ベッドに身体を下ろせば僅かに沈む。若干のアルコールの香りに包まれた部屋ではとてもじゃないが寝れるわけがない。 涼ちゃんが帰った後、自分が何をしていたのかもよく覚えていない。でもきっと今は夜で、まだ明けない。
月明かりが己を照らす。スポットライトの様に感じて嫌気が差した。カーテンを閉めよう、そう思い手を伸ばしたのにどうしても脳裏に涼ちゃんの姿が過ぎる。伸ばした手をそっと下ろし、ザワつく胸を抑える。開けてくれたから、なんてよく分からない理由なのに。
何をするにも涼ちゃんだったらこんなこと言って、こういうことするだろう、って。自分の中の一番みたいで信じたくない。
渦巻く思考を振り払うように、机上の缶に手を伸ばす。無理やり流し込むように缶を傾け、浴びるように飲む。もう美味しいなんて思えなかった。
程よく酔いが回ればじわじわと感情が湧き出てくる。裏に隠された気持ちはずっと閉じ込められたままで、出ようにも出れない。
「…はぁ。俺、涼ちゃんが居なきゃダメかも。」
誰に伝えるでもなく空間に呟く。何も言わず、静かに聞き入れる静寂が一番心地良い。
無色の液体が頬を伝う。暗闇では自分の顔なんて分からなくて、どれだけ酷い顔をしていようとも涙は止まらなかった。
袖で雑に目元を拭い、深呼吸をする。感情の整理は昔から不得意で。
何時までそうしていただろうか。静けさに包まれた空間に玄関の解錠音が響いた。
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