ないこ」
首を傾げて、まろはすっとぼけるようにして笑みを張り付かせる。
「俺のしたいようにしたらいいって言うたん、ないこやで」
言って、まろは俺の中途半端にずり下げられていた下着をズボンごと完全に下ろした。
そうして尖った爪を立てないようにと気を遣いながら、俺のモノを掌でそっと包み込む。
そのまま優しく上下させ始めるのと同時に、後ろにはあの尻尾がぐぐ、と侵入してくる。
しっぽには湿り気か水分があるのか…はたまたまろがローションに似た何かでもつけたのか、潤滑剤の代わりになるようなもののおかげで痛みや抵抗感は驚くほどなかった。
にゅるりと出し挿れされるそこから、やがてくちゅくちゅと卑猥な水音が響く。
「あぁ…っん」
前と同時に、同じようなゆるいテンポでかき乱される。
気持ちがいいはずなのにすぐさまイクことも許されないそれにもどかしさを覚えて、思わず腰を揺らした。
「ないこ、気持ちいい?」
耳元で囁く声に、答える余裕なんてなかった。
ただまろの肩にしがみつき、よりイイ場所に持っていきたくて自ら腰を振ってしまう。
すると答えない俺をおもしろくないと思ったのか、まろが手としっぽをぴたりと止めた。
途端に、天井まで押し寄せそうだった快楽の波がすぅっと引いていくのが分かった。
「ん…っ気持ち、いいから…っ止めんな…っ」
抗議するような口調で言うと、あいつは「んはは」なんて楽しそうに笑う。
涙まじりの目できっと睨み据えると、嬉しそうに笑んだまままろは手の動きを再開させた。
指の腹で先端をグリグリと弄られ、しっぽは後ろの中を掻き回すようにして蠢く。
「やっぱりかわいい、ないこ」
耳元で囁かれたかと思うと、まろは俺の目尻に唇を寄せた。
目を潤ませるその雫すらも吸い取るように舌を這わせる。
「イッてえぇよ」
そんな呟きを合図にしたかのように、俺のモノを上下に扱く手のスピードが、鼓動に合わせたかのように速まった。
「……っ!」
昇りつめていく衝動に身を任せるようにして、自然と徐々に浮き上がる腰を捩らせる。
自分のものではないような声にもなっていない嬌声を上げ、俺はまろのその手の中にこびりつくような精を吐き出した。
「なぁないこー、いつまで拗ねとるん」
何度イかされたか分からない。
粘着質とも言えるようなしつこく長い行為から解放されると同時に、俺は意識を手離していた。
次に目が覚めると体はきれいに拭かれ整えられていたけれど、一糸纏わぬあられもない姿のまま。
気恥ずかしさと共に一気にいろんな感情がぶわりと沸き起こり、頭まで毛布にくるまってもう既に早数十分。
「…拗ねてない」
同じように服を全て脱ぎ去ったまろは、隣で横向きに寝そべったまま肘をついて頭を乗せている。
もう片方の手は俺の毛布を引き剥がそうと掴んできた。
悪魔なんかとこんな行為にふけるなんて、本当にどうかしている。
今更ながらに胸に浮かんだのは、自分を戒めるような思い。
だけど不思議と後悔はなかった。
「ないこってやさぐれた怠惰な神父なようで、実はちゃんと真面目なとこもあるよな」
そう言って、まろは小さく笑う。
…そういうお前は俺のやさぐれた生活態度を諌めていた割には、こういうところは不真面目だよな。
淫魔でもないのに人間を襲う悪魔なんて、聞いたこともない。
「したいようにしていい」とは言ったけれど、まさかこんな展開になると思ってはいなかった。
改めて学んだ気がする。
「悪魔にしたいようにさせてはいけない」。
かぶった毛布から少しだけ顔を出すと、こちらを見やっていたらしいまろの青い瞳と視線が交差した。
そのきれいな色に飲み込まれてしまう前に、俺は小さく吐息を漏らす。
「お前、俺を殺しに来たんじゃなかった? こんなことしてていいわけ?」
言うと、まろは一度だけ目を丸くした。
だけどそれも一瞬のことで、すぐに眉を下げてくすりと笑みを漏らす。
「それ」
「『それ』?」
