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学校からの帰り道。
今日も、別の道からふらりと現れた彼と、目が合う。
一応、ぺこりと会釈をする。
顔を上げると、彼が首を少々前に倒していた。
と思ったら、次の瞬間、歩道にはみ出していた樹木の枝に頭を引っ掛けた。
うお、…あれ?
思わず、吹き出してしまった。
さすがに、仕方ないということにしてもらいたい。
自分の身長の高さを、自覚しているのだろうか、こいつは。?
ちょ…笑ってないで、助けてもらっていいすか?
ジト目で軽くにらまれて、笑いながら走る。
いや、マジでなんで笑ってんすか?
ご、ごめんねw私のせいかな、”会釈もどき”させちゃったもんね。ww
べ、別にそこはいいんすけど…。
別にいいんだ。w納得いかないって感じ?
微妙っすね…
…あのさ、助けてって言われても、手が届かないよ。髪の毛、枝に引っかかっちゃっただけだよ?
あ、そうなんすか?なんか刺さったような気がして…
さ、刺さったって…ww
また笑ってる…(・・)
ちょ、その顔やめてw
じゃあやめないっす((
…うーん、自分の身長何cmか分かるかなぁ、竹海くぅーん?
ガキじゃねーっすよ!?……193〜〜…
ふっ…ww ほんとに、あの”会釈もどき”要らないよ?私じゃないと、会釈してるつもりだって察せないよ?
少々意地が悪いかもしれないが、容赦なく追撃をしてみる。
だっ…てッッ…
口論が下手くそだねえ、竹海くーんw
…おぅーい。^^
おっと。からかいすぎはいけない、逃げよう。
怒らせちゃってごめんねー、バイバーイ!(スタタタタ)
させるかぁッッ!!(ダッ)
お…?呆れて見送られるかと思ったが、さすがに追いかけて来るようだ。ならば…
あッッ!何草むらに入ってんすか!
竹海 陽を不利にするためだよー☆
ヤバい。楽しい。人をここまで煽ったのは初めてだ。
激昂はありえないが、なんらかの叫び声が聞こえてくると思っていた。…無音だ。諦めたか?
雑草でボーボーの公園を突っ切り、入り口まで達した所で。
目の前に竹海がいることに気がついた。
…先回りか。竹海もずる賢くなったねえ…
誰目線で言ってんすか。さっさと帰りましょーよ。
んじゃ、そうしよっかな〜…
譲ったっていう雰囲気出さないでもらっていいすか?
えー、しょうがないなあ…
話聞いてます?
自分の身長(193cmの長身)について時々忘れているこいつは、私のいとこだ。
いとこだというのに、今まで会ったことがなかった。しかも、家も近いのに。
なんでと聞いたら、小さい頃に会ったはずよと言われた。覚えてないのね、とも言われた。
小さい頃っていつだよ、とは言わないでおいた。
親から色々と説明をされたのも、入学式が終わってすぐで。
竹海の両親が、単身赴任が多い仕事だということ。
そして、今回はそれぞれ別の場所に行くことになってしまったため、しばらくウチに竹海を預けたいとのこと。
しかも竹海が、私と同い年で、高校も一緒で、しかも同クラだったこと。
クラスで一番背が高いんじゃい?、190cm以上あるのよ、顔覚えたりしてない?とたて続けに質問されて、ああ、と思った。
飛び抜けて背が高いのが居るよ、と言ったら、そうそうきっとその子よ、と言われた。
私の母は少々適当なところがある。
ウチの場所をまだ教えていないんだけど、もう明日から一人になるの、声かけて連れて来て?とまで言われた。
別にいいんだけど、そんな用も無ければ、193cmに一人で声をかけることは無かったと思う。
まあ竹海はなぜか帰宅部だから、身長以外で差を感じることはない。
というか、身長が高すぎる方が、絶対不便である。
常日頃からそう思っているが、今日見事に髪を木の枝に引っ掛けていたから、自分の意見の証明に成功した気分である。
ちょっと。湊さん、今絶対身も蓋もないひどいこと考えてるっすよね?
さあね。…ていうか竹海、私を捕まえて何の意味があるのー?
意味?一緒に帰れるじゃないすか。
キョトンとした顔つきで、とんでもないことを言い放ちやがる。
ヤワな女子だったら、もうストライクゾーン入っちゃってるだろうよ。
…いや、ヤワな男子でもイケるか。
湊さーーーん?…失礼なこと考えてんでしょ、なんか対価がほしいっすねー…
…対価ぁ?なにそれ〜、よく分かんないけど好きにしなよ。
…言いましたねー?(キュッ🤝)
…んぁ?
じゃあ、一生俺から離れないでくださいねー?
…は?
なんかすげーぎこちねえ…湊さん、手繋いだことないんすか?
おそらく”最悪”のタイミングで、竹海がこちらを向いた。
あー、ほっぺ赤ーい…やっと惚れてくれました?w
今更、気づく。私の前を歩く竹海の目は、ギラギラと光っていた。声も、低くなったような気がする、。
好きっすよ、湊さん。…おばさんから、湊さんが俺のこと覚えてないって聞いた時は、崩れ落ちたんすからねー?
…え…
崩れ落ちたって、…膝から?
だからもうおばさんにはバレちゃったんすよ、安心してください。…鈍感なのは、湊さんだけっすよ〜w
やっと、理解が追いついていく。
だ、誰があんたなんかに惚れるかッッ、バカ竹!!//
…いいんすかー?ホントに一生、離してやんねーっすけど…握力ナメない方がいいっすよ?w
妖しげに笑って、するりと指を絡めてくる。…こいつ、ほんとに竹海か…?
つーか、湊さんモテてんのに、全然好意に気づかねえし。…俺が一番乗りってことで、いいっすよね?^^
……え、?
他の男に近づいちゃダメっすよ〜…俺から、逃げないでくださいね🎶
ずっと、放心状態なのに。
竹海の声だけが、体の芯まで響いてきて。
一気に、熱を放った。