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高校一年生のクラピカはごく普通の日々を過ごしていた 学校に行き、勉学にはげみ、友人達と過ごし、そんなごく普通な生活だ
クラピカには趣味がある。それは読書だ
子供の頃から本が好きだった。
冒険譚を読んではワクワクし、壮大な世界を冒険してみたいという憧れがあった
この広い世界、どんな国があって、外国にはどんな人々がいるのかというものを見てみたかった
時には運命を変える出会いもあって、自分はそんな人生を歩むのだと。
しかし、現代における一般人の生活ではそんなものは夢である
普通の人間として学校に行き、勉強をする。成長するにつれ、そんな憧れは消えて行った
一般人として、こうして日々を過ごすのみ
ファンタジーなことなどあるわけない
現実世界においてそんな幻想的な物語なんてものもないのである
そう思って育った。
ある日の放課後、クラピカは図書室にいた。
放課後はここで本を読んでることが多い
この学校は中等部と高等部の生徒が同じ設備を利用する為に図書室はかなり大きい。
なので揃えられている本の種類も多いのだ。
気になったものがあれば借りて家で読むこともあるし、ここで読むのもまた楽しい
いつもここで本を読む時間は日常の一ページとしてある意味では青春だ
こうして今日も図書室で本を読んでいたら、あっという間に下校時刻になった
「もうこんな時間か、そろそろ帰るか」
荷物を持ち、図書室を出ることにする。
帰ろうかと廊下を歩いて生徒玄関へ向かおうとしたところだ
「ねえ、君。ちょっと待って」
突然、背後から声をかけられた
クラピカが振り向くとそこには男子生徒がいた。
「こんにちは」
男子生徒はそう挨拶した。
ショートの黒髪、童顔で真っ黒な瞳。この学校の制服を着こなしているが初めて見る顔だった。
クラピカが男子生徒の表情を見ると、男子生徒はやたら嬉しそうにしていた
この生徒は一体誰だろう?と頭を傾げた。少なくとも同じクラスではない
それどころかこんな男子はこれまでこの学校でも見たことがなかった
「こんな時間まで本を読んでたの?勉強熱心なんだね」
初めて会った相手だというのに妙に笑顔なのが気になる。
「私に何か用か?」
一体なんなのかとクラピカはとりあえず返事をした
「なんかね、君のこと気になっちゃって。お話してみたいなって」
早く帰りたいのだが、と面倒に思いつつも男子生徒の相手をする
「見ない顔だな。私はお前を初めて見た」
「そうか、君とは話すの初めてだよね」
男子生徒は自己紹介を始めた
「俺、最近この学校に転校してきたんだ。俺はクロロ。クロロ・ルシルフル。二年生で君より一つ上の学年だよ」
この男子生徒は年上だったのか、と少し焦った
「すまない、てっきり同級生かと思ってしま……いました」
年上だったというのに、それを知らなくてため口をきいてしまった
「いいよ。ため口で話してよ」
この男子生徒を見たことがなかったのは、彼は最近この学校に転校してきたばかりだったからだ。
ついこの間までこの学校にいなかったのだから、知っているはずはない。
「俺、ここに転校してきてからこの学校の図書室気に入っちゃって、ここの設備凄くいいよね。大きいし、本の種類も多いし」
放課後という生徒達が帰る時間だというのに、クロロは単なる世間話をしたいのだろうか?クラピカは少し面倒になってきた
「でさ、ここのところ放課後ここによく来てたんだけど、最近やたら君の姿を見たから。ちょっとお話してみたくて」
自分のことを見たのも最近だというのにどこに興味を持ったのだろうか
とりあえず自己紹介をせねば、とクラピカは名前を言おうとした
「私の名前は……」
「クラピカっていうんだろ?」
名乗ろうとしたらクロロはすでにクラピカの名前を知っていた
「なぜ私の名前を知ってるのだ?」
この学校に転校してきたばかりでなぜ下級生の名前を知っているのか
図書室で少し前からクラピカの姿を見ていたとしても、クラピカはクロロのことを知らない
「その外見でわかったよ。名前をどこかで聞いて、君がクラピカって子なんだって」
