テラーノベル
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弐⌒💎
165
続きです
「絶対今度教えてねー!?」
嵐のような嵐が去り、カフェに静けさが戻る。
ないこはそのままドサッと俺の向かいの席に崩れ落ち、テーブルに顔を埋めて長いため息をついた。
「……はぁぁぁぁ…死ぬかと思った」
脱力しきった恋人の姿に、俺は思わず口元を緩めた。
コップを置き、テーブル越しにすっと手を伸ばして、くしゃくしゃになったないこの頭を優しく撫でる。
「逃げ足だけは速いなぁ、ないこ」
少しだけ意地悪く笑いながらも、指先で髪を弄る手つきには愛おしさを込めた。
「でもな……いつまでも『今度』で逃げ切れるわけないやろ? 『大切な人』が誰なんか、次会ったときは腹括らんとあかんで」
顔を上げたないこの瞳をじっと見つめ、俺は少しトーンを落として微笑んだ。
「まあ……俺としては、いつお披露目されてもええ準備はできてるけどな」
「……いやだって、今更言えないし……!」
頭を抱えて本気で悩んでいるないこを見て、小さく息を吐く。
「『今更』って……。じゃあこのまま、りうらに毎日告白させ続けて、俺らの関係もずっと隠し通すつもりなん?」
伸ばしていた手でそのままないこの頬を包み込み、親指で優しく撫でる。
「ないこ、俺はな。隠すこと自体が嫌なんやなくて、お前が一人で勝手に罪悪感溜め込んで、パニックになってるのを見るのが一番嫌やねん。……それに」
少しだけ声を低くして、じっと目を合わせる。
「俺の恋人が、別の男に毎日『好き』って言われてんのを横で見てる俺の気持ちも、ちょっとは考えてほしいんやけど?」
いつも通り意地悪く笑ってみせたものの、言葉の端々には本音が滲んでしまったかもしれない。
まじまじと見つめ返すと、ないこは気まずそうに目を泳がせた。
俺はくすっと笑って手を離すと、自分のコーヒーを一口飲んだ。
「まあ、りうらも勘がええ子やからな。今日の『大切な人』って一言で、なんとなく察してるかもしれんし……。次に会う時は、逃げんと二人で話すで。俺もちゃんと隣におるからさ」
「……うん、ごめん」
しょんぼりと肩を落として素直に謝るないこを見て、俺の胸の奥がキュッと締め付けられた。ちょっと追い詰めすぎだろうか。
罪悪感で押し潰されそうになりながらも、俺の気持ちをちゃんと受け止めようとしてくれているのが伝わってきて、愛おしさが一気に溢れ出す。
「……何で謝んねん」
俺は苦笑いしながら立ち上がると、ないこの隣の席に移動してドカッと腰を下ろした。
周りに人がいないのを確認してから、テーブルの下でそっとないこの手を握りしめる。指を絡めると、相手の手が少し強めに握り返してきた。
「俺は謝って欲しい訳じゃないよ。……二人で付き合ってるのに、ないこが一人で抱え込んで苦しんでるんが見てられへんかっただけ」
握った手に少しだけ力を込めて、肩を寄せ合う。
「りうらには、俺からもうまくフォロー入れるわ。二人でちゃんと話せば、アイツかて分かってくれるって」
横顔を覗き込むと、ないこはまだ少し不安そうに唇を噛んでいた。俺は繋いでいない方の手で、ないこの頭をぐしゃぐしゃと優しく撫でまわした。
「だからそんな顔すんなって。な? 今日のところは……俺と二人で、美味しいもんでも食べて帰ろ。寿司行く?奢ったるから」
「……やっぱ好き」
ぽつりと呟かれたその言葉に、俺は撫でていた手をピタリと止めた。
まじまじと隣を見ると、ないこは顔を真っ赤にしたまま、ぷいっと気まずそうに横を向いている。でも、テーブルの下で繋がっている手だけは、ギュッと力強く握り返されていた。
不意打ちすぎる素直な言葉に、胸の奥がぎゅっと跳ね上がる。
さっきまでのパニックになっていた姿とのギャップが凄すぎて、俺の頭まで一瞬で熱くなっていくのが分かった。意地悪を言っていたのは俺の方なのに、完全にノックアウトされた気分だ。
「……っ、いきなりなに言ってんねん」
照れくささを隠すために、柄にもなく口元を手で覆ってしまう。
横を向いたままの恋人の頬をそっと覗き込むと、耳の裏まで真っ赤に染まっていた。そんな可愛すぎる反応を見せられたら、もう我慢なんてできるはずもない。
俺は繋いだ手にくいっと力を込めて引っ張り、ないこの体を自分の方へと引き寄せた。
「そういう可愛いこと言うたらさ…我慢できなくなるの、分かってる?」
耳元で少し低めの声で囁くと、ないこはびくっと肩を揺らした。
「……まぁ、今日は人前だから我慢しといたるけど」
くすっと笑って額同士をこつんと小突くと、握った手に改めてぎゅっと力を込める。
「俺も好きやで」
二人だけの秘密の関係も悪くはないけれど、やっぱり堂々と恋人として隣にいられる日を心待ちにしながら、俺は愛おしい恋人の手をしっかりと握りしめていた。
「……ねぇ、今日家行きたい」
ないこが上目遣いで呟いたその一言に、俺は思わず息をのんだ。
さっきまで顔を真っ赤にして照れていたくせに、急にそんなおねだりをぶち込んでくるのはズルすぎる。繋いでいる手から伝わってくる体温が、急に熱くなった気がした。
「……お前なぁ…」
小さくため息をつきながら、俺は繋いだ手にギュッと力を込める。学食の静けさが、妙に甘く重たい空気に変わっていく。
りうらとのやり取りで擦り減ったメンタルを、俺で埋めようとしてくれているのだろうか。そう思うと、胸の奥から湧き上がる愛おしさと独占欲が止まらなくなる。
「……ええよ。その代わり、泊まりな?」
ないこの耳元に顔を近づけ、周囲には聞こえないくらいの低い声で囁く。
「ここで我慢した分……家ついたら、覚悟しときな?」
意地悪く口元を緩めて覗き込むと、ないこはさらに顔を赤らめた。
俺は立ち上がると、ないこの手を引いて学食をあとにした。りうらにちゃんと話すのは明日にして、今夜は思いっきりこの恋人を甘やかして、俺のものだと再確認させてもらおう——そう心に決めながら、二人で夕暮れの帰り道を歩き出した。
コメント
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みぅ🤍🥀です、読ませていただきました……! 第2話、甘くて切なくて、胸がぎゅってなりました🥺 ないこが「死ぬかと思った」ってテーブルに突っ伏すところ、すごくリアルで笑っちゃったけど、その後の主人公の優しい撫で方とか、言葉の端々に滲む本音がすごく好きです。 「俺の恋人が別の男に毎日好きって言われてるのを横で見てる気持ち」——そこ、めちゃくちゃ刺さりました。 隠すこと自体より、ないこが一人で抱え込んでるところが嫌って言えるの、尊い……。 最後の「今日家行きたい」→「泊まりな?」の流れ、エモすぎてやばかったです。 続きが気になりすぎる……!🌙