一通り案内が終わり、キラとメテオは施設に戻ってきた。
部屋に着いた。
「ついたねぇ……まぁ、ざっくり言って『タハト』はそんな感じだよ、キラ君」
「案内ありがとう、メテオ。面白かったよ」
「どういたしましてだ、それにしてもキラ君は本当にあまり知らないんだね、世の中のもの」
「あ、あはは……」
自分は空から降ってきたのだから分からないのがあるのは仕方がない、と心の中でキラは呟く。
昼ご飯は外の飲食店で済ませた。
ほぼ一日中、外で案内してもらっていたのだ。
「外を久しぶりに沢山歩いたよ。運動になった」
メテオはそう言って椅子に座る。
「普段は外に出ないの?」
「いーや?出るには出る。けどここまで歩くのは久しぶりだなってな」
「へぇ……」
キラはソファに座った。
最初自分がここで寝ていたんだと今更ながら思った。
その時キラは思った。
何故、自分がここで寝ていたのか。
それをメテオに聞いてみる。
「ねぇ、メテオ、僕、どうしてここで寝ていたの?」
「昨日の話か?」
「うん……」
「俺が夜の散歩をしてる時に流星を見たんだ。その流星が『タハト』に向かって落ちてきてな、なんだって思って走ったら……」
メテオはキラの方を見た。
「そこに淡い緑の光があってな、その光の中からキラ君が現れて赤子みたいに眠ってたからつい連れ帰ってきちゃってさ」
「ついって……」
キラは少し困りながら言った。
だがこれで自分がなぜここに居たのか知ることは出来た。
その時、キラは閃いた。
___また流星になれば、ここを抜け出せるのではないか。
「あはは、ごめんって。だって本当にキラ君、可愛くてさ」
「僕は可愛いものじゃないんだよ」
「ものってなんだよ、お前は人じゃないか」
「……?」
「だって、ちゃんと人の姿で人の言葉を喋っているだろ?」
そう言われて、確かにそうだ、とキラは思った。
だがキラ自身はどうして人の姿になったのかは分からなかった。
これも母からの贈り物なのだろうか。
「あ、そーだ!キラ君、今日ね、星がすっごく綺麗に見える日なんだよ」
「そうなの?」
「おう!流星が数多く見られるんだ!」
「流星……そうなんだね」
この言葉はキラにとってチャンスに聞こえた。
このまま自分も流星になることが出来れば、ここを脱出することが出来る。
母との約束を果たすため、キラはここから出るための計画を立てることにした。
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部屋で一人、キラは考えていた。
今夜が流星なら、自分もきっと流星になれる。
星達が辿る場所を進めば、恐らく自分が本来行く星へと落ちるだろう。
だが、そんなことが上手くいくのだろうか。
自分で考えてみたものの、不安で胸がいっぱいだった。
やはりどうしても、自分から進むということは勇気がいる。
キラは試してみようと考えた。
夜になるのを待つのみ。
この研究所を抜け出して、星がよく見える原っぱまで走り、星達に願ってみよう。
心の中で考えがまとまったとき、ドアが開く音がした。
キラは驚き、体を跳ね上がらせる。
メテオが居た。
「あれれ、驚かせたか?」
「ちょっと、びっくりした……」
「悪いねぇ、けど驚くキラ君も可愛いよ」
「やめてよ……」
メテオはキラの反応を見て楽しげに笑う。
話している相手が敵であると分かっているキラからしたら、笑えるほどのものではなかった。
困った顔でメテオを眺めるのみだった。
「ところで、キラ君は何してたのかな?」
「ぼーっとしてたよ」
「暇ってことかな?」
「……多分?」
メテオはキラの手を握ると歩き出す。
「え!?なに!?」
「良いから良いから♪」
連れられたのは、望遠鏡がある部屋だった。
大きな望遠鏡で、星々の歴史や場所を示した壁紙でいっぱいだった。
「ここは……」
「星を観察する部屋だよ。望遠室って名乗ってるかな?」
「ほう……?」
「キラ君、望遠鏡覗いてみるか?」
「え、でも真昼間だよ。見えるの?」
「実は見えちゃうんだよな」
メテオが見るように促すから、キラは仕方なく覗いてみることにした。
そこに見えたのは、ある星だった。
その星は驚くほど色鮮やかで美しかった。
気がつけばその星をよくよく見るようになっていた。
「いい星、見つけたのかな?」
メテオの声がして、キラはハッとした。
メテオの方を向き、話しかける。
「ねぇ、メテオ。僕、今、すごく綺麗な星を見たんだ。あれ、なんて星なの?」
「あー、すぐに見れた星のことか?」
メテオはそういうと、少し顔を険しくした。
機嫌を悪くさせたのか、キラは心配したが、よくよく見ると真面目な顔をしているだけだった。
「あれが俺達の目的を邪魔しようとする星。……『アステル』だ。この星が、この銀河を救おうとかなんだか言っている」
キラは瞳を丸くした。
まさに、『アステル』という星の目的がが、キラと同じ目的だったからである。
