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音じゃ、もう足りなかった。
滉斗は、夜ごとに繰り返した。
スタジオでひとりごとを呟く元貴。
歌詞を読み上げる声、ギターを鳴らしながら口ずさむ低音。
それに混じる、汗ばんだ夜のひとり遊びの声――
スマホに繋いだイヤホンから響く元貴の吐息に、
滉斗の身体は何度も熱を持ち、果てた。
けれど、ある時ふと思ってしまった。
(……顔が、見たい。
どういう表情で……どこを触って、どう喘いでたんだよ……)
その欲求は、音では満たされなかった飢えの代償だった。
“見たい”が“撮りたい”に変わるのは、時間の問題だった。
滉斗はある夜、控え室に小型のカメラを仕掛けた。
観葉植物の鉢の中に隠れるようにレンズを設置し、
あらかじめスマホで映像が確認できるよう設定を済ませた。
そして、その日。
滉斗は自然な流れで元貴を控え室へ誘った。
「ちょっとさ、最近の曲のこととか話したいなって。……大丈夫?時間ある?」
「ん、別にいいけど。あと30分くらいで帰ろうかなと思ってたし。」
ふだん通りのやりとり。
ドアを閉め、鍵をかけた音が響く。
元貴は気にしていない様子で、ソファに座り込んだ。
滉斗の手が、その肩を軽く掴んだのは、その直後だった。
「……なっ、どうした?」
「元貴さ、最近ちゃんと寝れてる?」
「ん……まあ、そこそこ?」
「……声、聞いたら分かるよ。お前、ちょっと乱れてる。」
「……は?何だよ、唐突に」
その瞬間、滉斗の唇がふいに元貴の唇に触れた。
「……んっ!? は……おい……!」
「俺だけに聴かせてよ、お前の……今の声。」
「ふざけんなって……ッ」
押し返そうとする腕を掴み、滉斗は身体ごと押し倒すように覆いかぶさる。
息が触れ合う距離で、耳元に熱い吐息を吹きかけながら囁く。
「……いいだろ。ここで……」
「……ッ、ちょ、お前……ふざけてんのか……っ」
元貴の服を無理やりまくり上げ、シャツの隙間に滉斗の手が滑り込んでいく。
鍛えられた腹筋をなぞると、ピクリと小さく震えが走った。
「触んな……っ、やめろって……!」
「本気で嫌なら、俺のこと突き飛ばしていいよ。」
「……お前……っ」
答えないのが返事だった。
ソファのクッションが沈み、身体と身体の距離がゼロになる。
(……映ってる)
カメラの方向をチラと視認しながら、滉斗は元貴のシャツを完全に脱がせる。
熱を持った裸の肌が露わになり、喉元から胸へ、そして下腹部へと舌を這わせた。
「っ……く、ぅ……っ……あ、ッ」
低く、少し息の混じった声。
それが、滉斗の脳と身体を直撃する。
「そう……その声。たまんねぇ……」
ジーンズの上から手でなぞり、確かな熱と硬さを感じる。
「ほら……ちゃんと、気持ちよくなってんじゃん。」
「言葉にすんじゃ……っ、ねぇよ……っ」
滉斗はジーンズのジッパーを強引に開け、下着の中へ手を差し入れる。
熱を持った滾りを、指で丁寧になぞり、擦り上げる。
「……はっ、あ……ッ、ぅ……!」
元貴の指がソファの端を強く握る。
その喉から漏れる、艶のある声が、滉斗の耳を支配していた。
(これが……俺だけの、音)
自分のズボンも下ろし、元貴の脚を割っていく。
「……出す……中、いいよな……?」
「……は?何言って――ッ、あぁ、くそ……っ、待て、……ひろとっ……」
「やだ。止まれねぇ。」
深く沈みこみ、お腹がぶつかるほど密着しながら、奥を貫く。
カメラに映る元貴の表情は、苦悶と快楽の入り混じった色で濡れていた。
「……っ、イキそう……元貴……!」
「や、ば……おれ、も……っ、ああああっ……!」
2人は果てた。
打ちつけ合った身体の熱と、濡れた音と、
そして何より、声がすべてを証明していた。
滉斗は、果てる瞬間の表情まで見届けて、
ようやく満足したように身体を倒した。
⸻
元貴は何も気づいていない。
盗撮も、盗聴も、滉斗がすべてを記録していることも。
だからこそ――滉斗の欲は、まだ終わらなかった。