「来年の鉄壁は絶対崩れねぇよ…」
そう言って伊達高の3年生は引退し、俺が主将となって部を引っ張っていくことになった。
二口 (俺は、茂庭さんみたいにみんなを引っ張っていけるようになれるだろうか…俺は茂庭さんみたいに優しくないし生意気だ。いや、余計な事は考えるな…今できる事…それをやれ!)
いつもそればかり考えてた。茂庭さん達が居なくなってからと言うもの頼れる主将になりたかった俺は、全員の練習メニューや、アドバイスをした。自分のことは後回しになっても居残り練習でカバーした。寝る時間も惜しんで…
そんな生活が続いていたら体が持つわけがない。しかもその頃には、朝の走り込みも追加していた。途中で青根にオーバーワークだと練習を止められたこともあったが、練習は辞められなかった。終いには青根だけでなく、同級生や後輩にまで心配をされるようになった。こんな主将じゃダメだと自分に追い討ちをかける。
ある朝、いつも通り少し睡眠をとって、朝起きたら、信じられないくらいの頭痛と目眩が襲った。しかし、今日は平日。朝練もあるし、授業や午後練もある。それに、今日は3年の茂庭さん達もくるのだ。尚更休む訳にはいかない。なんとか重い体を起こして、学校へ行く。幸い両親は、父の単身赴任に母もついて行き、しばらく帰ってこない。食欲もなかったため、水だけ飲んで学校へ向かう。
二口「おー青根はよ」
青根「おはよ。二口…大丈夫か?」
言いたいことはわかる。俺の顔色がさほど良くなかったのだ。
二口「ただの寝不足‼︎授業全部寝るし、平気‼︎」といつものように誤魔化す。
青根は納得いかない顔をしていたが、主将である俺が休む訳にはいかないからなんとか納得してもらった。学校へ着く頃には頭痛も朝より増していた。部室では「二口さん/先輩‼︎早く開けてください」といつものように元気いっぱいの一年生が待っていた。
そして、いつものように朝練が終わって、片付けをした。そのあとそれぞれ教室に向かった。
寝ようとしても、頭痛がして、全然寝られなかった。お昼になっても食欲はなく、何も言われないように寝たふりをしていた。
そして、放課後。部活に行き、アップをとって、練習を開始した。始まる前に青根に顔色が悪いと指摘されたがごまかした。今日はミニゲームをやる日だ。チーム分けをして試合を開始する。
黄金川 「二口さんっ‼︎」
二口 「っ(決めなきゃ…)
俺にトスが上がったその時、意識が朦朧としたのと信じられないくらいの頭痛と目眩がして、意識が途絶えた。
その時ちょうど体育館近くで、3年生が部活の様子を見に行こうと向かっていた。
鎌先 「二口は、主将ちゃんとやってるかねー」
茂庭 「俺達が選んだ主将だよ?大丈夫だって」
笹谷 「今日もきっと生意気口を叩いてくるぞーwww鎌先喧嘩すんなよ」
鎌先 「いつもあいつがうってくるから買ってんだよ!
茂庭&笹谷 「買うなよ‼︎」
なんて会話をしていたその時だった。
「二口さん⁈」
茂庭「は?二口?」
鎌先 「早く行くぞ‼︎」
茂庭&笹谷 「わかってる!」
体育館に入ると二口が倒れていた。
3年生「二口⁈」
小原 「いきなり倒れたんです…顔色も良くなかったし、休めって言っても聞かなくて」
茂庭 「熱い…熱がある。鎌ち二口おぶれる?みんなは気にしないで部活してていいよ。ささやんここの指示任せていい?」
笹谷&鎌先 「おう‼︎」
あれから何十分いや何時間かもしれない。どのくらい経っただろうか。
二口 「んっ」
茂庭 「あっ二口起きた‼︎調子はどう?」
鎌先 「お前熱あるなら休めよ。39.5度もあたったんだぞ」
二口 「すいません。」
茂庭 「二口、主将の仕事はどう?」
二口 「え…?ちゃっちゃんとやってますよ!先輩が引退したの後悔させるくらい勝って…」
それ以上の言葉が出てこなかった。だって、茂庭さんが真剣にこっちをみてきたから。そしたら今まで我慢していた糸はプツンと切れた。
二口 「辛い…俺人を引っ張れる自信ないです…ヒック…茂庭さんみたいな主将になりたいのに…俺は慣れない。茂庭さんみたいな主将になれない…」
涙が溢れて溢れて止まらなかった。いつもからかってくる鎌先さんもじっと見てる。
茂庭 「俺みたいな主将を目指すことなんてないよ。二口は二口らしい主将に少しずつなっていけばいいんだよ。」
二口 「でも…俺…みんなのために何もできない。茂庭さんみたいに試合中テンパっても落ち着かせるなんてできない。俺は主将には…向いてないんです。きっとみんな茂庭さんがいいって言います…」
茂庭 「そんな事…「そんな事ないっす‼︎」え?」
そこには、練習してるはずの部員がいた。
二口 「お前らなんで…」
笹谷 「お前が心配で練習になんなかったんだよな」
部員全員頷いていた。
黄金川 「さっきも言いましたけど、二口先輩が主将で俺はよかったって思ってます‼︎もちろん茂庭さんの主将も楽しかったですけど、二口先輩いつもアドバイスくれるじゃないっすか!それのおかげで俺、最近調子いいんです‼︎」
部員が各々「俺も」「僕もです」「もっと頼れよ仲間じゃん」「無理すんなよ」と言ってくれた。その言葉で俺は、また泣きそうになった。
そしたら青根が一冊のノートを持ってこっちにくる。
二口 「青根ごめんな」
そうすると青根はブンっと縦に首を振った。
青根 「1人で抱えるのダメ。頼れ。」
と一冊のノートを差し出した。それは俺が主将になってから、毎日欠かさずつけていたノートだ。今日の反省点部員1人1人の練習メニュー今日は誰が調子よかった。試合結果などなど俺がいつもつけていたノートだ。
青根 「お疲れ様。」
茂庭 「これでもわからない?二口はちゃんと主将だよ」
二口 「茂庭さん…」
するといつもは後輩の目の前でなんか絶対泣かないのに今日は溢れて止まらなかった。今日は何回泣いただろうか。止めようにも一度溢れたものは中々止まらなかった。次第に熱のせいか泣いたせいか睡魔が襲ってきた。久しぶりの睡魔だ。俺は茂庭さんにもたれかかるように倒れた。
茂庭 「二口寝ちゃったよ」
鎌先 「ずっと無理してたんだな」
小原 「もっと頼ってほしかったですけど‼︎
( *`ω´)」
鎌先 「青根そのノートちょっと見せてよ」
青根がノートを手渡した。
茂庭 「すご…」
鎌先 「これは熱でるよな」
笹谷 「細か…」
部員がうんうんと頷く。そこでみんな一斉に寝てる二口にむかって
「「お疲れ様。二口主将!」」
と言った。その後は、1人で帰ると言ったのを必死に止め、親に向けにきてもらえと言ったが、親がいないと言うので部員全員で看病したのであった。
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え、好き