キラは銀河を救う使命をもらっている。
これで次の目的地は決まった。
「『アステル』って、どんな星なの?」
「この星には、十二星座の国がある。それぞれ違う文化があるんだ」
「じゅーに、せーざ?」
そのあと、メテオから説明を受ける。
牡羊座から魚座までの十二個の星座があり、それぞれの星座を元にした国があるらしい。
国のリーダーも存在する。
聞いている感じ、悪そうな星には聞こえないが、メテオ達からすれば恐らく、目的に害するところだから悪く思うのだろう。
部屋に戻り、キラは再び考えた。
『アステル』までの方向は分かった。
その通りに動けるかは分からない。
早くても、今日中に出発した方が良さそうだ。
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夜になった。
「今日もお疲れ、キラ君」
「うん、お疲れ様」
キラは布団に入り、寝たフリをする。
メテオは寝たのを確認したのか、自室に戻っていった。
キラは目を開け、辺りを見渡す。
メテオが居ないことを確認すると、静かに起き上がり、着替えを済ませ、忍び足で部屋を出る。
廊下も静まり返っている。
少しでも音を出せば音が反響しそうだ。
なるべく音は出さず、声を出さずに施設の外へ行く。
なんとか施設から出ることは出来た。
キラは外に出たのを確認すると走り出す。
その様子をたまたま、窓の外を見ていたメテオに見られてしまった。
「あれ、キラ君だよね?」
メテオは不思議そうにしながら、キラのあとを追ってみることにした。
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キラは星がよく見える原っぱに来た。
星が数多見える。
その中に流星も流れていた。
「綺麗……、これが、流星……」
キラは小さく呟くと祈るように流星達を見つめ、独り言のように呟く。
「僕を正しい道へと導いてください。僕は銀河を守るために生まれ、救うためにここに居る者。どうか……僕を導いてください!」
独り言が願いへ変わる。
その瞬間、キラの肩にある星型の飾りが光り出す。
眩しい光で、思わず目を瞑ってしまいそうだ。
光はだんだん強くなる。
風も強く吹くようになった。
「な、なに!?」
体が軽くなり、だんだん意識が遠くなるような気がした。
その様子を、彼を追っていたメテオに見られた。
「……!キラ君!?なんだこれは!」
メテオがキラに触れようとした瞬間、キラは淡い緑の光に包まれ、消えてしまった。
「っ!キラ君!?」
メテオは辺りを見渡すが、キラの姿はどこにもなく、呼びかけても声が返ってこなかった。
「まさか……本当に、キラ君は───」
表情を無くすと、メテオは急いで施設に帰っていった。
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「っ……!」
キラは光の中に居た。
光の速さが速く、息が出来なかった。
星型の飾りが淡い緑───翠色に光っていた。
彼はその翠色の光を守るように、飾りをしっかりと握る。
『貴方の名前は─────『キラ』……キラだよ。どうか、これだけは忘れないでね』
母の声が聞こえるような気がした。
優しく温かい声だ。
聞こえてくる度、キラは何度も何度も唱えるように心の中で呟く。
僕はキラ、僕はキラ。
これだけは絶対に、絶対に、忘れない!
ここに来たのは、銀河を救うこと。
僕はお母さんとの約束を果たすために居るんだ。
だが、光が強すぎるせいか、だんだん意識が遠くなるような気がした。
唱えていたことも、忘れてしまいそうだ。
気がつけば、彼は──────。
「僕は……『キラ』……」
──────意識が途切れてしまっていた。
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そこからの記憶は、なにも覚えていない。
彼は翠色の流星となって、ある星へと向かっていった。
その星は───『アステル』……。
ある国の上で、キラリと翠色の流星が光った。
そしてその星は、山奥へと落ちていった。
──────これが、彼の『旅の始まり』となったのだ。
記憶のConstellation
『星の子の記憶編』 ~完~
文章担当:優無(ゆうむ)
挿絵担当:命生(めい)
コメント
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キラくんの記憶が消える経緯ってこういうことだったのね…!?✨ メテオさんが何してるかも気になるところ…(( お二方、今回もお疲れ様ですわー! なんかお絵かきの構図上手くなってるし小説もやっぱ読みやすかったです……これからも体調に気をつけて更新しろくだせ〜!
お二方小説とイラスト本当にお疲れ様でございます✨ 次回作楽しみに待ってます!(*^^*)