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これらのことはすべて彼女の父親から聞いた。父親は多くを語らなかったが、どうやらやつらをどこかに監禁して凄惨な拷問をやつらに見舞ったようだ。つまり三人のブラジル行きは彼女の父親の意思ということ。
あの父親のことだ。かわいい娘がかつてやつらにセフレ扱いだの便器扱いされていたと知って、
〈おまえらが死ねば許してやる。でも死ぬのはたっぷり地獄を見てからだ〉
とかそんなことを言いながら手間暇かけてやつらをいたぶったに違いない。
当然、やつらが撮影した動画も差し出させて目にしただろう。やつらがブラジルに行っただけで許すわけでもあるまい。向こうにも仲間がいて、やつらが入国するのを手ぐすね引いて待っているに決まっている。もしかしたら入国するやいなや、向こうのギャングに消される手はずになっているのかもしれない。
車で拉致されたあと、やつらを見かけたのは一度だけ。やつらが霊山寺家を訪れて彼女に謝罪する場に僕も同席するのを許された。そのときだけだ。やつらは三人とも松葉杖をつきながらよろよろとやってきた。足が不自由な身であるのに土下座して彼女に許しを乞うていた。
三人とも原形をとどめないくらい顔が膨れ上がり、手の指の骨も全部折られていた。服で見えない部分も無事であるとは思えない。その見た目が衝撃的すぎて、やつらが何を言っていたか正直あまり覚えていない。
「夏梅が許していいと言ったら許すけどどうしよう?」
と彼女に急に話を振られて、僕が決めるの? と困ったことだけ覚えている。
「許さないと言ったら殺されちゃいそうだね……」
と僕がつぶやいたら、許してやろうというのが僕の意図だったのに、
「じゃあ許さない」
と彼女は答えた。
やつらの退学とブラジル行きはその翌日に決まった。当然、やつらの家族は突然やつらが言い出した退学とブラジル行きに猛反対したが、やつらは全員十八歳。親であっても成人したやつらの人生を変える力はない。
彼女の父親がどのようにやつらを脅したかは分からないが、警察を頼るという選択肢もなかった。やつらはやつらでこの街に残って生き地獄を味わい続けるくらいなら、海外に逃げた方がマシだと判断したのだろう。おそらくブラジルに行ったら行ったで、もっと凄惨な生き地獄が待っているだけだろうけれどね――