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「レストラン編」
ここは三途の川の途中にあるレストラン。私はこのお店のオーナー。私の仕事は二つ。お客さんに料理を振る舞う。もう一つはお客さんの記憶を見て末路を見届ける。
がチャリ。
今日もお客さんがやってきたようだ。
「ほう。綺麗な店ではないか。是非とも俺の城に同じ場所を作らせたいものだな。」
今日のお客さんさ禍々しいオーラをまとった人のようだ。城とか言っていたけど魔王かなにかなのだろうか?。
「ワインとチーズを頼む。」
どんな注文が飛んでくるのかと身構えていたけど意外と普通だった。私はワインとチーズをお客さんの机にそっと置いた。
「お前は俺が怖くないのか?。」
怖いも怖くないもここでは平等。私は素直な意見を言った。
「そうか。それなら俺の話を聴いてくれないか?。」
魔王から話を聞く機会なんて中々ない。私はゆっくりうなずく。
「おればここに来る前に俺の城で勇者と戦ったんだ。俺は勝てると信じてたたかった。なのにだ。勇者は聖なる力だか奇跡だか知らないがその力で俺を弱らせたんだ。なあどう思う?。」
話を聞いている限りだとよくある展開だ。勇者が奇跡をおこし魔王を倒す。子供の頃さ気にならなかったけど大人になって都合が良すぎるように見えるようになった。
「そうだろう。戦うなら正々堂々戦えって思う。これだから最近の勇者は。ぶつぶつ。」
いや、今も昔もそこはあまり変わらないような気がする。私が知らないだけか。
「ふぅ。少し気持ちが楽になった。そろそろ俺は行く。仲間たちが地獄で待っているからな。」
そう言うと魔王は記憶の玉を残し消えていった。私は後片付けを済ませ記憶の玉にそっと触れた。
「記憶編」
俺は世界を支配する野望を持つ魔王。俺の目指す世界は我々魔物が豊かに暮らせる世界を実現。だが勇者という存在が仲間を次々と殺していった。そして今俺は勇者軍とにらみ合っていた。
「魔王。お前の思い通りにはさせない。」
俺は勇者に問いを投げる。
「勇者よ。なぜ我らを嫌う。我らとお前たちは姿は違えど同じではないか。」
勇者は俺の問いに戸惑いを見せる。
「僕たちがお前たちと同じ?。何を言っているんだ。」
「我らが人間を傷つけるようにお前たちも我らを傷つけたではないか。我らは似ている。それなのになぜ嫌う?。」
勇者は戸惑っていたがやがて確信をもった表情で答える。
「僕たちがお前たちと同じはずがない。お前たちは罪とない人に危害を加える。」
それは人間も同じことだ。人間も罪もない魔物を殺し平穏を保とうとする。
「勇者様。これ以上話しても無駄だ。決着をつけよう。」
勇者が光輝く剣を抜く。
「魔王様。俺たちも手伝うぜ。あんな奴らさっさと倒して俺たちの世界を作ろうぜ。」
俺の横に頼もしき仲間が加わり互いに人数は同じ。俺はきっと勝てると信じていた。しかし、勇者は剣からまばゆい光をはなち俺たちの目をくらませる。
「これでも食らえ。」
目のくらみがなおり前を見ると勇者軍の一人が魔法を唱え俺に火の玉を放つ。
「魔王様危ない。」
俺の仲間はとっさに飛び出し火の玉から俺をかばう。仲間を心配する間もなく次の魔法が飛んでくる。
「魔王様には指一本触れさせん。」
俺をかばい倒れていく仲間を見て俺は怒りのまま勇者に向かって鋭い爪を構え突進する。
「させない。」
勇者軍の一人が動きを封じる魔法をかける。俺は完全に身動きがとれなくなった。
「勇者様。今だ。」
仲間の声で勇者は聖なる剣を俺に突き刺す。俺の意識は眩しい光に包まれる。
俺たちは力を合わせた。勝てると信じて戦った。勇者と魔王になんの違いがあるというのだ?。光の向こうに幻が浮かび上がる。
「魔王様の野望実現を祝してかんぱーい。」
盃をかわす俺の仲間たち。
「魔王様。ついにやったなあ。ほらほらもっと飲んで。」
ご機嫌なリズムで酒に溺れる仲間たち。
「何を言う。これもお前たちと力を合わせたお陰だ。がはははは。」
酒を飲みながら仲間たちと笑う自分の姿。
「皆、すまない。」
幻は砂のようにさらさらと消えていく。その代わりに光の外から声が聞こえる。
「ついに魔王を倒したぞ。僕たちの世界へ帰ろう。」」
どうやら俺は負けてしまったようだ。足音はどんどん悪くなり一人になった。心細い気持ちをまぎらわすように声にならない声で仲間たちの名前を呼ぶ。答えてくれるはずもないと思っていた。そんな時だった。
「魔王様。」
誰かが俺の名前を呼ぶ声がした。
「魔王様。」
こんな綺麗な声の者俺の仲間に居ただろうか?。だけどもうこのさえなんだっていい。
「そこのお前。俺にとどめをさしてくれ。」
俺の命令に声の主は。
「かしこまりました。魔王様。」
声の主が返事をすると突然俺の体が浮き上がる。正確には持ち上げられていると言うべきか。光は少しずつ消えて俺はようやく声の主を見ることが出来た。声の主はエプロンをきた女だった。小柄ながら俺を持ち上げる女はいったい何者なのだろう?。
「見てごらん。魔王様。」
女は俺を下ろすとカーテンを開けた。部屋中に眩しい光が差し込む。あまりの眩しさき目を閉じようとする。
「大丈夫だよ。怖くないよ。」
俺は恐る恐る目を開ける。城から見える景色は俺の知らない世界だった。綺麗な森と広い青空。城の窓に止まる小鳥たち。
「綺麗だね。」
こんなに世界が美しかったなんて気づかなかった。
「ああ。綺麗だな。」
体に光が差し込んでももう痛みを感じることはなかった。意識が遠くなっていく。完全に意識が消える前に女の声が聞こえる。
「魔王様。おやすみなさい。」
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