テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
レイヤー:トゥエルブでの試練を乗り越えた後、アカネたちは一つの大きな決断を迫られることになった。現実世界に戻る時が、ついに近づいてきたのだ。
空間は変わり、もはや鏡のような壁は消え、代わりに目の前に広がるのは、ぼんやりとした風景だった。やわらかな光が降り注ぎ、静寂の中に響くのは、まるで彼らの心の中の声のように、優しい音楽だった。
「ここが……出口なのかな?」
アカリがぽつりと言った。ノエルはしばらく無言で立ちすくんでいたが、やがて静かに歩き出した。
「みんな、それぞれの試練を乗り越えた。それを現実に持ち帰るために、今、ここを出る時が来たんだ。」
アカネはゆっくりと目を閉じ、深呼吸をした。
「でも、どうしても怖い……現実に戻ったら、すべてが元通りになるんじゃないかって、思うんだ。」
「それは違うよ、アカネ。」アカリが微笑みながら言った。「私たちは、もう戻れないんだ。過去の自分には。」
「でも、もし……戻れたとしても。」アカネは少し沈黙してから、顔を上げた。「それでも私は、変わったって信じたい。」
ノエルがその言葉に静かに頷いた。
「私たちはもう一度、新しいスタートを切る。レイヤーで得たものを、現実に持ち帰るために。これから、どんなことが待っていても、それを乗り越えて行こう。」
その言葉とともに、空間の中に広がる光が強くなり、アカネたちは手を繋ぎながら、一歩を踏み出した。
その時、突然、アカネの目の前に現れたのは、現実世界の風景だった。見覚えのある街並み、知らないはずの人々、そして――
「ユウト?」
彼の姿がふわりと現れる。アカネは驚き、思わず彼の名前を呼んだ。
「どうして、ここに……?」
「アカネ、気をつけて。君が戻る場所には、まだ解決していないことがある。現実世界で向き合わなければならないことが待っている。でも、君はもう一人じゃない。」
ユウトの姿がぼんやりと消える。その瞬間、アカネは強く目を閉じ、心の中で呟いた。
「ありがとう、ユウト。私はもう、怖くない。」
そして、レイヤー内で得た感情の“光”を胸に、アカネたちは現実世界に戻る。
目を開けると、アカネは自分が元いた部屋に戻っていた。静かな夜、外にはほのかな月の光が差し込んでいる。
その時、スマホが再び震えた。画面を確認すると、今度は現実世界の仲間からのメッセージが届いていた。
【アカネ、元気?何か変わったことあったら教えてね!】
それは、アカネが長い間連絡を取らなかった友人からのものだった。彼女はそのメッセージをじっと見つめ、少しだけ微笑んだ。
「変わったよ、私は……。」
その瞬間、アカリとノエルも同時にスマホを手に取った。
「やっぱり、現実は思っていたよりも優しいね。」アカリが、少しだけ嬉しそうに言った。
「うん。でも、これからだね。」ノエルが微笑んだ。「私たちが経験したこと、これからどう生かすかが大事だよ。」
アカネはゆっくりと立ち上がり、窓の外に目を向ける。今まで見慣れた景色が、どこか新しく感じられる。
「新しい一歩を踏み出す。現実でも、レイヤーでも。」
その言葉に、アカリとノエルも頷く。
アカネたちは、現実の世界で再び会うことを誓った。その手には、レイヤーで得た「感情の花」がしっかりと握られていた。花がしっかりと咲き誇るその姿が、これからの彼女たちの未来を象徴しているように感じられた。
「私たちの物語は、これからも続いていくんだよね?」
アカリが微笑みながら言った。アカネはその言葉に答えるように、しっかりと頷いた。
「うん、続いていくよ。私たちの未来は、もう私たちの手の中にあるんだから。」
『ログイン・リアリティ』 完
コメント
8件
にょ?!おわった! みんなはっぴーえんど! ドストライクして心から矢が抜けないんですけど⁈ お疲れ様です! すごい素晴らしい作品を作ってくださりありがとうございました!
教科書とかに載っててもいいレベル...