まろが口にした単語を繰り返すと、あいつは「うん」とひとつ頷いた。
「それ、俺一回もそんなこと言うてないよな? ないこが勝手に思い込んどるだけで」
続いた言葉に、ひゅっと息を飲む。
え、だって人間に見えるはずのない悪魔が目の前に現れるっていうのは…、つまりはそういうことなんじゃないのか。
「死神かなんかと間違えてない? 少なくともないこを殺すなんて俺の仕事じゃないし」
俺が被った毛布にかけた指で、そっとまろはそれを引き剥がす。
よいしょ、と声を出して体を起こしながら、露わになった俺の首に…耳に、髪にと順に触れた。
「俺は空からきれいなピンク色を見つけて、惹かれて下りてきただけやで」
言いながら持ち上げて笑んだ唇が、そのまま俺の前髪に口づける。
触れたそこから、じわりじわりと熱が帯びるように広がっていく気がした。
「ずっと、ないこの隣におるよ」
ないこがいつか自然と寿命を迎えるその時まで。
そう付け足すまろの言葉に、今までずっと乾いてカサついていた心が、水分を含んだように潤っていくのが分かる。
「それまで何回でもあの明け方の空なら見せてあげられるし」
「……その分、俺だけ年とってじいさんになってくのか、嫌だなそれ」
鼻をずず、とすすりながら、俺は照れ隠しにも似た気持ちで本音を押し殺すような思ってもいないセリフを吐いた。
「それもえぇやん。ないこがどんな姿になっても傍におるよ。ないこに求めるものなんかない。ただそこにずっとおってくれたら、それだけで十分やから」
まろの長く尖った爪が、俺の前髪をそっとかき分ける。
より拓けた視界で、俺は目の前のビー玉のような青い瞳を見つめ返した。
ずっと…?
そんな言葉が、自分に赦される日がくるなんて思ってもいなかった。
何かを求め、何かを自分のものにしたいと欲する衝動が、誰かに受け入れられる日が来るとも思っていなかった。
物珍しいものを見るように、俺の見た目に群がってくるあの女たちとも違う。
本当の自分を欲してくれる誰かに出会うなんてことすら、少し前までの俺は想像していなかった。
「……」
毛布の裾から、今にも震えそうな手を伸ばす。
まろの頬に、そして青い髪に触れ返すと、目の前の人間みたいな悪魔は嬉しそうに笑った。
たったそれだけで泣きそうなくらいの複雑な感情が沸き起こる。
多分、愛しさとか慈しみとか、これまでの自分とは無縁だったような感情。
そんな想いに浸りそうになった、まさにその瞬間。
何かを思い出したかのように「あ、そうそう」とまろが声を上げた。
少し弾んだ声音で、俺の耳に唇を寄せる。
「一個だけあったわ、ないこに求めること」
「…なに」と、低く小さな声で尋ね返す。
なんだか嫌な予感がして、妙な間が空いたのが自分でも分かった。
「頼むから、これからココアはちょっとぬるめに淹れてくれん?」
「はぁぁ!?」
人がせっかく感動しかけていたところにそれかよ!?
思わずツッコミかけたけれど、それすらうまく声にならない。一度言葉を息ごと飲み込んでしまう。
「こ…っの、ばかたれ悪魔がぁーー!!俺の感動を返せ!!」
その後何とか口をついて出た言葉は、語彙をなくした子どもの悪口みたいなものでしかなかった。
それにまろが「にゃははは」なんてふざけた笑い声を上げるから、呆れた顔をしながらも一瞬後には俺もつられるように吹き出してしまった。
何の彩りもなかったはずの未来が、いきなり目の前に現れた悪魔によって嘘みたいに鮮やかな色彩を得た気がする。
…そんなことを考えながらも、とりあえず今夜ココアを淹れるときはいつもよりも熱いお湯を注いでやろうと心に誓っておいた。
ーENDー
コメント
1件
桃くん!最後の考えは最高!wいつもより熱いお湯を淹れるなんて…w青くんも舌をやけどしないように!!まず悪魔に味覚?五感なんてあるんか…?けど、熱いって言ってるから感覚はあるんか、、、これからも更新頑張ってください!