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「なんだ、その顔は。私にできないことはないのだぞ」

「貴方様が消し去った記憶を、本当に元に戻してくださるのですか?」

「造作のないことよ。彼奴と出逢ったときから、夢の番人として消え去るまでの、短い間の記憶だ。すべてがいいものではないが、おまえにとって、知りたいこともあるであろう?」


綺麗な二重瞼を、三日月のように細めて優しげに訊ねられても、すぐに了承はできなかった。理由は『すべてがいいもの』ばかりじゃないのもあったが――。


「こうしてわざわざ、夢の中までお越しいただいたのですが、その記憶は必要ありません!」


きっぱりと言い放った僕を、創造主は不思議顔で眺めた。


「ほう。彼奴との大切な出逢いが含まれているというのに、いらないというのか」

「健吾さんとの出逢いやその他もろもろを、昨夜直接聞いていますし」

「都合の悪いところを捻じ曲げて、おまえに報告している可能性だってあるのだぞ。あの男はそれくらい、平気でやってのける奴だからな」


軽蔑するような薄ら笑いを浮かべた創造主を凝視しつつ、語気を強めるべく、すぅっと息を吸い込んだ。


「かまいません。彼に騙されても平気です」


自分の意志を言葉にのせるように、吸い込んだ空気を吐き出しながら告げた。


「おまえ、面白い男だな。恋は盲目というが、どっぷり漬かり込んでいるらしい」


両肩を竦めて、やれやれというリアクションをする男性のプラチナブロンドが、ふわりと揺れた。

創造主が現れてから、いろいろな仕草を眺めていたが、抱きしめられたとき以外は、まったくドキドキせずに済んでいた。


(とても綺麗な方だと思えるのに、そこまで惹かれないのは、中身が健吾さんじゃないからだろう)


カツラを被った彼のほうが魅力的だと、再確認させられてしまった。


「もちろん、どっぷり漬かり込んでいますよ。僕は健吾さんを、この世で一番愛していますから」

「はっ、くだらないことを――」

「確かに、健吾さんとの出逢いは大切なものですが、消し去られたものを含めて、今までのことは過去の出来事なんです。僕は彼とふたりで、これからを歩いて行きたい。健吾さんと一緒に過ごしていく、未来が見たいんです」


夢物語みたいな胸の内を晒すと、創造主の両目がこれでもかと大きく見開かれる。

歪んだ関係~夢で逢えたら~

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