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リオラさんは一時撤退し、僕に話し掛ける。
「ヤマトさん、お気を確かに。今迷ってしまっていては、全てが失くなってしまいます。覚悟を決めてください」
そうだ、リオラさんの言う通りだ……。
今は、悩んだり、迷っている時間なんてない……。
「流石に、私の力では岩の神の相手は出来ません。私があのカエンと言う男を抑えておくので、ヤマトさん、あなたがしっかり岩の神を守るのです」
守る……。
「頼りにしてます。ヤマトさん」
そう告げると、リオラさんは漆黒の双剣を構え、難なくカズハさんを横切って行った。
カズハさんにリオラさんの姿が見えていない……?
そうなると岩の神 カズハさんの視界に映っているのは、逃れられない僕たちと言うことになる。
「ヤマト……」
「アズマ、カナンを連れて離れててくれ」
「相手はカズハさんだぞ……! あの……俺たちにもすごく優しくしてくれた……」
僕の覚悟は既に決まっていた。
「僕がカズハさんを守るよ」
「え……?」
「僕がカズハさんの守りたいものを守る。カズハさんが本当に守りたいもの……」
そして、アリシアさんとの会話、この国の兵士たちとの会話、誰に対しても平等なカズハさんの姿。
「この、”守護の国” を守る……!」
そして、僕は岩の神 カズハさんの前へ向き合った。
光剣はない……。
頼れるのは魔法と、この腕の防具だけ。
神との……戦闘……!
「お前が龍長か……! 手加減は出来ないぞ……! この国はこの俺、岩の神が守る!!」
カズハさんは声を荒げている。
そして、高速移動で僕の眼前へと現れる。
遠距離魔法は効かないと分かったのか、今度は近接戦闘に切り替えて来たようだ。
「 “岩魔法 ガントレット” 」
僕は咄嗟に、岩魔法 ブレイクを発動。
間一髪、僕の前に岩石が出現した瞬間、カズハさんの、目では追えないほど高速な連撃のパンチが繰り出された。
「これ……拳は魔法じゃないから、炎神魔法 ラグマ・ゴアだったら防げなかったぞ……」
岩の国へ来て、既に何個もの属性の魔法を得たが、真の強敵と戦う時は、もう発動する魔法を間違えられない……!
岩魔法が防御魔法で本当に良かった……。
いや、恐らく、アゲルの話なら、僕がそろそろ自分を守れる魔法を得たいと思っていたから、この国で、岩魔法として防御魔法が発現したのかも知れない。
更に、カズハさんは岩魔力の高速移動により、僕の背後に回り込む。
「 “岩魔法 クロノス” !!」
早い……!!
僕の四方に長方形の岩盤が出現し、僕を覆った。
自然の国のランガンさんの岩魔法 クローズに似てるけど、やはり神の魔法は一味違う。
『石を当てる』などの条件がなくとも、好きな場所に自在に魔法が出せる。
“炎神魔法 ラグマ・ゴア”
でも、これが魔法だと分かっていれば破壊できる……!
ドカンッ! と、僕は岩盤を破壊した。
「防御には優れているようだな! 龍長!!」
やっぱり僕を龍長と勘違いして戦ってる……。
「空の上なら大丈夫だろう……」
そう呟くと、カズハさんの身体から蒸気が溢れる。
もう三つの国の神を見て来たんだ。
何をするのか……分かる……。
岩の神の “岩神魔法” が放たれる……!!
カズハさんは、両腕を大きく広げた。
「 “岩神魔法 クロノ・スタシス” !!!」
嘘……だろ……!!
ゴゴゴゴゴ……と、地鳴りが鳴り響き、カズハさんの背後には、国をも覆うほどの岩盤が出現した。
守護神のダンさんの隕石とは桁が違う……。
「こんなの……天変地異じゃないか……!!」
僕だけであれば、仙術魔法 神威の空間移動で逃げることは出来る。
でも、この岩盤が炎龍に衝突したら、大きな瓦礫と炎龍が国に落ちて大災害が起こる……。
いや、カズハさんのことだ。
もしかしたら、この 岩盤ごと国の外へと追いやるつもりなのかも知れない……!
信じよう。
カズハさんは、守護の国を守る神だ!
地鳴りと共に、巨大な岩盤は炎龍にぶつかる。
「ゴォォォォ!!!」
炎龍は咆哮を放ち、身動きが取れないままズルズルと国外へ動き始めた。
僕たちの地盤、龍の背はガタガタと震える。
やっぱりそうだ……。
岩盤を勢い良く炎龍に当て、衝突ささて攻撃することも出来たはずだが、カズハさんは国への被害を考慮し、炎龍ごと押し出そうとしている……。
「アズマ! カナンをしっかり支えてやってくれ!」
「ま、任せろ!」
まだだ……!
