俺の愛は重いらしい。
マッシュやフィン、レモンと全員に聞いたが出た言葉は皆同じだった。
重い愛というのは時に相手の負担になるらしい。
相手が他の奴と話していたら、他の奴の事を考えていたら、他の奴と目が合ったら。考えるだけでも禍々しい感情が湧いてくる。だから相手にお願いをする。“俺以外の奴の事を考えるな”と。
これを“異常”だと感じる人間が理解し難い。
もちろん自分がこれをお願いされたらきちんと叶えてやる。アンナは譲れないがな。
だから負担になるなんて思っていなかったんだ。
ドット。
「俺の愛は重いか…?」
「あー?まぁ、な。 」
ずしりと重力に押しつぶされそうになる。
「俺にはランスの愛は重すぎる。別れよう。」
頭が痛い。吐き気がする。そんなこと言われたくない。
まぁ、これはあくまで俺の想像の中なんだが。
とにかく、想像するだけでもこんなに耐え難いのに実際こんな事になってしまったらどうだ?もう俺は生きていられるかわからない。
いや、待て。
ドットは重いと感じていないかもしれない。
100%というものが存在することは滅多にない。特に人の感じ方なんて。
ドットに聞いてみるか…?厭、その流れで別れ話に突入したらうっかりサーズを発動してしまうかもしれない。
ではどうする?フィンに頼むか?厭、もしドットがフィンに俺と別れたいとの旨を伝えていたら?フィンに対して魔法を使ってしまうかもしれない。
手段としては手紙か。
よし、手紙ならよくアンナ宛に書いているから伝えられそうだ。早速取り掛かろう。
この時時刻はすでに消灯時間を過ぎており、ランスの知らぬ間に疲労が溜まった体は睡眠を欲していて…
「んぁ?ランスがテーブルで寝てる…?」
皆が寝静まった頃、ふと目が覚めて部屋を見回すとテーブルに突っ伏して寝ているランスが居た。
何してんだ…?
単純な好奇心からか、恋人を心配する乙女心からか、気になってしまい近くへ寄る。
ん…?手紙…?
アンナちゃん宛か?と思い、多少の罪悪感を覚えながらも中を見る。
すると中身は意外にもドット宛のものだった。
『ドットへ 〜 俺の愛はどんな愛だ? 』
“俺の愛はどんな愛だ?”
ランスにしてはやけに小説チックな言葉使うじゃねぇかよ。と思いつつ何故こんな発想に至ったのか考える。
あ、そういえば、マッシュ達がランスの愛は重いとかどうちゃらこうちゃら言ってたな…
まさか、それを気にして…?
顔が熱くなる。そんなに俺の事好きなんだなぁ…
そうだ。今度あの花を飾ってみようか。
後日
「ドット、その花はなんだ?あまり見ない色味だな。 」
「ああ。これ?綺麗な水色だよな〜。 “ルリトウワタ”って名前なんだぜ。」
「ルリトウワタ…?」
「そ。ちょっと調べてみろよ。面白いぜ」
…?ドットがそんな事を言うなんて珍しいな。いつもはドットの口で説明してくれるのに。
まぁ調べてみるか。
「図鑑ならそこに置いてあるぞ〜」
「ん?ああ、ありがとう。」
ペラペラとページを捲っていく。
あった。
ルリトウワタ
別名:ブルースター。
花言葉:早すぎた恋。幸福な愛。
“幸福な愛”のところに強調するようにペンで印が付いている。その横には付箋…?
『お前からの愛』
驚きドットの方を向くと少し楽しそうに笑い、
「ブルースターって、お前みてぇだろ?」
お前に意地悪される日が来るとはな。