どこかで名前だけを聞いて外見で自分がなぜクラピカという人物なのだとわかったのだろうか
「クラピカは俺のこと知らないの?」
「最近この学校に転校してきたばかりのお前のことをよく知るわけないだろう」
「じゃあ、これから知ってほしい」
クロロはそう言った
「俺、君のこともっと知りたいな」
初めて喋った相手だというのに、やたら距離を詰めてくる
クラピカは受け流すことにした。
「そうか。だが今日はもう帰る時間なので。これで失礼する」
クラピカはそういうと、生徒玄関へと向かった。
その場に残されたクロロはひとり呟いた
「間違いない。あの子がクラピカだ。やっと見つけた」
クロロは一人、嬉しそうな笑みを浮かべた。
「クラピカは俺のことわからないみたいだけど、こんなことでへこたれるわけにはいかないな。やっと会えたんだ」
まるでずっと探していた人物に会えたかのような感動のように
翌日、昼休みにクラピカが図書室から出てくると、クロロがちょうど廊下から歩いてきた
「やあクラピカ」
その手には本を持っていた。どうやら借りた本の返却に来たようだ。
「本、好きなんだね。よく図書室にいるみたいだし」
「ああ、お前もなのか」
「うん。本はいいよね、ロマンがある」
その表情はニコニコしていた。クロロは普段からやたら笑みを浮かべている
何か嬉しいことがあるのだろうか、とクラピカは思った
「俺、まだこの学校にどんな本があるか知らないんだ。よかったらおすすめの本教えてよ」
クロロはそんなたわいのない話題を出してきた
一応、話を合わせてはみる
「今日の新刊コーナーに面白そうなものが入っていた。それを借りてみてはどうだろうか」
「そっか。じゃあ後で借りてみるね。ありがとね」
クロロはそう言うと、図書室に入っていった。
二年生だというのに、後輩である下級生の自分にやたら愛想よく話しかけてくる
クラピカにとってクロロはついこの間知り合ったばかりなのでまだどんな人物なのかはよくわからない
しかしクロロはクラピカに会う時はやたら嬉しそうだ。
クロロは校内でクラピカの姿を見ると話しかけてくるようになった
「や、クラピカ」
クラピカが一人、中庭で本を読んでいるとクロロが話しかけてきた
「この前クラピカが教えてくれた新刊コーナーの本、面白かったよ」
「そうか、それはよかったな」
クロロはクラピカが読んでる本の表紙を見た
「今日はそんな本を読んでるんだ」
「ああ」
クラピカが読んでいたのは神にまつわるファンタジーものだった
現世で死んだ者はどこへ行くのかというものがテーマで死後、徳を積んだものは神のもとへ行けるということの反対に、逆に罪を犯した者は地獄に行く。
そんなありきたりな物語だった
「俺も昔その本読んだんだ。そういうの好きなの?」
「時折こういうものが読みたくなる。ただの創作だが、まあ物語としては面白いからな」
ふーん、というとクロロはクラピカにこう聞いた
「じゃあさ、君は死後の世界って信じる?」
本のストーリーに合わせてそんな話題を出してきたのか、とクラピカは思った
「死後の世界……か」
クラピカは少し考えた。
人間、死んだらいったいどこへ行くというのか。
人は死ねばそれまでで、そこから先に何かあるというのだろうか。
死んでしまえばそこから先に何があるかは見ることができない。そのまま魂は消滅してしまうのではないだろうか。
死後の世界があるとすれば、どんなものがあるというのか。人は生き返ることができないのだからそれは見たという経験者はいないだろう。それは誰もわからないのだ
「そんなものがあるとは思えないな」
クラピカはそう考えた。
死んだらそれまでで、その後の世界などないと
「俺は信じてるんだ」
クロロはそう言った
「死んだらその先にも何かがあって、死んでそこで終わりじゃない。だから、もしも仲間が死んだらそいつが一番やりたかったことをしてやろうと思う」
それがクロロのポリシーなのか、死後の世界という幻想的なものに対してやたら真剣に語る
「ずいぶんと仲間想いなのだな」
「まあね」
その後もやたらクロロはクラピカに絡むようになった
校内でクラピカの姿を見つければ必ず話しかけてくるようになり、クロロはやたら愛想よくしてくる。
