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北海道の地に降り立って、まず最初に出迎えてくれたのはあんこさんだった。
「あんこさん! 来ました」
「よく来てくれたね~嬉しいよ」
お互い満面の笑顔で抱き合って再会を喜んだ。
50歳を超えたあんこさん、いつまでも美人で全然変わらない。
好きな人が側にいるからかな……前よりも、さらに輝いてる気がする。
本当に、素敵。
こんな風に年齢を重ねたいと昔からずっとずっと思ってきたけど、見た目だけじゃなく、この内面から溢れ出すような美しさには、私なんて遠く及ばないと思った。
「こんにちは、あんこさん。この度はおめでとうございます」
私の両親が言った。
両親はもちろんあんこさんのことを知っていて、私がお世話になっていることをずっと感謝していた。
「そんな、そんな。この歳で結婚なんて恥ずかしいので。お2人にも来ていただけて嬉しいです。ありがとうございます。祐誠さんも正孝君も、わざわざ本当にありがとうございます」
あんこさんは丁寧に頭を下げた。
「こんにちは、あんこさん。おめでとうございます。僕、あんこさんのパン食べたいです」
「まあ、正孝君! ありがとうね。今日はね、正孝君のためにいっぱいパンを焼いたからたくさん食べてね。さあ、行きましょう」
私達は、あんこさんの車で北海道の壮大な大地を駆け抜け、大きな敷地内にある『杏』に入った。
「うわぁ、すごく素敵なお店じゃないですか」
「結構広いでしょ?」
東堂社長のお兄さんが酪農を営む、かなり広大な所有地の中に、お兄さんのバターやチーズなどのお店、東堂製粉所、そして『杏』がある。
少し離れた場所にはそれぞれが暮らすお家もあって、この環境の良さにはとても憧れる。
「北海道の『杏』も本当に素敵です」
「ありがとう。さあ、まずはカフェへどうぞ」
私達は、早速、あんこさんの美味しいパンと「前田さんちのロイヤルミルクティー」をいただいた。
「あんこさんの結婚式は明日だから、今日はゆっくりさせてもらいますね」
「雫ちゃん、本当にごめんね。うちに泊まってもらえば良かったんだけど……」
「まさか、新婚さんのお家に押しかけるなんてできませんよ」
「止めてよ、本当に。新婚だなんて恥ずかしいからさ」
あんこさんが頬を赤らめる。
「気にしないで下さい。私達は近くのホテルを取ってますから」
祐誠さんが言った。
「すみません。本当に……こちらが招待しておいて」
「いえ。こんなに美味しいパンをいただいてるんですから。あんこさんのパン、久しぶりに美味しいです。な、正孝」
「うん、最高だよ。本当に美味しい。あんこさんのパンが1番」
笑顔いっぱいの正孝。
「まあ、祐誠さんと正孝君みたいなイケメンさん2人に言われたら嬉しいわぁ~本当はお母さんのパンが1番でしょうに。めちゃくちゃ可愛い子だね~」
あんこさんは、正孝の頭を撫でてくれた。
「相変わらずイケメン好きだな、あんこさんは」
「東堂社長!」