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タクが大通駅で降りた先で、突然足を止めた。
翼の胸が、ざわついた。
(……誰?)
タクの目の前に、誰かが立っていた。
人ごみで顔はよく見えない。
でも、シルエットが妙に馴染みがある。
(彼女……だったらどうしよう……)
翼の頭の中で、ありもしない妄想が爆発した。
タクが笑いながら手を繋ぐ姿。
タクが誰かに優しく囁く姿。
タクが「翼には内緒だよ」って笑う姿。
胸が、熱くて苦しい。
翼は直視できなくて、
隣のアキの袖を強く引っ張った。
「アキくん……タクの目の前にいる人、どんな人か見てくれない?」
アキはスマホでディズニーツムツムをプレイ中だった。
「え、あー! コンボが😭😭」
と文句を言いながら、渋々顔を上げた。
そして——
アキは絶句した。
「……真琴……?」
翼はアキの袖を握ったまま、固まった。
(真琴……?)
なんで。
タクと真琴が、こんなところで一緒にいるの?
二人は別々に帰ったはずなのに。
しかも、二人が見ている店が、
さらに二人を追い込んだ。
ドラッグストア。
アキが急ブレーキを踏んだ。
「翼は見るな‼️」
慌てて翼の目を大きな手で覆った。
翼「……え? なんで?」
アキは絶望した表情で、
店内のスキンコーナーを凝視していた。
(あの二人……デキてたのか……?)
実際は、タクと真琴は
その隣のゾーンにある靴下コーナーを見ていただけだった。
真琴が「プレゼントしたい」と決意した、あの靴下。
でもアキには、そんなことわかるはずがない。
アキは翼の手を引いて、
その場から全力で離れようとした。
「帰ろう、翼。
今日はもういい……」
翼はまだ状況が飲み込めず、
アキに引っ張られながら、
胸のざわつきを抑えきれなかった。
(……タク、何してるの……?)
アキは焦っていた。
(知らなかった……全然気づかなかった……
あの二人、そんな関係だったなんて……)
胸がチクリと痛む。
別に俺は真琴と特別な関係じゃない。
バッテリーなんだから、相談してくれてもいいのに……
でも、その痛みの正体に、アキはまだ気づけずにいた。
アキは翼の右手をズンズンと強く引っ張り、
元来た道を全力で戻ろうとした。
「待って、アキくん! 歩くの早いよ!
脚の長さ違いすぎるんだってば!」
翼が何か言ってるけど、全然耳に入ってこない。
アキの頭の中は、真琴とタクの「密会」の映像でいっぱいだった。
その時——
「翼!」
遠くから、タクの声がした。
アキはビクッとして足を止めた。
タクが息を切らしながら走ってきて、
二人の前に立ちはだかった。
「なんでお前らここにいんの?!」
翼とアキは同時に固まった。
翼「……え、あ、いや……その……」
言えない。
尾行してたなんて。
尾行してたら、お前らが密会してた(言い方)なんて、絶対言えない。
アキがしどろもどろになってると、
翼が怖い顔でタクの前に身を乗り出した。
「タクは真琴くんと何してたの?」
タクは一瞬、目を泳がせた。
「え? 別に……(全然やましくないのに、アキがいるから言えない……)」
翼の目がさらに細くなる。
「俺にも言えないんだ」
「違う! 翼、話聞いて——」
「修羅場はじまった……?」
「「アキ(くん)はだまってて」」
アキは「怖っ……」と幼馴染の圧に圧倒され、
小さく後ずさった。
そこに——
会計を終えて、タクの元に戻ってきた真琴が、
袋をぶら下げながら現れた。
「あー買えた買えた……って、なんでアキがいるの⁉️……翼も……⁉️」
真琴の目が点になった。
4人の視線が、交錯した。