クラピカとしては少し面倒だとは思ったが、クロロは特に危害を与えるつもりもないようなので素直に相手にはしていた
ある日、クラピカはいつも通りに登校してきて靴箱を開けた
すると、中には何かが入っていた
「なんだこれは?」
中には手紙が入っていた
一体何だろうか?とクラピカは思った
飾りっけのない、質素な封筒。
これが少女漫画などでよく見るラブレターというものだろうか
今時こんな古風なことをする者がいるのかと思った。
クラピカは中身を読んでみた。
そこには枠線も何もない白い紙にただ「放課後に裏庭に来てほしい」とだけ書いてあった。
誰からの手紙なのか送り主の名前すらない
「これは男からか?それとも女子からか?」
一体誰なのかもわからない手紙はある意味奇妙だ
ラブレターにしては質素すぎる内容である
「なぜこんなものを私に?呼び出されるようなことはした覚えはないのだが?」
何か人に恨まれるようなことをして、それに対して呼び出しをしようとしているのか。
そうだとすればクラピカには身に覚えがない。
誰かの怒りを買うようなことをした記憶はないし、あったとしてもそれが呼び出されるほどのことなのか
「もしやこれが告白というものか?」
誰からかわからない手紙が、これが漫画などでよくある告白の為に二人で会いたいというものだろうか
もしも相手が異性で告白といったものなのならば行くのも面倒とすら思った
クラピカははっきりいって異性との関係を持つのは面倒だと関心がなかったからだ
何の用事なのかはわからないがこんなものをいきなり送られてきても困る
しかし、なぜこの手紙が自分の靴箱に入っていたのかは気になる
「何があるのかわからんが、とりあえず行ってみるには行ってみるか」
とりあえずこの場所に行ってみて、もしも面倒ごとであれば軽く受け流して話を済ませてしまおうと思った
変な者がいたとしてもその場から逃げればいいだけだ
誰からの手紙からもわからないものを見て見ないふりをするのもあれだ
とりあえず放課後に指定した場所へ行くことにした
放課後、手紙の通りにクラピカは放課後に裏庭に来た。
一体そこには誰がいるというのか。
いきなりあんな手紙を出してきたのだから、呼び出しには理由があるのだろう
クラピカが裏庭に到着すると、手紙の主であろう人物がいた
「やあ」とそこにいた生徒は挨拶をする
そこにいたのはあのクロロだった
「ちゃんと来てくれたんだ。嬉しいな」
「あの手紙を入れたのはお前か」
「そうそう。ちょっとクラピカとお話したくて。どうしても二人だけで話したいことがあったからさ」
わざわざ手紙を入れてまでこんな場所に呼び出すなんて一体何の用事だというのだろうか
話があるのならばいつも通り校内で見つけた時に話しかけてくればいいだろう。
それなのに、人気のない場所に二人っきりでというのは何があるのか
「ちゃんと来てくれて嬉しいよ。どうしても伝えたかったことがあったから」
「なんだ、それならさっさと言え」
クロロはクラピカの前に立つ
「クラピカ、単刀直入に言うよ」
その真っ黒な瞳は真剣な眼差しだった
吸い込まれそうな黒い瞳にクラピカは一瞬何かを感じた
「俺は君が好きだ」
と、クロロは告げた。
「は……?」
突然の告白に、クラピカは驚いた
「な、なんだいきなり……」
「いきなりじゃないよ。俺はクラピカのことが好きだ」
つい最近この学校に転校してきたばかりというのに、なぜ自分のことが好きといえるのだろうか、とクラピカは首を傾げた
「お前はこの学校に転校してきたばかりだろう。確かにここ最近はよく話すことはあったが急にそんなことを言われても困る」
クラピカは焦った。
確かにここ最近、クロロと話すことはあった。
しかし、それとこういったこととは別だ
「でも、俺は君のことがどうしても好きなんだ」
クロロはさらに押した
「な、何を……」
クラピカは同様した。突然のクロロの告白に何を言えばいいのかわからないのだ
「私のどこが好きだというのだ」
「それはね……」
そう言うと、クロロは突然クラピカを抱きしめた
「!?」
予想外のクロロの行動にクラピカは驚愕した
いきなり身体に触れる、しかも抱き着いたのだ
「クラピカ、ずっと会いたかったよ」
と、クロロは耳元でそうささやいた