カズハさんの目は……まだ僕を捉えている……!
グン! と、カズハさんは僕に向かってくる。
さっきよりも目で追える……!
風神魔法……
いや、
“仙術魔法 神威”
僕が空間移動で移動した場所は
「ここだァー!!!」
“炎魔法 ラグマ × 風魔法 フラッシュ”
炎の腕を、暴風の勢いでカズハさんに叩き付ける。
ふと現れた僕に対応し切れなかったカズハさんの背中に命中し、そのまま吹き飛んだ。
僕が移動した場所は、変わらず同じ場所。
カズハさんの高速移動に合わせ、一瞬だけ仙術魔法 神威で姿を消し、カズハさんが僕に攻撃を仕掛ける『僕が元々いた位置』に変わらず出現し、背後から攻撃をした。
そのままバタリとカズハさんは倒れ込んだ。
炎龍を押しやっていた岩盤は消えた。
「アハハハハ! ヤマトくんが神を倒しちゃった!!」
リオラさんの素早い剣技を余裕で交わしながら、両手を上げ、龍長 カエンは笑い出した。
「すごい! 『覚醒』はそんなに進んでいたんだ!!」
覚醒……? 何のことだ……?
アゲルからそんな言葉、一度も聞いたことないぞ……?
「君、もう飽きたからいいや。闇魔法も弱い、剣技任せの単調な攻撃……」
カエンがリオラさんに向けて手を翳す。
「え……?」
刹那、リオラさんは炎龍の背から遥か遠い場所に移動し、そのまま急落下して行った。
「クハッ……!」
そして、勢い良く地面に叩き付けられ、口からは血を吹き出した。
まずい……リオラさんが死んじゃう……!
急がないと……!
あれ……でも僕も……。
フラッと、突然意識が消え掛かる。
今ここで、倒れちゃいけないのに……。
「おっと……」
僕を支えてくれたのは、アズマだった。
「無茶しすぎだ。魔力の使い過ぎだな」
こんな時なのに、アズマさんはヘラっと笑った。
そして、僕に治癒の水魔力を送り込んでくれている。
「いやー、ヤマトくん! 素晴らしいよ! 君の成長具合も見れたし、岩の神の岩神魔法も知れた!」
拍手を送りながら龍長 カエンは近付く。
「今日は本当に収穫が多かった! それじゃあ、そろそろ僕たちは引き上げるとしよう!」
カエンは、炎龍に魔力を注ぐと、炎龍は再び、大きな咆哮を上げ、翼を大きく広げた。
「今、国民に幻影魔法を掛けている闇龍の加護を受けたガンマと言う男は、とても遊び好きでね。僕はもう帰るけど、彼はまだまだ遊ぶかも知れない。武運を祈ってるよ」
そう言うと、気絶しているカズハさん、僕とアズマは、気が付いたら空中上にいた。
「うわぁ!!? あれ、カナン……?」
カナンは、炎龍と共に連れ去られてしまった。
「おい!! カナン! カナン!!」
「ヤマト! まずは着地をどうにかしないと俺たちの方が死んじまうぞ! さっきの岩と風のやつ、出来るか!?」
「ダメだ……魔力がもう……」
地面に急落下していく。
「うわあああああ!!」
「 “岩魔法 ドック” ……」
か細い声でカズハさんは詠唱すると、僕たちは地面ギリギリで、ぐにゃりとした岩魔法のクッションに着地した。
「カズハさん……?」
「ヤマトくん……迷惑を掛けてしまったようだ……。神として情けない……」
「そんなことはないです……洗脳されてたんですから……」
そうだ。 僕も 洗脳 に掛かり、 仲間たちと戦う 羽目になってしまった。
カズハさんを責める資格はない……。
でも、きっと、カズハさんは自分のことを許せないのだろう……。
そして、カズハさんは僕の腕に触れる。
「俺は、守護の国の岩の神なのに、発現した魔法はどれも攻撃にしか使えない魔法だった……。守護神にこの国の騎士団長を任せたのも、俺より国を守れると思ったからだ……」
そう言うと、ニヤッと顔を向けた。
「岩の加護だ……。アリシアは強い……。闇魔法を盾にして守ることに優れている。それでも、国民全員を守るには、荷が重すぎる……」
そして、同時に膨大な魔力が注ぎ込まれていることを実感した。
僕に魔力を与えて、託してるんだ。
「どうか、救ってやって欲しい……」
そう言うと、魔力が殆ど底をついたのか、カズハさんは気を失ってしまった。
アズマは無言でカズハさんの治癒に入った。
「ヤマト……」
アズマは僕を見ずに呟いた。
「分かってるよ、アズマ」
この国を、守る。