「クラピカ。間違いない。君はクラピカだ。ずっと会いたかった」
クロロは抱きしめる力がさらに強くなる
「会いたかった。探してたよ君のことを」
その言い方はまるでずっと探していた人物に会えたかのように
「な、なんだと?は、はなせ!」
クラピカはクロロの腕を強引にほどいた
突然こんなことをされても何を言っているのかもわからない
「なんなのだお前は……!私は最近お前を知ったばかりだ。会いたかったとはなんだ」
「その通りの意味だよ。俺は君にずっと会いたかったんだ。ここで見つけられてよかった」
クラピカはクロロの言う意味がわからず混乱した
「私はお前のことを少し前まで知らなかった。最近はよく学校で話すことはあるが、私はそれ以前にお前に会ったことなんてなかった」
クラピカにとってはクロロと知り合いになったのは割と最近だ
クラピカはクロロのことを全然知らなかった。
だというのに、クロロはまるで以前からクラピカに会いたかったかのような言い方だ
「うん。君は俺のことを知らないだろうね。でも、俺には君と前に会ってた気がするんだ。
君は俺のことを知らなくても、俺はずっと前から君を知っていたんだよ。この学校に転校する前からずっと」
その口ぶりはまるで以前からクラピカを知っていたかのようだ
「俺達、きっと運命の赤い糸で結ばれてるんだ。だからここで会えた」
「一体何を……」
クロロの言う意味が全くわからない
クロロは一体クラピカの何を知っているというのだろうか
前からという言い方にこれはクラピカをストーカーしていたという意味のようにも聞こえ、クラピカは少し恐怖心を抱く
「よくわからん……。私はもう帰る!」
「あ、待って」
これ以上クロロと共にいるのはなんだか気分が悪い。
ここは早くこの場を離れるべきだろう。クロロを置いて、クラピカはさっさとその場を後にした
クラピカの背を見ながら、クロロはただその背中を見つめるだけだった
「やっぱりクラピカは俺のこと……」
クロロは期待外れだったかのように、少しだけ寂しそうな感情を抱いた
「けど、負けないよ。いつか振り向かせてみせる」
そう決意して。
数日後、日直の仕事で職員室へ行こうとしていたクラピカが廊下を歩いていると、クロロが歩いてきた
そして、いつも通りに挨拶をしてきた
「やあ」
ここは一年生の使う廊下だ。なぜ上級生のクロロがここにいたのか。
まるで待ち伏せしていたかのようだ
「……なんだ」
あんな告白があって、普通に話せるわけがない
クラピカにとっては気まずいと思った。
「あの時はごめんね。突然だったからびっくりさせちゃったと思う」
クロロは素直に謝罪した。クラピカがあの時、戸惑っていた様子を知っていたからだろう
「そうか。わかった」
クラピカはそう返すと、クロロの元を離れようとした
「待ってよ。もう少し話がしたい」
クロロはまたもやクラピカを引き留めた
「なぜお前は私につきまとうのだ」
「なんでかな、運命の相手を見つけた気分」
「まだそんなことを言っているのか……」
クラピカがあの時戸惑っていたことを見ていたはずなのに、なぜまだそんなことを言うのか
「俺は、君に普通じゃない感情を抱いてるんだ」
あの時、クラピカがさっさとその場を離れていったのに、なぜクロロは引き下がらないのか
「なぜお前がわたしにここまでかまうのかよくわからん。一体何が目的だ?」
「だって、俺はずっと君のことが……」
「またそれか」
前と同じようなことを言ってることにクラピカは呆れた
「ずっと前から私に会いたかったと言っていたな、あれはどういう意味だ?」
クロロがあの時に言っていたことは一体なんだったのだろうか
「それはいつか話すよ」
なぜそれをすぐ言わないのか。肝心なことをじらすなんて変わっている
「そうか。では私は日直の仕事があるので行く」
クラピカはそう言い残すと、職員室へ向かった
相変わらずクロロの言ってる意味はよくわからない、と思いながら
「一体あいつは何なのだ?」
突然あんな告白をしてきたり、クロロの行動はよくわからない
いまいち理解しがたいことをする者だと思った
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